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第4章ー7

 次に、96式中型爆撃機であるが、爆撃機というよりも、攻撃機というのが相応しい航空機だった。

 これは、山本五十六将軍や井上成美将軍の強い主張で、雷撃可能なように設計、製造されたからである。

 そのため、実は陸軍出身者からは、微妙な評価を受けることになった。


 そもそも、96式中型爆撃機の開発当初、第一の目的として考えられたのは、航空撃滅戦に対して使用することだった。

 敵の後方にある飛行場を攻撃し、航空優勢を確保する。

 ある意味、極めて真っ当な中型爆撃機の開発構想である。

 だが、山本将軍らがくちばしを入れた。

「雷撃可能な能力を付けろ」


 日本海軍本体内には、条約派と艦隊派という流れがある。

 対米穏健派と対米強硬派と言い換えても良い。

 一方の条約派は、どちらかというと軍政面を歩んだ者に多く、山本権兵衛大将以来の流れを汲んでいた。

 他方の艦隊派は、東郷平八郎元帥らを旗頭に台頭した勢力で、海軍国として、日本も英米対等の海軍力を整備すべきだと主張していた。

 それによって、万が一に備えるべきだというのである。

 海軍出身の山本将軍らは、空軍に移籍してかなりになるが、それなりに艦隊派の影響を受けてしまっており、中型爆撃機に艦隊攻撃能力、具体的には雷撃可能な能力を付与することを主張したのである。


 確かに、双発の中型爆撃機を、何種類も開発、保有する訳にはいかない以上、96式中型爆撃機に、雷撃可能な能力を付けておいて悪いことは無い。

 だが、問題は、いつの間にか、主客転倒して、96式中型爆撃機の第一の目的が艦隊攻撃にあるかのように、開発陣に思われてしまった事である。

 更に、山本将軍らは、それを止めようとしなかった。


 そのため、最終的に、96式中型爆撃機は、爆撃機というよりは、攻撃機という性格を持った軍用機になってしまった。

 第二次世界大戦後に書かれた書籍の中には、96式中型爆撃機開発の第一目的は、艦隊攻撃にあったと書かれる物まで出た。

 だが、第一目的は、あくまでも航空撃滅戦にあったのであり、そのために敵戦闘機の迎撃を振り切れるように、航続距離を多少犠牲にしても、高速を最大限に重視した設計になっていた。

 だが、搭載する爆弾等は、艦隊攻撃を考えねばならなかったため、魚雷や800キロといった大型爆弾を主に搭載するように爆弾倉を作らねばならず、在地敵機攻撃に余り向かないようになってしまった。

 96式中型爆撃機が、傑作機ながら、中途半端な性格を持つとよく評されるのは、このためである。


 ところで、中型爆撃機と言うことは、日本空軍に、三発以上の大型爆撃機があったのか、といえば、開発しようとする机上の計画はあった。

 だが、大型爆撃機を開発したとして、その目的は何だ、という問いかけを受けると、当時の日本空軍首脳部に、その問いに答えられる者は誰もいない、というのが実情だった。


 何しろ、大型爆撃機を開発して、何に用いるかというと、敵国の工業地帯等を叩く戦略爆撃が主任務と言うことになる。

 だが、日本(ぎりぎり、韓国や満州、台湾)を基地としたとして、日本空軍の大型爆撃機が攻撃可能な範囲に、敵国の工業地帯があるだろうか?

 中国には、そのような工業地帯は無いと言っても過言ではないし、ソ連にしても、主な工業地帯は欧州部に集中している。

 英米に至っては、同盟国、友好国だし、そもそも工業地帯が海を隔てて、遠く離れている。


 長距離の海上哨戒、対潜哨戒等の為に、日本海軍航空隊が、四発の飛行艇を持つ必要はあるかもしれないが、四発の大型爆撃機が、当時の日本空軍に必要か、と言われると不要と言わざるを得なかった。

 だが、事態は急変して、後に日本空軍は、大型爆撃機を保有する。 

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