表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
四章
92/97

91話

 その知らせは早馬でわたし達の元へ届いた。

【オルガノ王朝】の高官――ムーサ師匠や高位の神官達に囲まれながらマリアは届いた手紙を読む。

彼女の表情がどんどん明るくなったので、内容を聞く前に大体のことは理解できた。


「三国同盟軍、青竜王ベースと赤竜王ドラムの討伐に成功したそうです!」


 神官達は歓声を上げた。

しかし【道標】で勝利することを知っていたわたしにとって気になるのは、戦いで出た損害である。

緊張しながらそれ以上の情報はないか、マリアが報告するのを待つ。


「三国とも相応の損害は出たものの、王や将級の者に死者はなし。軍の再編の後、計画通りの日程で黄金竜ヴォーカル討伐作戦に移行可能、だそうです」


 とりあえずお父様やマリアの父であるウェーバー伯爵は無事のようだ。

()()()()()――死者は出たのだから、手放しで喜ぶことは出来ないけれど。


「よし、この勝利を大々的に民に伝えろ!残るドラゴンは一体のみ、試練の終わりは近い!!」


 ムーサ師匠の号令で神官達はそれぞれの役目を果たすべく行動を始める。

わたしとマリアもやるべきことをしなければならない。

わたし達は互いの顔を見て、頷きあった。



 やるべきことの目的地、それはアリアから北、わたしの故郷。

【トライアド帝国】首都【トリニティ】――ぶっちゃけて言えばわたしの実家だった。

久し振りの我が家、出来れば何もかも片付けたあとで気楽に帰りたかったけれど、そうじゃなくても帰れたというだけでうれしい気持ちはある。

使用人に声をかけて門をくぐり、マリアを案内しながら庭を歩き、玄関の門を開く。

するとお母様がにっこりと笑って出迎えて……これはまずい!


「隙あり!!」


「なんのぉ!!」


「えぇー!?」


 恐るべき速さで踏み込んで来たお母様が繰り出す手刀を、紙一重でかわす。

狼牙剣(スイッチ・ブレード)】の要領で、二撃目が飛んでくるのでそれもなんとか回避。

困惑するマリアの横で一連の攻防を済ませ、わたしとお母様はしばらく睨み合う。

そしてお母様の方から構えを崩し、優雅なお辞儀をした。


「おかえりなさい、メロディ。あなたがうちのしきたりを忘れていないようで安心したわ」


「ただいま、お母様。小さい頃からの習慣だもの、三年くらいで忘れられないわ」


 その会話を、マリアは引きつった顔で眺めていた。


「えっと、これ、いつもやってるんですか……?」


「帰ってきたとき毎回じゃないわよ?いつ来るかわからないからこそ咄嗟の判断力を鍛えられて……」


「うふふ、そんなことより、そちらのお嬢さんが例の方なのかしら?」


「あ、そうね。こちらが【聖女】様で、わたしをパートナーに選んでくれたマリア・ヴィルトゥオーサ」


 わたしの紹介に合わせて、マリアが深くお辞儀をする。

お母様はそれを穏やかな表情で見守っていた。


「は、はじめまして、フラウ・テンション。メロディ先輩にはいつもお世話になっています」


「こちらこそ娘と親しくしていただいて光栄ですわ、【聖女】様」


 とりあえずお母様からマリアへの第一印象は悪くないようだ。

お母様に反対されたって自分の交友関係を変えるつもりはないが、反対されないほうがとても楽だ。

それはそれとして、今日帰ってきた目的はお母様ではない。


「挨拶は手短に済ませて、今日はハミィに用事があって来たの。あの子は今どこに?」


 お母様がぴくり、と反応する。


「あの子は、戦時徴用で宮殿に勤労奉仕よ。国外にいても知っているでしょう?正式な軍人はほとんど出払ってしまっているから。もちろんリズムもいっしょよ」


「……そうよね。じゃあそれまでわたしの部屋で待つわね」


「あらあら、帰ってくるまでだいぶあるのよ?それまで【聖女】様に何のおもてなしもしないなんてもってのほかだわ。それにゆっくりお話もしたいし、ね?」


 有無を言わさぬオーラだった。

わたしとマリアは為す術もなくお母様のおもてなし――マリアを見極める面接を受けることになった。



 ハミィへの用事、それについて確認するためにわたしはマリアとあの子の【秘密】について話し合わなければならなかった。

今はマリアも【道標】を閲覧できるのでそれを隠し切ることは不可能なのだけれど、正面からそれについて話し合うのには覚悟が必要だった。

その【秘密】は家族以外に決して明かせないほどの重大なものだったからだ。

ハミィは呪われた子……【死霊術師(ネクロマンサー)】なのだ。


『【死霊術師(ネクロマンサー)

  死体を操る超能力【死霊術】を操ることが出来る者。

  百年に一人産まれてくるといわれているほど希少な存在。

  一般的に不吉な存在とされており、自分から正体を明かすことはない。』


 家族以外に明かせない秘密、と言ったが例外がいる。

皇帝陛下もハミィが【死霊術師(ネクロマンサー)】だと知っているのだ。

そして今、この【大陸】には兵器にすることが出来れば非常に強力な死体――ドラゴンの死体がある。

要するに、ハミィは今宮殿に呼び出されてドラゴンの死体をも操作できるかの実験中のはずなのだ。

このまま行くと実験は無事成功し、黒竜王ギターの死体が黄金竜ヴォーカル討伐作戦に投入されて【カルマポイント】ががつんと貯まってしまうというわけである。

それを阻止する……具体的に言うとハミィを拉致するためにわたし達はここまで来た。

絶対に失敗できないのだが……

あの子絶対ノリノリでやろうとするんだよな!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ