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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
一章
24/97

23話

「女性の顔を見てその反応は失礼ではありませんか、セバスティアン王太子?」


「ふん、それについては謝罪しよう」


 謝るのならよし、ということで失礼な反応についてはこれでいいとする。

そしてわたしと彼の欲しい本が被ってしまっている件だが……

立ち位置を見ると先に見つけたのはどうやら彼の方らしい、残念。

セバスティアン王太子は『革命のあとさき』を手に取り、その後わたしの方をもう一度見た。


「この本を賭けて決闘は挑まなくていいのか、フロイライン・メロディ?」


 こいつ、根に持っているな。

しかし勝者たるわたしは敗者に優しくしなければなるまい、ここは大人の対応だ。


「ご心配なく、順番待ちくらい出来ますから」


「……俺が貴方の邪魔をするためにこの本を借りたままにするとは思わないのか?」


 なんだ、そうする気があるのか?

しかしその疑心はすぐにかき消えた。

セバスティアン王太子がどう見たってそんなことをするようには思えない、そんなことをするようにはみられたくないと言いたげな切実な表情をしていたからだ。

レガートとは真逆のわかりやすすぎる人間だな……

そんな顔をする人間を冷たく扱うのは気が引けて、思わず弟妹に対するような気持ちになってしまう。


「思わないわ、あなたがそこまで程度の低い人間ではないことくらい目を見ればわかりますから」


 そう言うと、後ろにいた女子生徒達が盛り上がりだす。

いや、わたしも言われたーい!じゃないよ。図書館では静かにしなさいって。


「そう見えても、そうじゃない輩はいくらでもいるさ」


 女子生徒達の盛り上がりを完全に無視して、複雑そうな表情でセバスティアン王太子は返した。

どうやら彼の周囲には「そうじゃない輩」がいたようだ。

他国のことなので詳しいことは知らないが、王国の継承争いは苛烈と聞くからその関係で何かあったのだろうか?


「この本は一週間したら返す、その後に借りれるよう予約しておくといい。それでは失礼」


 そう言って去っていくセバスティアン王太子。

わたしも今持ち出している本の貸出と、言われた通り予約をして帰ろうかと思ったが一枚の便箋が落ちるのが目に止まった。


「お待ちをセバスティアン王太子、落とし物です」


 そう言って便箋を拾いに行く。

セバスティアン王太子は立ち止まって振り借りながら懐を確認している。

わたしは拾ってみるとかなり古びていることがわかった便箋を彼に差し出す。


「いや、俺は何も落としていないが……?」


「えっ?ではこの便箋は……その本に挟まっていたのでしょうか?」


 そう言いつつわたしは便箋を確認する。

かなり急いで書いた筆跡だが読みやすい字で書かれたその内容は、後半の部分が血痕としか思えない汚れで読めなくなっていた。

……。

何これ怖い。


「……本に挟まっていたもので間違いないようですね。セバスティアン王太子、もう一度挟んでおいてください」


「いや、そうとは限らないだろう。遺失物として貴方が届けておいてくれ」


 押し付け合いの始まりである。


「いえいえ、よく見てください。この古びた感じは間違いなくその本とともに年月を重ねてきたものですよ」


 わたしがそう言うと、女子生徒達がそうよそうよと後押ししてくれた。

ありがとう、もっとやって!

数の勢いに押されるセバスティアン王太子だがそれでも便箋を受け取ろうとはしない。


「古さだけではわからないだろう、そもそも貴方が落としたという可能性もある。確認してみては?」


 往生際が悪い……!

だがなんとなく気になって便箋を少し読んでしまう。


『未来の後輩たちへ

 ヴィルヘルム・フォン・メンデルスゾーン


 この手紙が読まれる頃、わたしは不名誉な名で呼ばれていることだろう。

 しかしこの手紙を読む君にはわたしが書き残したことを信じて欲しい。

 信じてもらわなければわたしと友フェリックス・ヴァン・クラシックの全てが無駄になってしまう。』


 内容も怪談によくある感じのやつだ!

しかしヴィルヘルム・フォン・メンデルスゾーン、そしてフェリックス・ヴァン・クラシックという名前はどう見ても王国風の名前。

というか後者に至っては王家の人間の名前である。


「確認しましたがフェリックス・ヴァン・クラシックとあなたの親戚と思しき方の名前が書かれていますね!これはあなたが落としたものという可能性も出てきました!」


「……何!?」


 セバスティアン王太子はついに観念して、いや、むしろ積極的に便箋を手に取った。

そしてその内容を読み進めると顔色はみるみる青ざめていった。

その姿を見て流石に心配になったわたしは声をかけることにした。


「あの……一体どのようなことが書かれていたのですか?」


 セバスティアン王太子はゆっくりと顔を上げ、深呼吸をしてから話し始めた。


「……フェリックス・ヴァン・クラシックは俺の父の若くして病気で死んだ兄の名前だ」


 そう言うとセバスティアン王太子はもう一度深呼吸をする。

もしかして、病死じゃなくて彼の父――【クラシック王国】国王ルードヴィヒ・ヴァン・クラシックによる暗殺だったことの告発とかそういう!?

はらはらしながら待つと、彼はもう一度話しだした。


「この手紙にはフェリックス・ヴァン・クラシックが病気ではなく【地母神ヴィルトゥオーソ】の意志により死に、その事実を筆者ヴィルヘルム・フォン・メンデルスゾーンが地母神から直接聞いた、と書かれている」


 いや、やっぱり怪談だった!!

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