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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
四章
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93話

 その日の夜、わたしはこっそりとハミィの部屋を訪れた。

驚かず静かに話を聞いてほしいと前置きをしてから、これまでの事情をゆっくり説明する。

不思議な浮いている板――【道標】が見えるようになったこと。

【道標】が示す最良の未来を実現するためにがんばっていること。

その未来のためにはハミィにしばらく身を隠してもらわなければならないこと。

ひとまずそれらを伝え終わってからハミィの反応を見る。


「……というわけだから、協力してほしいの」


「お姉様がいきなり妄想の世界に行っちゃった……」


 信じてもらえなかった。

まあいきなり言ってもこうなるよね!

でもここはなんとか信じてもらわなければ話が進まない。


「信じられない気持ちはわかるわ。でも【道標】が本当にあるって証拠に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って知ってる」


「それは……!確かに帝国に帰ってきたばかりのお姉様は知らないはず」


「そうよ!これでわかってもらえたわね、だからしばらく身を隠して……」


「うーん……でもドラゴンの死体で遊べるチャンスなんてもう二度とないでしょう?」


 ハミィはうっとりとした目になった。


「隠れてこっそり遊べるのは犬とか猫の死体くらい、本当はもっと人間の死体とかで遊びたいのを我慢してきたんだからさ、未来のためって言われてもドラゴンの死体で遊ぶの諦めきれないよ」


 まるできれいな花やかわいい人形に心をときめかせているような愛らしい顔で、平気にすごいことを言っている。

死霊術師(ネクロマンサー)】ってことよりこの死体愛好家(ネクロフィリア)っぷりの方がよっぽど表に出せない【秘密】なんだよね……

これ以外は本当にいい子なんだけど、これがあまりにも致命的。

マリアにも死体愛好家(ネクロフィリア)のことは今後も隠せればいいな……


「それは、マリアの試練が終わったあとはいくらでもドラゴンの兵器化しちゃって構わないからあとでやりましょ?」


「あ、終わったあとならやってもいいんだ。じゃあお手伝いするよ」


 ほらこんなに聞き分けもいい!


「ありがとう、じゃあこの手鏡を覗いて『秘密の部屋よ、扉を開けて』って呪文を唱えて」


「えーっと、『秘密の部屋よ、扉を開けて』?」


 手渡した手鏡――今回の計画のためにムーサ師匠がくれた【手鏡の部屋】に呪文を唱えたハミィは一瞬で手鏡の中に吸い込まれた。

わたしもすぐに呪文を唱えて、ハミィのあとを追う。

そうして飛び込んだ手鏡の中、そこは少女趣味全開の広い部屋だった。


「お姉様!なにここ!?すっごくかわいい!!」


 ハミィはきゃっきゃっとはしゃいでいる。


「これは【魔法使い】ムーサ・カメーナエ卿の造った【手鏡の部屋】よ。この部屋だけじゃなくて、ちょっとしたお屋敷と庭分の空間がさっきの手鏡の中に広がっているの」


「へぇ、もしかしてしばらく身を隠すって、ここで暮らしていいってこと?」


「そうよ、わたしも様子を見に来るし、こっそり野生動物の死体くらいなら差し入れに持ってくるから寂しい思いもさせないわ」


 特に差し入れの方に喜んだようでハミィはありがとう!と抱きついてきた。

さて、これでドラゴンの死体利用自体は阻止できた。

次はハミィ拉致の犯人をでっち上げるだけ!



 翌朝、わたしは客間にいるマリアを迎えに行ってから二人で朝食へと向かう。

既に食卓についていたお母様、後からやって来たリズムに挨拶をしてその時を待つ。


「奥様、大変です!ハーモニーお嬢様が!!」


 慌てふためいたメイドが飛び込んでくる。

お母様は客人であるマリアの前でみっともない態度を取らないように嗜めるが、続く報告を聞いて表情を険しくする。


「ハーモニーお嬢様が神隠しに遭ったんです!!」


 メイドの声はわたし達にも聞こえてきて、リズムは驚愕する。

わたしとマリアもしっかりと驚いた演技をする。


「ハミィがどうしたっていうの!?」


 メイドには申し訳ないが、大きな声で問い詰めさせてもらう。

するとメイドは怯えながら、ハミィの部屋の方を指さしてなにかをごにょごにょと伝える。

埒が明かない、といった風にわたしはハミィの部屋へと駆け出し、リズム達がその後に続く。


「これは……!?」


 ハミィの部屋はもぬけの殻。

その代わり壁に黒いインクで地母神の紋章とメッセージが記されていた。


『最後の試練が終わるまでこの娘は預かった』


……まあわたしがやったんだけどね。


「一体どういうことなの!?」


 白々しく演技を続けて、マリアに視線を送る。

打ち合わせ通り頼むぞマリア!


「紛れもなく、地母神様からのメッセージです……わたしが試練を終わらせないとハーモニーちゃんは……」


「そんな……!なんであいつが!!」


 今回の計画は伝えていないリズムが本気で感情をあらわにする。

わたしも怪しまれないように、もっとうろたえた演技をしなければ。


「なんてことなの……わたしが、マリアといっしょにいるせいなの……!?」


「落ち着きなさい!!」


 お母様の一喝が飛んできた。

思わず演技を忘れて本気で固まってしまう。


「このことはわたしが責任を持ってお父様に伝えます、あなた達は朝食をとって、やるべきことに備えなさい」


「やるべきことというと……」


「リズムは今日の勤労奉仕、メロディ、そしてマリアさんは……()()()()()よ」


 お母様が本気で怒っている。

これが子供に手を出された親の姿……!

うん、わたしがやったってバレるわけには絶対にいかないな!!

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