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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
二章
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51話

 突然の黄金のドラゴンの襲来にその場にいるほとんどの人間が思考を停止していた。

わたしはこれムーサ師匠の事前準備がなかったら洒落にならない数の死人が出たななどと考えている。

そんな状況を壊したのはドラゴン――黄金竜ヴォーカルが視線を地上にいるわたし達生徒に向けたことだった。


「きゃあああ!!!!」


「と、とりあえず逃げろ!!」


 人々はパニックに陥る。

逃げ出す人々の波に押し流されてはぐれてしまわないように、わたしはマリアの手を握った。


「マリア!アリコーンは()()があればなんとかなるって言ってたのよね!」


 マリアはわたしの手を強く握り返しながら、もう片方の手で【アリコーンの涙】を握りしめて返事をする。


「あっ、そうです!確かにそう言っていました!!」


「なら、もうちょっとここに留まってもらうわよ」


「はい、わかりました!」


 わたしとマリアは踏みとどまり、黄金竜の方を見る。

黄金竜はなにかを探しているようで、今のところはまだ何もしていない。

リズムも【アリコーンの涙】を持ってここに留まっているはずだから早く合流しなければ。


 そう思ったとき、今度は上空から五つの巨大な柱が黄金竜を囲うように降り注いだ。

五つの柱から光り輝く線が伸び、魔法陣を描き出す。

ムーサ師匠がやって来たのだ!


「安心しな生徒諸君!この【魔法使い】ムーサ・カメーナエに任せろ!!」


 魔法で宙に浮かぶムーサ師匠の大声が響き渡る。

その声に逃げ惑う人々も気づいて落ち着きを取り戻した。


「この声、【魔法使い】さん!?」


「あの人が来てくれたのか!」


「やった、カメーナエ卿ならなんとかしてくれる!!」


 どうやらムーサ師匠はわたし以外の生徒達にも何か手助けをしていたらしい、とてつもない人気だ。

実際に黄金竜は魔法陣の中から出られないようで、身じろぎしながら忌々しそうにムーサ師匠を睨んでいる。

それに対して全く怯むことなく、余裕綽々の笑みでムーサ師匠はわたし達のところに降りてきた。


「よお、マリアくん。例のアレはちゃんと持っているかい?」


「はい、【魔法使い】さん。言われた通り肌身はなさず持っていました!」


 あれ、マリアとも普通に接触してたのムーサ師匠?

わたし達は聞かされてなかったんですけど……

ちょっと戸惑っているところにリズムとオクターヴが駆け寄ってくる。


「姉上!!お怪我はありませんか!?」


「リズムの持ってる【アリコーンの涙】が震えだしたと思ったら金色のドラゴンが出てきて!あとなんか柱も降ってきて!!どうしましょうこれ!?」


「大丈夫だから二人とも落ち着きなさい。ムーサししょ……じゃなくてカメーナエ卿、例のアレというのはもしかして【アリコーンの涙】のことですか?」


 わたしはマリアにムーサ師匠と色々計画をしていることがバレると良くないと思い、少し距離のある態度でムーサ師匠に尋ねる。


「そうだぜメロディくん。リズムくんも【アリコーンの涙】をちゃんと持っているようだな?」


「ええ、持ってますよ」


 リズムが【アリコーンの涙】を差し出し、マリアも並べるように【アリコーンの涙】を持った手を差し出す。

それを確認したムーサ師匠は深く頷いてから説明を始めた。


「いいか?あの金色のドラゴン、黄金竜ヴォーカルは五代目の【ムジカの上王】の時代に封印されたものでこの【聖都オラトリオ】自体が封印の結界になっているんだ」


 五代目の【ムジカの上王】には確かに竜退治の逸話があって騎士なら誰もが知っている。

しかし【聖都オラトリオ】が封印の結界というのは一般には知られていないことである。


「今黄金竜ヴォーカルが出てきたのは【聖都オラトリオ】の結界が弱まったからで、今あたしが作った魔法陣はただの足止めにしかならない。【聖都オラトリオ】の結界を張り直して再封印をしなきゃいけないってわけだ」


「つまり、結界を張り直すのにこの【アリコーンの涙】が必要なんですか?」


 マリアの問いにムーサ師匠はにっこり笑って頷く。


「じゃあ早速再封印を始めよう。マリアくんとリズムくんは手をつないで、反対の手で【アリコーンの涙】を掲げるんだ。そしてあたしの言う通りに呪文を唱えるだけで大丈夫だぜ」


 ムーサ師匠の指示にリズムとマリアは素早く従う。

黄金竜はただこちらを睨んでいるだけだが、それだけで五つの柱と魔法陣にヒビが入っていく。


「なんか魔法陣壊れそうなんですけど、大丈夫なんですかね?」


「カメーナエ卿を信じましょう。それにしても……」


「それにしても?」


「皇帝陛下ならあの黄金竜でも封印じゃなくて倒せそうじゃない?」


「確かに!」


 再封印の儀式をオクターヴといっしょに見守りながらそんなことを話していると、今度は地面に魔法陣――おそらく【聖都オラトリオ】全体に広がる巨大なものが現れる。

そこから翠玉のように輝く光の鎖が現れ、柱の魔法陣ごと黄金竜を戒めた。

そしてゆっくりと黄金竜とともに地の底へ沈んでいき、静寂が訪れた。


「よし!これで再封印は完了だ。あとは教官達に任せるからじゃあな生徒諸君!!」


 そう言うとムーサ師匠も幻のようにいなくなってしまった。


「【魔法使い】さんすごい!」


「一時はどうなるかと思ったけど、流石だ!」


「なあ、【魔法使い】と話したことあるやつってどうやったら会えたんだ!?」


 辺りは歓声に包まれる。

これにて一件落着だね……なんて油断しているわたしの後ろに不気味な気配が忍び寄る。


「誰!?」


「……」


 そこにいたのはノイズ・マイナー・セブンスコード。

いや、違う。雰囲気が()()()()()()()()()


「もう一度聞くわ、誰!?」


「『わたしはこの世界を作りし者。メロディ・ドミナント・テンション、あなたを神座にて待つ』」


 そう言うと、ノイズは倒れ伏した。

駆け寄ってみると彼は気を失っていて、もう異様な雰囲気はしなかった。


「メロディさん、今のは一体……?」


 オクターヴの疑問にわたしは答えられなかった。

だがわかっていることが一つ。

わたしやっぱり地母神に目をつけられちゃったじゃん!!

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