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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
四章
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83話

 【クラシック王国】首都【マイスタージンガー】。

普段は多くの人が行き交い、活気に満ちた街だと聞いている。

わたし達が到着したときも行き交う人の数は多かったが、満ちているのは不穏な空気。

誰もが焦り、苛立ち、不安に満ちた表情をしている。

王宮に入る手続きをしたときも、担当者は心ここにあらずといった態度だった。


「すみません、普段はこんな風じゃないんですけど……」


「わかってるわ、国難を前にして空気が悪くなるのは当たり前のことよ」


 今わたし達は控えの間で【クラシック王国】国王ルードヴィヒ・ヴァン・クラシックとの謁見を待っている。

少し待たされるようなので今のうちに国王の人となりを再確認しておきたいところだ。


『ルードヴィヒ・ヴァン・クラシック サブキャラ 所属:【クラシック王国】

  【クラシック王国】の国王。

  三国の元首で最も長い在位期間を経ている老王。

  中央集権を強化しようとしているが結果は芳しくない。』


 【道標】の記述はなんかさっぱりしているのであまり参考にはならない。

一番頼りになりそうなのは宰相アマデウス・フォン・ウェーバー伯爵の娘であるマリアの意見だろう。


「それよりルードヴィヒ王のことなのだけれど……近頃諸侯との対立が絶えないのよね?」


「そうですね、元々王国は諸侯の発言力が強くて国王はそれをどう調整するかという能力が問われてきた歴史があるんです。国王陛下もかつてはうまくやっていたんですが……」


 マリアの表情が曇る。

故郷の否を語るのはやはり辛いのだろう。

しかし一呼吸置いただけで彼女はまた話を続けた。


「近頃は無理矢理意見を通すことが多くなって、お父様も苦労しているみたいです。特に大変な騒ぎになったのが後継者問題なんですが……」


 そこまで言ったところで、こんこんと扉を叩く音がした。

あまり時間は経っていないがもう謁見の準備が出来たのだろうか?

護衛の騎士に頼んで扉を開けてもらうと、そこにはセバスティアン王太子がいた。


「マリア、フロイライン・メロディ、少し時間をもらえるだろうか?」


「セバスティアン王太子!もう帰国なさっていたんですね、大丈夫ですが何かあったのですか?」


「いや、貴方達の現況を聞きたかっただけだ。怪我などはしていないようだが……」


 そう言ってセバスティアン王太子はわたしとマリアの様子をうかがう。

そしてマリアの方に目をやったとき、少し怪訝そうな表情になった。

どうしたのだろうとわたしもマリアの方を見ると、何故か彼女は困ったように目をそらしていた。


「どうしたのマリア?王太子が来て困ることなんて……」


 と言ったところではたと気がついた。

さっきマリアが話しかけていた後継者問題の正に当事者がセバスティアン王太子である。

本人の前で話しにくいようなことが、そこで起きたのである。


「あー、すみません。実は今までわたし達ちょうどルードヴィヒ王の治世について話していて……」


 わたしの言葉を濁した発言でセバスティアン王太子は事情を察したようだった。

苦笑いをして、彼はマリアに語りかける。


「あのとき俺はまだ幼くて、正直ほとんど覚えていない、気にすることはないさ。だが……あまり気持ちのいい話でないことも確かだ。フロイライン・メロディには俺から説明しよう」


 そしてセバスティアン王太子はわたしの方を振り返る。

その表情はとても「ほとんど覚えていない」人間のものとは思えなかった。

しかし彼は、すらすらと事情を説明した。


「十三年前、後継者として期待されていた長兄フリードリヒが父上より先に亡くなり王太子の座が浮いた。本来ならば次兄ゲオルグにすんなりと引き継がれるはずだったのだが、父上は何故か王太子を新たに定めず放置した」


「えっ、何故そんなことを?後継者を定めなければ無用な争いが……」


「ああ、実際諸侯はまだ幼かった俺を除いた王子達それぞれを押し上げ派閥を作った。互いを追い落とすための陰謀が吹き荒れ、政局は荒れに荒れた。そして一年ほど経って、突然父上は決断なされた……末子、この俺を王太子に定め政局を不安定にさせた他の王子ならびにその腹心を処断するとな」


 つまり、無用な争いをこそ望んでいたということ。

我が子を捨て駒にして、諸侯を処断する名分を得るというあまりに極端な選択。

王室に問題があったとは聞いていたが、想像以上の事件に思わず息を飲む。


「それ以来父上と臣下との関係はずっと冷え切っている。家族の関係もな」


 遠い目をしながらセバスティアン王太子はそう締めくくった。


「そう……ですか。もしかして、現在南部が既にドラゴンに制圧されたというのは……」


「ああ、王国南部は特に国王の影響力が低い土地柄でな。父上は早々に騎士団を引き揚げさせ南部を放棄したのさ」


 王国の内部事情はかなり大変なことになっていた。

マリアもセバスティアン王太子も表情を重く曇らせる。

少し前までのわたしなら仮想敵国ががたがたで好都合!となるところだが、今は試練を乗り越えるために三国の協力体制を目指しているのでそうはいかない。

さて、これからのルードヴィヒ王との謁見、そして同盟締結に向けた会談はどうなってしまうのか――?

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