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第3章ー5

 これだけ見ると、日本海軍は、航空攻撃を軽視したようにも見えるが、実際には、それなりに重視していたのも興味深い話である。

 後述するが、日本空軍は、伏見宮博恭元帥や、山本五十六将軍、井上成美将軍等、海軍から転職してきた将官が多数いたこともあり、対艦攻撃をそれなりにこなせる陸上機の整備に熱心だった。


 万が一の対米戦が勃発した場合に備えて、日本空軍機による対艦攻撃は、かなり真面目に空軍内で議論や検討がなされており、1936年前後に、日本空軍で開発された単発の地上攻撃用の軽爆撃機/襲撃機については、多くが急降下爆撃能力が求められ、双発以上の中爆撃機/重爆撃機については、基本的に艦艇に対する雷撃能力が求められている。

 また、実際に日本海軍艦艇を目標にした対艦攻撃訓練(勿論、その際には、日本海軍艦艇は、艦対空防御訓練を行っている)も、多数行われている。

 そして、訓練の結果、判定上ではあるが、1937年当時、連合艦隊旗艦の戦艦、扶桑が魚雷、爆弾を複数被弾してしまい、撃沈判定を食らう、ということが起こっている。


 こうしたことから、日本海軍も、対空攻撃に対する警戒を怠るわけにはいかなかった。

 そのために、日本海軍は、空母の整備に奔った。

 これは、対空射撃が当たらない、という訓練結果が反映されていた。

 勿論、更なる訓練は、必要不可欠である。

 だが、現状に鑑み、対空攻撃は、艦上戦闘機を巧みに運用することによって阻止する方が、よりベターである、と日本海軍は考えたのである。

 そうなると、空母の整備は、必要不可欠だった。


 そうしたことから、日本海軍では、蒼龍級空母の建造が決断された。

 この際、空母については、2万トン前後の中型多数か、3万トン前後の大型少数か、についても、日本海軍内で、激論が交わされている。

(ちなみに、1万トン前後の小型多数、という提案は、日本海軍内では、一顧だにされなかった。

 何故なら、日本海軍は、国産初の小型空母「鳳翔」の使い勝手の悪さに懲りていたからである。

 それより大型化した1万2000トン級の「龍驤」でさえ、日本海軍内部では、小型すぎると不満が強い存在だった。)


 最終的には、戦艦の建造には、それなりの費用が掛かり、そちらを優先すべきだ、という主張が多数を占めたことから、蒼龍級空母は、約1万8000トンという中型空母になった。

 最初に建造された「鳳翔」、建造中の戦艦から改装、建造された「伊勢」、「日向」、更にロンドン海軍軍縮条約の特例で建造された「龍驤」に次ぎ、5番目以降の空母として、名乗りを上げた蒼龍級空母は、これまでに日本海軍が、空母の建造の際に蓄積を積み重ねた経験を反映した、大戦初期の名空母となった。


 右舷に配置された艦橋と一体化した傾斜式煙突を、「龍驤」に次いで採用し、できる限りのスペースを確保した閉鎖式格納庫を採用した蒼龍級空母は、建造当初は、予備機を含めて、72機の艦載機を搭載可能であり、これは日本海軍の要望を完全に満たすものだった。

 その後の艦載機の大型化により、搭載可能機数は、徐々に減少していったが、それでも退役時点で60機が予備機も含めて、蒼龍級空母には搭載されている。


 一般的にライバルとされる米国海軍のヨークタウン級空母よりも、蒼龍級空母は、トン数の割に搭載機数が少ないという批判がなされ、蒼龍級空母には、開放式格納庫を採用することで、搭載機数を増やすべきだったという主張がなされることもあるが、日本海軍の場合は、気象条件から、開放式格納庫の採用は困難だった。

 日本近海では荒天が多く、艦載機の損耗率が高いという問題があり、開放式格納庫ではその危険がより高まるからである。

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