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第6章ー5

 スペイン内戦の最初期、スペイン各地で、国民派と共和派のお互いに混乱した戦いが起こった。

 前述したバルセロナのように共和派が勝利を収めたところもあれば、ナヴァラのように国民派が勝利を収めたところもあった。

 この時期の国民派にとって、最も痛かったのは首都マドリードを抑えることに失敗したことで(最も、モラ将軍が立てた事前計画でも、マドリード制圧は困難と判断されていた事案ではあった。)、マドリードを制圧した共和派の労働者達からなる臨時の民兵隊は、鉄道電話網を駆使することにより提供された情報に基づき、国民派の蜂起の鎮圧に動いた。


 こういった最初期の混乱も、8月10日頃までには、徐々に収まった。

 スペイン国内に、共和派と国民派の間で、いわゆる戦線が構築されるようになったのだ。

 また、スペイン国内でも旗幟を明らかにしていなかった面々も、どちらかに与することを明らかにせざるを得なくなっており、そう言った点でも、スペイン国内は共和派と国民派に分断され、表面上は対立が公然としたものになり、最初期の混乱は過ぎ去った。

 この時点でのスペインの両勢力を、以下、叙述する。


 まず、国民派だが、正規軍9万人が味方し、1万人の予備役士官が国民派に味方した。

 また、国境警備隊、突撃警備隊、治安警備隊といった準軍隊の内3万人が、国民派に合流した。

 これによって、総兵力は13万人に達した。


 一方、共和派は、予備役兵を急きょ招集すること等により、5万人の兵をかき集め、また7000人の予備役士官が共和派の呼びかけに応えた。

 また、国境警備隊等の準軍隊の内3万3000人は、共和派に味方した。

 従って、総兵力は9万に過ぎなかった。


 だが、兵力は劣勢でも、長期戦を戦い抜く基礎国力は、共和派が圧倒していた。

 国土の3分の2を抑えており、しかもその中に工場や労働者が多くいる大都市や鉱山地帯のほとんどが入り、スペイン最大の外貨の稼ぎ手であるバレンシアの柑橘物生産地も、共和派が握っていた。

 正統政府ということで、商船隊もほぼ共和派が握っており、外貨準備も共和派のものだった。


 一方、国民派が抑えているのは、国土の3分の1に過ぎず、支配しているのも農村地帯ばかりだった。

 そのため、農業生産に影響を与えないように、補充兵はモロッコを頼りにせねばならない有様だった。


 しかし、外国の支援という点では、国民派が圧倒的優位に立っていた。

 同じカトリックの誼と、カトリック教徒保護の大義名分から、伊、ポルトガル、ポーランド等が公然と国民派の支持を表明し、ローマ教皇庁も国民派に肩入れしていた。

 日英米も、利権確保のために、秘密裡に多額の援助を与え、特に石油に関しては、事実上、共和派に対して禁輸措置を取る一方、ポルトガルを通じて国民派に秘密裏に供給した。


 それに対し、共和派に味方したのは、事実上、ソ連のみで、後は、独が外貨と引き換えに武器を売却する程度だった。

 同じ人民戦線という事で共和派が期待していた仏は、カトリック問題から右派の攻勢を受け(裏で日英米も動いていたのだが)、中立を基本的に維持した(とはいえ、独と同様、秘密裡に武器売却は行っている。)。


 こうしてみると、お互いに予断を許さない勢力を持っていたことが分かる。

 後は、自分の勢力をいかに有効に活用して内戦を戦い抜くのか、というのがお互いの焦点となった。


 そして、お互いの支援勢力を助けようと、「赤い国際旅団」、「白い国際旅団」が編制されることになり、世界中の若者が、自らの信じるもののために、スペインの地を目指すようになった。

 そして、土方勇志伯爵も、「白い国際旅団」の長として、スペインへ向かうことになるのである。

 第6章の終わりです。

 次から、第7章となり、土方勇志が久々に登場します。


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