表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

死体とおなじ

作者: 森 go太
掲載日:2026/02/12

 こうして、人との関わりを諦めて生きている今は、死んだのと同然であると、ふと思う。

 僕の小さな心臓は今、無慈悲にも一定のリズムで動き続けていて、それだけが僕をこの世に繋ぎとめる、唯一の鎖であった。

 脳は考えることをやめて、全てどうでも良いという、虚無感がいつしか心地よくなっていて、それは死んだ後の感覚に似ているのだろうかと、想像する。

 生きることだけをやっていると、死んでいるのと変わらないという、ジレンマ。そのまま全てに価値を見出せなくなって、本当に死んでしまうのだろうかと、想像しても、もう怖くなかった。

 やがてみんなから見離されて、社会から完全に離脱した時が、僕の最期なのかもしれない。人間社会で生きていると、人間であることを求められるけれど、僕は人間ではないから、いつかは本来いるべき場所へ、帰らないといけない。

 今はこの虚無感が、心地よいけれど、やがてそれも許されない時が来る。その時には全てを投げ出して、首を吊っても、どうか誰も泣かないでくれ。誰も僕の動向を注視しないまま、ひっそりと、消えるようにいなくなって、みんなの世界は何も変わらないまま、時を刻み続けて欲しい。だけどそう願うには、僕は人と関わりすぎた。だから、みんな僕のことを忘れて、誰も僕のことを知らない世界で、息を引き取りたい。独りよがりにいなくなるのは簡単だけど、多分僕にはそれはできないから、だから自然と忘れられて、自然と見離されたら、どれだけ楽だろうかと思う。

 首を吊る瞬間のことを妄想する。

 妄想の中で、首に縄がかかった瞬間、大切な人の顔が思い浮かんでしまう。

 呪いだ。

 美しい呪いが、僕をこの世に引き留める。

 何故僕なんかに。

 何故僕なんかに、

 泣きそうなくらいに、かけがえのない思い出が、沢山あるのだろう。

 全部無ければ、楽なのに。

 何で僕は、幸せを知ってしまったのだろう。

 そのせいで僕は、

 まだ死ぬことができない。

 僕なんかに構わないでくれ。

 この美しい思い出が、泥になって溶けるくらいに、もっと僕を見離して、距離を置いてくれたら、

 そうしたら僕は死ねる。

 ごめんなさい

 冷たい人間でごめんなさい

 僕に思い出をくれたみんなのことを、無下にしてごめんなさい

 孤独を愛してしまって、ごめんなさい


 妄想の中で、僕は首を吊ろうとしていた縄にライターで火を付けて、縄を燃やした。

 自分の身体がどさりと落ちて、

 僕は咳をして、

 また、生きるだけの生活を始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ