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 文書館へ向かう途中、執事室に寄って執事氏にルカ氏に会ったら探していたと伝えてもらうようお願いする。


 文書館を覗く。

 ここにも居なかった。


 トンマーゾ氏にも伝言を頼む。


 こうなるとルカ氏が何処にいるかは皆目見当が付かない。

 城おじとしての仕事も色々あるのだろうしな。


 ポリオリを出て行くとなったら心残りなのは城下町をほとんど見てないことだよな。


 あと、この都市にはアーメリア国軍の軍施設はないので行軍食が売っているかどうか分からないけど、何らかの食料は必要なのだから買っておこう。


 そう思い俺は部屋に戻りリュックを背負った。

 リュックに入れられる量も確認したいので毛布も入れておく。

 財布を持つのでウエストポーチも身に付けた。


 城を出て町へ向かう。

 そうだ、風車小屋も見ておこう。

 俺は一番近くにある風車へ足を向けた。


 風車は思ったよりも大きかった。

 風車小屋自体が三階建くらいの高さがあり、それを遥かに上回る巨大な風車が付いているのだ。

 小屋の土台もしっかりしており、微妙な風向きに対応できるように上の小屋部分が可動できるようになっている。


 カッコいい。


 ちなみに今は稼働していない。

 羽根も骨組みだけだ。

 そうか、使う時だけ布か何かを張って動かすのか。

 帆船と一緒だな。


 動いてる時の中の仕組みを見てみたかったな。


 もっと近くで見たかったが、塀とか門が堅牢に作ってあってのぞき穴のようなものも見当たらない。


 風車小屋の周りをウロウロしていると通りの向かいから声が掛かった。


「お主なんじゃ?」


 ドワーフだった。

 感動である。

 本当にドワーフだ!


 俺はフラフラとドワーフの方へ近寄っていった。


「止まれ! 見ねえ顔だな。通報するぞ!」


 え、マジ?

 そんな警戒する?


「驚かせて済みませんでした。僕は城で第三王子のクラウディオ様の教師をしているオミクロンといいます」

「んな訳あるか、このクソガキめ! おいイェネクト、半鐘鳴らせ!」


 ドワーフの工房らしき小屋の奥から別のドワーフが駆け出して来て、手に持った金属の板を金槌で勢いよく叩きだした。


「え、あの、いえ。僕は怪しい者では、、、」


 その音を聞きつけた近所の男たちが手に武器を持って集まり出した。

 棍棒だの、麦わらを運ぶデカいフォークなどである。


「なんだおめえ、旅のもんか?!」

「いえ、僕は城で働いている者です!」

「そんな訳あるか、このチンチクリンめ! 今に衛兵が来るから奴らに言い訳するんだな!」


 訊いといて何だよその言い草は。

 チンチクリンて言うけど背の高さはお前らドワーフとどっこいどっこいだろうが。


 そうこうしてると城から衛兵が駆けて来た。

 やはり槍を持っている。


 俺は両手を挙げて敵意がない事を示した。


「なんだ、オミクロン殿ではないか」


 そう言ってくれたのは以前もお世話になった門兵のルドヴィコ氏だった。


「ああ! ルドヴィコさん!」

「おお、名前も覚えてくれてたのか?」

「もちろんですよ、命の恩人じゃないですか?!」

「いや、大袈裟だな、、、」


 馬の足音が聞こえてきてそちらを見るとミスター偉そう氏が馬に乗ってこちらへ駆けてきていた。

 ヤベェ。

 あいつがいると話が拗れそうだ。


 ドワーフが訊ねる。


「衛兵さま、コイツをご存知で?」

「ああ、クラウディオ様の教師をしてる方だ」

「ええ、本当だったのか、、、?」


 そこに隊長殿の登場である。


「何事だ!」

「オミクロン殿を見知らぬ者が不信に思い、半鐘を間違って鳴らしただけでした。異常ありません!」


 隊長殿が俺を睨み付ける。


「お前か、、、王子の教師であろう者が背嚢なぞ背負ってドワーフの工房で何をしておる!」


 ああ、これ完全にスパイか泥棒の容疑が掛けられてるな。

 しかし正直に教師を首になったと言えば余計に面倒な事になりそうだな。


 どう答えたもんか、、、


「すいやせん。先生様とは知らず、粉挽き小屋の周りをウロついてたんで小麦泥棒と勘違いして半鐘を鳴らしてしまいました、、、」


 ドワーフが前に進み出てそう進言する。


「粉挽き小屋の?」

「ええ」

「おい、どういうことだ!」


 本当にこの隊長さん面倒な人だな。


「僕は小さな漁村で育ったものですから風車小屋を生まれて初めて見たのです。ですから仕組みなどに興味がありまして、、、」


 隊長はいきりたった。


「嘘だ! お主はもうひと月も前にポリオリへ来ていたではないか!」


 いや、だからそう言う事じゃないんだけどな。


「隊長」

「なんだ?!」

「騎士団もこちらへ向かって来てます」

「なんだと?」


 見れば確かに五、六頭の馬がフルアーマーを着用した兵を乗せてこちらに駆けてくるのが見えた。


 もう何なんだよ。

 これ以上大事になるのはご免だよ。


 見ると先頭を走っているのはクラウディオ王子その人だった。


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