表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/120

第3章ー3

 日英同盟が存在し、日米間も満鉄共同経営等で事実上の同盟関係にあるという現実があっては、日本としては、海軍軍縮条約を破棄したからと言って、英米に黙って軍拡を行うというのはやりにくかった。

 日本は、ソ連海軍の脅威を理由に、戦艦8隻、空母8隻を基幹とする艦隊拡張を行う計画がある旨を、英米に通知した。

 この通知は、英米に海軍拡張の連鎖反応をもたらした。


 まず、動いたのが、米国だった。

 日本が戦艦8隻、空母8隻を基幹とする海軍拡張を行うことを聞いたことから、対日2倍以上の海軍を保有するために、戦艦18隻、空母18隻を基幹とする大艦隊を、日本と同様に10年計画で建造することを計画した。

 ただ、日本の場合、予め幻のソ連戦艦対抗のために、ある意味で条約規定を無視した戦艦建造を計画していたが、米国は、そのようなことを日本からの通知を受けるまで、聞いていなかった(そもそも米海軍の一部は、第一次世界大戦で日本の主力艦隊が欧州に赴かなかったことから、日本海軍を軽視していたという説もある。)ことから、いわゆる条約型戦艦に準じた戦艦6隻(但し、主砲は16インチ砲を搭載)を建造することで、立ち上がりの遅れが生じないようにし、その後、日本と同様のコンセプトで高速戦艦6隻、中速戦艦6隻を建造しようと考えた。

 なお、米国は、戦艦の主砲は、全てを16インチ砲で統一することにしていた。

 米国海軍は、自国の保有する16インチ砲のSHS砲弾に期待しており、他国の18インチ砲弾に匹敵すると考えていたからである。

 そのために、運用上の事もあり、日本のような18インチ砲の採用には奔らなかった。


 また、日本の建艦計画の通知を受けた英国も、「新標準艦隊」と呼称される計画を立案した。

 こちらも戦艦18隻、空母12隻を基幹として、各種艦艇を建造する海軍拡張計画である。


(英海軍は、艦上機の開発を空軍に握られていたこともあり、空母の建造に消極的だった。

 そのために、英海軍は、日米より空母の建造の建造を少数に止めている。

 この点では、空軍独立をしていない米海軍や、空軍独立をしていながらも、艦上機の開発については、独自に行えた日本海軍の方が、マシだったともいえる。


 最も、これでも空母航空隊でさえ、空軍の指揮下に置かれた独海軍より、英海軍はマシではあった。

 独の場合、空母の艦長といえど、一切、空母航空隊の運用には口出し禁止、空母航空隊は、専門家の空軍の指揮下に置かれる、という始末で、このために独海軍は、空母建造を完全に後回しにした。

 このツケは、第二次世界大戦で重大な結果をもたらすことになり、後世で、何故、こんなバカなことをしたのか、と独海軍贔屓の面々を口惜しがらせることになる。)


 こうして、日米英は、競うように海軍拡張に踏み切ることになった。

 最も、既に老大国となっていた英国は、巨艦建造よりもそれなりの戦艦や空母の数を揃えることを優先せざるを得ず、質より量の建造となってしまった。

(そうしないと、世界各地に散らばる英国の植民地警備、通商保護等の任務を、英海軍は果たせない以上、止むを得ない話ではあった。)

 この当時、英国海軍の建造した戦艦や空母が、日米の戦艦や空母と比較して、質的に見劣りして見えるのは、それが原因である。

 そして、この当時の日米英各国の海軍拡張計画は、第二次世界大戦により、大幅に変更され、永遠に未完となる運命だった。


 こういった背景を受けて、この当時の日本海軍は、大和級戦艦や高雄級高速戦艦、蒼龍級空母等の建造に踏み切ったのである。

 更に実際の艦形を決めるのに、艦政本部の原案に、軍令部、海軍省がそれぞれ口を挟んで、揉めることにもなった。 

ご意見、ご感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ