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「腹が減ったな」

「ですね。王子も食べてらっしゃらないので?」

「客人の前でバクバク飯を食う訳にもいかんだろう」

「長官はモリモリ食ってましたよ」

「あの人は特別だ。王族である事を捨ててるからな」

「なるほど。こうした式典の時の食事はいつもはどうされるんです?」

「厨房で今頃、我々の夜食を作っているはずだ」

「上の軽食は余らないんですか?」

「ほぼ手付かずで余る。それらは城の者たちに配られる手筈だ」

「それは良いですね。たまにはみんなにご馳走を食べさせてあげないと」

「それもある。だがそれよりも我々は食う訳にはいかん。毒が盛られてるかもしれん」

「ああ」


 お付きの人も居るし、不特定多数の誰かがワンチャンを狙う可能性があるのか。


「特に今回はヤバい。城の者にも配らずに廃棄にするかもしれん」

「何故です?」

「お主は気付いたか? 奴ら全員甲冑を着込んでおっただろう」


 街道を開通させた時か。

 正直よく見てない。


 王子にザブザブ洗われ、治癒魔術祭りがあって、その後は長官が現れたからバルベリーニ兵の観察どころじゃなかった。


「魔術兵のローブの下にも軽量の皮鎧ではあるが完全防備だったのだ」

「そうだったんですね」

「しかも雑兵全員が松明を持たされていた」

「どういう事です?」

「予めコウモリが大発生すると分かって準備していたのだ」


 マジか。


「姉君に確認したところ何処からかバルベリーニに怪文書が届いたそうだ」

「怪文書」

「曰く、今年はコウモリが大発生する可能性があるから肌を覆い、松明で追いやれる様に装備を整えておけと書いてあったそうだ」


 何それ、どういう事?


「真偽の程は分からん。バルベリーニが我らを攻め落とす計画を立てていたのやもしれん」

「ヤバいすね」


 コウモリへの対応でぐちゃぐちゃになっているところに無傷の軍隊で攻め込めば簡単に突破できたかもしれない。

 しかも城門は開いており、城内に至ってはほぼ守り手が出払っている状態なのだ。

 ガチの攻城作戦じゃないか。


「街道のあの辺りには閉鎖された古い坑道が幾つかあってな」

「ああ、誰かが扉を破壊して開けておいたって報告ありましたね」

「うむ、奴らが探し当てて開けたか、身内に裏切り者が居るか、ふたつにひとつだ。どちらにせよ我が領が狙われているのは確かだ」


 坑道に詳しい者といえばドワーフたちだろうか。


 あと思い付くのは城の修復歴を大量に管理している城おじのルカ氏。

 坑道に関する資料も沢山持ってそう。

 もちろんあの部屋に誰かが忍び込んだのかもしれないが、部屋を空ける時にはルカ氏は鍵を掛けていた筈だ。


 個人的に恨みがあるので犯人であって欲しいのは第二王子の教師だったミカエルだが、何しろポリオリは冬のあいだ街道が塞がれ陸の孤島なのだ。

 手紙を送ることができない。

 カイエンルートがあるには有るが、初老に差し掛かるミカエルにはあのルートの踏破は無理だ。

 誰かを送り出すにしても、いつも締まりっ放しの裏門を開けて監視櫓の目をかいくぐるのは不可能だ。

 夜なら可能だろうか?

 いや、暗くてはあの濡れた橋は渡れまい。


 門兵といえばミスター偉そうを買収すれば裏門くらいは開けてもらえそう。

 なんならアイツも犯人であって欲しい。

 でもアイツ独りではあの門は開けられない。

 四人掛かりで開けてたもんな。

 まあ、門兵全員を買収すれば可能か。

 ルドヴィコ氏にちょっと聞いてみよう。

 あの人は信用できそう。

 少なくとも何か隠していたら顔に出るだろう。


「犯人に心当たりは?」

「いえ、全然」


 そう答えながらも俺は今考えた事を王子に伝えた。


「そうだな。誰であっても手紙がネックになるな。となると一番怪しいのはドワーフか。バルベリーニにも幾分かは居るのだろうし、何年も前から準備すれば手紙の件も解決できる」

「王子、何年も前から準備するなら誰でも犯人になり得ます」

「そうか。となると考えねばならぬのは動機か」


 動機ねえ。

 買収されたり家族を人質に取られて脅されたりすれば誰でもなり得る。


「ルカ様のご家族はご健在ですか?」

「ああ、奴の家は代々ポリオリだ。門兵も全員ポリオリ生まれだ」

「となると、、、」

「やはり怪しいのはミカエルか。奴は王都生まれだ」

「動機はどうでしょう?」

「やはりお前が来て教師の座を失ったからだろう」

「それだと手紙がネックになりますね」

「そうだな」


 消去法で残るのはドワーフだが、なんか違う気がする。

 ポリオリを出て行ったドワーフはより多くの鉱石を求めて新天地を目指したという。

 残ったドワーフはガラス職人、時計職人、放浪の旅に魅力を感じなかった者たち。

 きっと家族単位で行動を決めたのだろうし、他国から脅しがあったりしたら領主に相談しそうな気がする。


「なんとなくですけどドワーフじゃない感じがします」

「我も同じだ。理由はないけどな」


 となるとやっぱりミカエル氏が怪しいのだが、俺は個人的にアイツが嫌いなのであまり公平に考えられない。


「ひとまずミカエルの身柄は押さえた方が良さそうだな」

「ですね」

「手遅れだ」


 立ち上がろうとした所に入って来たのが長官だった。


「奴は既にヴィートに保護を申し出てバルベリーニに保護されている」

「何ですと?」

「もうとっくに出立したそうだ。此度の謀反は概ねオーリーズの仕業だろうな」


 ミカエル氏の苗字ってオーリーズだったっけ?


いつもお読みいただきありがとうございます!

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