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プロローグー4

「ともかく、陸空軍も、ソ連には気を使わないといけません。日本の対ソ戦となりますと、表向きは北京政府救援、本音は黒竜江省油田の確保を図る満州国への地上侵攻に対処して、日本が陸空軍を派遣するという事態が発生する危険が一番高いですが、将来、空軍によるウラジオストック等から日本本土への空襲がなされる事態が引き起こされるかもしれませんからね」

 米内光政海兵本部長は、更に説き、斎藤實首相は大きく肯いた。


「東アジアには、韓国、モンゴルといった独立国が、それ以外にもありますが、韓国は、ソ連の脅威に対処するために、日米双方に積極的に逆らうつもりはないでしょうし、モンゴルもソ連と北京政府に従順です。東アジア情勢は、そんなところでしょうか」

 米内海兵本部長は、斎藤首相に語り終えた。


「米国については、ルーズヴェルト大統領が、ニューディール政策を掲げると共に、フィリピンを独立させるつもりらしいな。お蔭で、台湾の独立運動も活発になりそうだが。それについては、どう考える」

 斎藤首相は、米内海兵本部長に問いかけた。

「武力蜂起といった事態になれば別ですが、住民が台湾の独立を言論で訴える位なら、目を瞑りませんか。私としては、フィリピンと同様に恨まれない形で独立させてもいいと考えますが。極論ですがね」

 米内海兵本部長は答えた。


「ふむ。欧州情勢については」

 斎藤首相は更に問いかけた。

「難しいですな。独の動きも複雑ですし、ソ連の動向も読めません。基本的に英米に寄り添って、日本は行動するしかないでしょう」

 米内海兵本部長は端的に答えたが、斎藤首相は手を緩めなかった。

「自分の理解する範囲で話したまえ」


「まず、ソ連ですが、先程、申し上げたように国力を充実させると共に、軍事力も強化しています。問題はその矛先をどこに向けるかです。欧州のバルト三国等は、ソ連にしてみれば固有の領土であり、何としても自国領に取り戻したいでしょう。かといって、極東も黒龍江油田がある等、垂涎の地の筈です。他にも中東へ食指を伸ばすことも考えられます。日本国内の共産主義者等を使嗾することも考えられます。本当に厄介な話です。そういえば、小選挙区制の導入は、共産主義、社会主義対策の側面もあると聞きましたが」

 米内海兵本部長は、笑みを浮かべて、斎藤首相に問いかけたが、斎藤首相は苦笑いをするだけだ。

 どうやら、本当らしい、米内海兵本部長は、内心でそう推測した。


「独の動きも、奇妙です。今や独は、ナチスという政党が一党独裁体制を敷いています。ヒットラーが首相になり、反共の極右主義を唱える一方で、ソ連との関係を完全には断っていません。どうやら、かなりの再軍備を進めている節もあります。そういえば、我が国に防共協定を結ばないか、という打診が独から非公式にあったとも聞いておりますが」

 米内海兵本部長は、最重要機密の筈の防共協定についての情報を示して、斎藤首相に問いかけた。


 だが、斎藤首相も、それなりの狐狸で、顔色一つ変えずに答えた。

「どこから、というより、誰が話したかは、想像がつくが、聞かずにおいてやる」

「分かりました」

 米内海兵本部長は、話を続けることにした。


「ともかく、独とは第一次世界大戦の因縁もありますし、日英同盟もあるし、英国のスターリングブロックに日本は参加していることもある。我が国は、独か、英か、と問いかけられたら、英を味方として選択せざるを得ない立場にあります。共産主義対策としての独からの防共協定の打診は、我が国と英国に隙間を生じさせようとする工作でしょうな。我が国は独と防共協定を締結するわけにはいきませんな」

 米内海兵本部長は、斎藤首相に断言した。 

 長くなったので、まだ、続きます。


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