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第8章ー1 スペイン北部攻防戦

 第8章の始まりです。

 1936年12月初めのある日、土方勇志伯爵は、日本人義勇兵の事実上の参謀長を務めている石原莞爾(予備役)海兵隊大佐と共に、スペイン国民派の軍首脳部と、今後のスペイン内戦の戦略、作戦方針を話し合っていた。


 この時、スペイン国民派の軍首脳部、フランコ将軍以下は、仏頂面をして、土方伯爵らを出迎え、会談に応じていた。

 その時、会談に同席していた石原大佐が、スペイン軍の将帥の態度、表情について、

「その時のスペイン(国民派)軍の将帥は、非礼極まりない表情、態度と言っても過言では無かった」

 と第二次世界大戦後に公表された、当時の日記の中に書き記していたくらいである。


 勿論、この時、フランコ将軍らが、そんな表情、態度を、土方伯爵らに執ったのは、彼らにしてみれば、当然の理由があったからである。

 この当時のフランコ将軍らの考えによれば、「白い国際旅団」の一部、せめて、日本人義勇兵だけでも、第一次マドリード攻防戦に投入されていれば、この時、既にマドリードが陥落しており、それによって、スペイン内戦が終結していたのではないか、という想いがしていたのだ。


 だが、土方伯爵らにしてみれば、その想いは酷い楽観論にも程がある想いだった。

 確かに、首都の陥落は、戦争の帰趨を決する結果をもたらす事が多々ある事態であり、マドリードをスペイン共和派が陥落させることは、それによってスペイン内戦が終結しそうに考えられる事態ではある。

 だが、スペイン内戦は、スペイン国民同士のお互いの考え、心情、イデオロギー等々の相違が、完全に煮詰まってしまったことから、激発した非常事態である。

 そういった背景を考えると、首都マドリードが国民派の手に落ちた時点で、共和派が手を挙げるというのは考えにくく、バスクやカタルーニャといった共和派が優勢な地方に、共和派は拠点を移し、まだまだ交戦が続く、と考えるべきだ、というのが、土方伯爵らの考えだった。


 では、土方伯爵らは、どう考えていたのか。

 1936年12月初め時点で、スペイン共和派は大雑把にいって、主に3つの拠点を構え、外線の利を生かして、スペイン国民派を大きく包囲しているような情勢にあった。

 まず、第一が、マドリードである。

 だが、ここはスペイン国民派との第一次マドリード攻防戦の結果、首都マドリードに立て籠もるスペイン共和派の軍勢が、スペイン国民派の軍勢によって半包囲状態におかれる有様となっていた。

 第二が、カタルーニャを中心とする拠点だった。

 ここにはバルセロナ等、スペインの産業拠点が集中していた。

 そして、第三が、バスク地方等の北部の拠点だった。

 ここは、共和派が守勢に立っている拠点であり、前記の2つがつながっているのに対して、国民派の攻勢により、既に他の2つからは孤立していた。

 土方伯爵らは、ここに目を付けた。


 土方伯爵らは、会議の冒頭で、大要、次のように述べて、北部への大攻勢を提案した。

「バスク地方等に、我々は主攻勢をおきましょう。ここは既に孤立状態にあり、共和派の外からの支援が困難な地域です。ここを制圧することで、マドリードへの攻勢の際に背中を衝かれる心配が無くなります。更に、この攻勢には、次のようなメリットがあります。共和派としては、難しい判断を強いられます。味方を見捨てるか、どうかという判断です。北部を救援しようとすれば、共和派は攻勢に出ざるを得ませんが、共和派の軍勢が攻勢に向かないのは、既に判明しています。彼らは悩むでしょう」


 土方伯爵らの北部への大攻勢という提案には、道理があり、フランコ将軍らにも得心が行くものだった。

 だが、首都を目指さないという作戦提案であり、心理的抵抗があった。

 

 一応、念のために申し上げますが。

 表向きは、スペイン内戦で参加している日本人義勇兵は、予備役軍人ばかりです。

(実際には、隠れ蓑、言い訳に過ぎませんが。)

 だから、既に後備役編入済みの土方勇志伯爵(軍人としての階級は大将)以外の日本の軍人が、階級呼称される際には、その前に本来でしたら、全員予備役云々が付きます。

 ですが、一々書くと大変ですので、次話から基本的に予備役は省略します。

 感想欄等で、やはりおかしい、等の指摘があれば、修正したいと考えます。


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