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第2章ー7

 相前後して、米内光政は、新人代議士として、立憲政友会の代議士会に出席していた。

 とはいえ、立憲政友会は、党の立て直しが急務の状態になっている。

 総選挙前に、衆議院で約3分の2を占める300議席以上を抑えていたのが、過半数以下の200議席を割る議席しか占められない、という大敗を立憲政友会は喫したのである。

 しかも、党首といえる立憲政友会総裁、鈴木喜三郎自身も総選挙で落選してしまった。

 総選挙大敗の責任をどう取って、尚且つ、どのように立憲政友会を立て直していくのか、代議士の面々は半ば血相を変えて、代議士会に集っていた。


「鈴木総裁が、貴族院勅選議員になって、総裁居座りを果たそうというお考えだ、と仄聞しておりますが、それは事実でしょうか。総裁自ら、衆議院総選挙大敗の政治的責任を取り、総裁辞職をするのが、当然の態度だと私は考えますが」

「衆議院総選挙大敗の政治的責任をどうとるかは、私自身の身の処し方に関することであり、そう軽々と決められることではありません」

 若手、まだ当選2回目の代議士からの質問に、鈴木総裁は早春にも関わらず、冷や汗をかきながら、対応する羽目になっていた。


 鈴木自身は、貴族院の勅選議員になることで、国会議員の地位を維持し、立憲政友会の総裁として居座ろうと考えていた。

 だが、そのためには、斎藤實首相の了解が要る。

 何故なら、貴族院の勅選議員は、内閣の輔弼により、天皇が任命するものだからである。

 そして、鈴木自身は、斎藤内閣を準与党として支えてきたことから、斎藤首相は、自分を貴族院の勅選議員にする方向で動いてくれる、と考えていたのだが、斎藤首相は冷たく拒否していた。


「勘弁してください。どうも、立憲政友会の若手代議士を中心とする面々が、鈴木総裁は貴族院議員になって、総選挙大敗の責任逃れをするつもりらしい、という噂を流しているようなのです。あなたを貴族院の勅選議員にしては、その噂を真実にしてしまいます。それは、お互いによくない結果になりませんか」

 斎藤首相は、そう鈴木総裁に対して説いていた。


 確かに否定できない話だった。

 衆議院総選挙大敗の責任は、何らかの形で自分は取らねばならない。

 そうしないと、立憲政友会の代議士から総スカンを食いかねない。

 総スカンを食った状態で、立憲政友会の総裁に何とか居座っても意味が無いどころか、有害になる。

 鈴木はそう判断せざるを得なかった。


 では、どうするのが最善解なのか。


 立憲政友会は、意外かもしれないが、党総裁専制主義を初代総裁、伊藤博文以来とっていながら、派閥争いが絶えなかった政党でもあった。

 だからこそ、関東大震災後の政友本党分裂騒動等を自らが引き起こしていたともいえる。

 鈴木は、小選挙区導入により、党総裁が選挙区の公認権を握ることで、派閥争いを徐々に迎え込むことにしようと考えていたのだが、自分が落選してしまった。


 そして、鈴木の後継総裁として、自らの義弟の鳩山一郎と、若手代議士の希望の星として、中島知久平が名乗りを事実上、上げていた。

 中島は、当選まだ3回目で、若手もいい所の代議士と言ってよい存在だったが、鈴木財閥と言うバックがあることから、立憲政友会内で急速に力を強めていた。


 自分としては、鳩山を後継総裁に推したいところだが、それをやると中島が猛反発するだろう。

 そうなると、立憲政友会は、再度の分裂の危機を迎え、更にもし分裂してしまうと、その後は、選挙対策等から、立憲民政党にそれぞれがすり寄り、最終的には立憲政友会消滅の危険がある、と鈴木は考えた。

 では、自分はどう考え、後継総裁として誰を指名するのが、立憲政友会、及び自分にとって最善なのだろうか。

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