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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
二章
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48話

 アリコーンがなんか光りだした!

つまりここからは、こっちから攻撃しても大丈夫!!


「お遊びはっ……ここまでっ!」


 わたしは十字の斬撃――【十字剣(クロス・ブレード)】をアリコーンに叩き込む。

これまで防戦一方だったわたしの攻撃にアリコーンは反応しきれず、まともに食らって吹き飛んでいく。

……あれ、ここで仕留めちゃったら【カルマポイント】はどういうことになるんだろう?

いやいや、アリコーンはユニコーンと比べてかなり丈夫だってムーサ師匠も言ってたし大丈夫のはず……


「メロディ先輩!ちょっと待ってください!!」


 ちょっと心配になり始めたところにマリア、そして彼女を追いかけるリズムが駆け寄ってきた。


「なにかが……いえ、多分その子が、わたしのことを呼んでいるみたいなんです」


「アリコーンがあなたを?」


 よしよし、ちゃんとイベントが起こったようだ。

一安心してアリコーンが吹き飛んでいった方を見ると、わたしの一撃で弱っているもののちゃんと生きているアリコーンがマリアをじっと見つめていた。


「学校の地下でなにか怖いのが目覚めようとしている……それを地母神に選ばれた者に伝えに来たって」


 伝えに来たわりには初手から大技で攻撃していたが……

不審な目でアリコーンを見るものの、まるで人が、いや馬が変わったように殺意など感じられない潤んだ瞳でマリアを見つめるばかりのアリコーンだった。


「こっちに来て、って言っているみたいです。どうしよう、わたしこんな声が聞こえるなんて初めてで……」


「まあ不安よね。でもなにかが目覚めようとしているっていうのは気になるわ。リズム、マリアといっしょに行ってなにかあったら守ってあげなさい」


「はい、姉上。じゃあ行ってみよう、マリア」


 このままマリアといっしょにリズムがアリコーンと交流すれば【勢力フラグ】と【キャラフラグ】が貯まるはず。

わたしとリズムはあらかじめ練習したとおりに話を誘導する。


「えっと、メロディ先輩は?」


「わ、わたし?わたしは……ちょっと疲れたから休ませてちょうだい」


「そうです、休んでください姉上!」


 ちょっと強引だがちゃんとマリアとリズムの二人でアリコーンの方に行ってくれたから問題無しだ。

二人を見守りつつわたしはふう、と肩から力を抜く。

そこにオクターヴとヨハンナ少女、親衛隊のみんながもう大丈夫そうだと見てやって来る。


「メロディさん!これでなんとかなったんですか?」


「マリアお嬢様の様子が急に変って……何が起こったんです?」


「その辺はあとでゆっくり話しましょう、とりあえず事態はもう落ち着いたわ」


 オクターヴとヨハンナ少女への対応はそんな風に落ち着いて済んだが、親衛隊のみんなはかなり興奮していた。


「メロディ様!お怪我はありませんか!?」


「あの逃げ遅れた女子のせいで本気を出せなかったように見えました!」


「騎士のくせにろくに動けず足手まといになるなんて……なんですかあの子!!」


 わたしを心配する気持ちがアニマへの怒りに変わってしまっているようだ。

わたしだって戦っているときは彼女を邪魔に思いもしたが、大人数に責められるのは流石にかわいそうだ。

ここはわたしが上手くこの場を抑えてあげなければ。

そう思いつつまずアニマの方を振り返ってみると、彼女はまだへたり込んでいた。


「アニマ、怪我はない?」


 そう尋ねると彼女はびくんっ、と震えてから俯き小さな声で返事をする。


「……大丈夫です。でもわたし、メロディ様にご迷惑を……」


「そうです!あなたがちゃんと退避していれば……」


「みなさん、少しお静かに」


 親衛隊のみんなが今にも彼女を囲んで避難し始めそうだったので、すかさず静止する。

そしてわたしは彼女に歩み寄り、しかし手を貸すことはなく語りかけた。


「あなた、自分の今の姿が騎士として恥ずかしい、そう思っているのね?」


「……はい」


 彼女はゆっくりと顔を上げて肯定する。


「わかっているなら、あとは自分で立ち上がり、変わろうと努力する……それで十分じゃないかしら」


 その言葉を聞いて、アニマは何も言わず、しかししっかりと自分の足で立ち上がった。

わたし達のそんなやり取りに取り巻きのみんなも納得してくれたようで、もう何も言わない。


「それでいいのよ。さあ、足を擦りむいているじゃない、手当てしてきなさい」


「……はい!わたし、ちゃんと変わります!」


 そう言ってアニマは陣地の方へと去っていった。

うん、これでよし!


 アニマが去っていったその少し後、アリコーンとマリアの交流も終わったようでアリコーンがかなり弱々しくではあるが、飛び去っていくのが見えた。

既にその体は光り輝くのをやめていたものの、翼をはためかせ空を駆ける姿は美しかった。

その姿をしばらく見送ったあと、マリアとリズムがわたし達のところへ戻ってくる。


「姉上、なんとかなりました!」


「色々言ってたけどなんだか難しい言い回しばかりで……」


「マリアお嬢様、あの獣と何があったんです!?」


 ヨハンナ少女が真っ先にアリコーンとの間にあったことを尋ねる。

従士だけあってマリアが奇妙な事件に巻き込まれて心配でたまらないのだろう。


「えーっと、何故かあの子が光っている間だけ考えていることが伝わってきたの。でも言い方があやふやで……わたしが地母神に選ばれたとか、学校の地下に恐ろしい【黄金】が眠っているとか、メロディ先輩が()()()()()()()()()とかよくわからないことばかりで……」


 え、最後の話は【道標】に載っていなかったぞ。

わたしが【道標】を見て行動していることが地母神の不興を買いつつあるということか?

それはまずい気がする……ムーサ師匠に相談しないと。


「あっ、でも学校の地下に眠っているものについてはこれがあればなんとかなるって言ってました」


 そう言いながらマリアは青く美しい宝石を取り出す。


「あの子の涙が宝石に変わって、わたしとリズムにくれたんです」


 それはまさしく【カルマポイント】の上昇なしでリズムが【勢力フラグ】と【キャラフラグ】を手にした証にして、剣術トーナメントで起こる次の『事件』で鍵となるアイテム、【アリコーンの涙】だった。



 後片付けでその後少し大変だったものの二年目の野外演習も無事終了。

騒ぎを後で知ったレガートに心配されたりすれ違ったロック・モードに睨まれたりもしたが無事に終了だ。

撤収作業でも素晴らしい手際を見せてくれたセバスティアン王太子と少し背筋が伸びたアニマと共に帰りも整然とした行軍で進む。

数日後わたしがアリコーンを一人でぶちのめしたというデマ――とどめはさしてないから一向にデマが広まってしまうのはまた別のお話である。

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