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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
三章
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68話

「えっ、えっ、イロハさんこそなんでここに!?」


 これから告白されるのだと思いこんでいるマリアは、第三者の登場に慌てふためいた。

イロハもそんなマリアの様子とリズムと二人っきりでいるという状況に同じ()()を得ていた。

二人がいい雰囲気のところを邪魔してしまった、と。


(どうする……?すぐ立ち去るべきだけど、ぼくめっちゃ道に迷っているぞ!?)


 そう、イロハは今回の野外演習で起きる『事件』――道に迷って行方不明になるの真っ最中であった。

本来ならば道に迷ったイロハがこの水場で休憩をしているときに日食が発生、その後陣地にいるマリア達がそれに気がついて彼女を探しに行くという流れになるはずだった。

しかし、見ての通りマリアとリズムも陣地を離れてしまっている。


(これ、本当に大丈夫なんだろうな?地母神に予定狂わせるなって怒られないよな?)


 こんなことになっているのは、今密かに焦っているリズムがそう仕組んだからである。

これがムーサがメロディとリズムに授けた今回の作戦。

イロハがいる場所がわかっているのなら、あらかじめそこで待機していっしょに行方不明になり行き道を省略してしまおうという大胆な策だった。


「あー……イロハさん、もしかして道に迷ったのかな?」


 棒読みにならないように気をつけてリズムはイロハに尋ねる。

リズムとマリアの邪魔をしたと思いこんでいるイロハはそれに慌てて答えた。


「いやー?全然そんなことないよー?だからぼくのことはお気になさらずにー」


 見事な棒読みだった。

それはもう、リズムもマリアもイロハが今がどんな状況だと思っているのか察するほどに。

そして作り笑いを浮かべながらイロハが回れ右をして、その場から離れようとしたその時。

太陽の光が陰りだした。



「えっ、何が起きたの!?」


「これは……日食か!?」


「いや待て、今日日食が起きるなんて予測は出てなかったはずだぞ!」


 陣地の中ではどよめきが起き出していた。

大陸では日食が起きる日時を予測する方法は確立されている。

だからそういう日には事前に告知があり、その時間に休みを確保し日食を鑑賞する者もいるほどだ。

しかしだからこそ、起きないはずの日食が起きたことで不安をいだいてしまうのだ。

とはいえ騎士たるものがこの程度で慌てふためく様を放っておくことは出来ない。


「メロディ様、これって何が起こっているんでしょう!?」


「なにかよくないことが起きるんじゃ……」


「落ち着きなさい、日食程度で何を慌てているの。わたし達は騎士よ?」


 わたしはまず、いっしょにいる同じ班のメンバーを宥める。

そして相変らずわたしにひっついたままのレガートの方を振り向いた。


「レガート、これからみんなを宥めに行くわ。手伝って」


「うふふ、任せてよ。メロディが言うならなんでもしてあげる」


 いや、そこは立場ある者としてなにか……

まあいい、手伝ってくれるというのだからそれで良しだ。

だんだんと暗さが増していくなか、わたし達は陣地の中心部へと移動する。

そして大きく息を吸い込んでから、遠くまで響くように声を張り上げた。


「皆さん!落ち着いて、陣地の中央に集合!!」


 ざわめきが一旦静まる。

そして今度は少し明るい響きの声が聞こえてくるようになった。


「今の声、メロディ様よ!」


「そうね!とりあえず言われた通りに集合しましょう!」


「ほら、あなた達も行きましょう!!」


 親衛隊のみんなが同じ班の生徒を引き連れつつ集まってきたのだ。

そして親衛隊でない生徒達もそれを見てとりあえず行ってみるか、という雰囲気で集まってくる。

どうすればいいのかわからないときに選択肢を与えられたことで、藁にもすがる思いでその選択肢に乗ってしまうのだ。

そして辺りが真っ暗になり、陣地の中心部に多くの生徒が集まりだした頃、期待していた人の姿も現れる。


「フロイライン・メロディ、迅速な対応、流石だな」


「セバスティアン王太子!来てくれたんですね、力をお借りしても?」


「もちろん。王族たる者の務めだ」


 流石、これぞ立場ある者の正しい姿。

そう感心していたところにもう一人頼れる味方がやって来た。


「メロディさん!何か僕に出来ることは!?」


「待ってたわ、オクターヴ!色々と知恵を貸して!」


 いつも親衛隊の統制を任せているオクターヴならこんなときにも頼りになるはずだ。

実際彼の言う通りに少し演説を打つと、みんな落ち着いて指示を聞いてくれるようになった。


「ふう……ありがとうオクターヴ、あなた父親の跡を継いで内政を期待されているけれど、この統率力……武官の才能もあるんじゃない?」


「いえいえ、メロディさんのカリスマがあったからこそ出来たんですよ。次はどうしますか?」


「次は……今ここにいない生徒がどれだけいるのか確かめましょう。セバスティアン王太子が三年生、わたしが二年生、レガートが一年生の確認をするということでどうかしら?」


 わたしの提案にセバスティアン王太子もレガートも頷いてくれた。

そして手分けをして点呼の作業をした結果、三年生は全員陣地の中にいたものの一年生の半分以上がユニコーン狩りの途中で不在、二年生ではリズムとマリア、そしてイロハが行方不明だと明らかになった。

リズム、ちゃんと先回り出来ているかな?


「下手に捜索隊を出して迷子を増やすのは得策ではないな。ここにいない生徒達に帰るべき陣地の場所がわかるように篝火を焚こう」


「そうですね、木組みを組んでなるべく大きな火にしましょう」


 セバスティアン王太子の指示に従い二年生を中心に篝火を焚いてもらい、三年生にはその明かりを使って夕食の準備に取り掛かってもらう。

あとはみんなが無事に帰ってくることを祈り明るくなるのを待つだけだ。

特にリズムとマリアとイロハ、怪我なく帰ってきてよ……!

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