死体とおなじ
こうして、人との関わりを諦めて生きている今は、死んだのと同然であると、ふと思う。
僕の小さな心臓は今、無慈悲にも一定のリズムで動き続けていて、それだけが僕をこの世に繋ぎとめる、唯一の鎖であった。
脳は考えることをやめて、全てどうでも良いという、虚無感がいつしか心地よくなっていて、それは死んだ後の感覚に似ているのだろうかと、想像する。
生きることだけをやっていると、死んでいるのと変わらないという、ジレンマ。そのまま全てに価値を見出せなくなって、本当に死んでしまうのだろうかと、想像しても、もう怖くなかった。
やがてみんなから見離されて、社会から完全に離脱した時が、僕の最期なのかもしれない。人間社会で生きていると、人間であることを求められるけれど、僕は人間ではないから、いつかは本来いるべき場所へ、帰らないといけない。
今はこの虚無感が、心地よいけれど、やがてそれも許されない時が来る。その時には全てを投げ出して、首を吊っても、どうか誰も泣かないでくれ。誰も僕の動向を注視しないまま、ひっそりと、消えるようにいなくなって、みんなの世界は何も変わらないまま、時を刻み続けて欲しい。だけどそう願うには、僕は人と関わりすぎた。だから、みんな僕のことを忘れて、誰も僕のことを知らない世界で、息を引き取りたい。独りよがりにいなくなるのは簡単だけど、多分僕にはそれはできないから、だから自然と忘れられて、自然と見離されたら、どれだけ楽だろうかと思う。
首を吊る瞬間のことを妄想する。
妄想の中で、首に縄がかかった瞬間、大切な人の顔が思い浮かんでしまう。
呪いだ。
美しい呪いが、僕をこの世に引き留める。
何故僕なんかに。
何故僕なんかに、
泣きそうなくらいに、かけがえのない思い出が、沢山あるのだろう。
全部無ければ、楽なのに。
何で僕は、幸せを知ってしまったのだろう。
そのせいで僕は、
まだ死ぬことができない。
僕なんかに構わないでくれ。
この美しい思い出が、泥になって溶けるくらいに、もっと僕を見離して、距離を置いてくれたら、
そうしたら僕は死ねる。
ごめんなさい
冷たい人間でごめんなさい
僕に思い出をくれたみんなのことを、無下にしてごめんなさい
孤独を愛してしまって、ごめんなさい
妄想の中で、僕は首を吊ろうとしていた縄にライターで火を付けて、縄を燃やした。
自分の身体がどさりと落ちて、
僕は咳をして、
また、生きるだけの生活を始める。




