885話 鬼ごっこの先
『鬼ごっこ・第一階層を攻略したプレイヤーに、スキルスクロールが授与されます』
やっぱ第一階層って言ったぁぁ! まだ先があんのかよ! しかも、スキルスクロールを授与? 情報多すぎて何が何やら!
『引き続き、鬼ごっこへの挑戦をお待ちしております』
そのアナウンスを最後に、俺は陰陽師専用ラウンジのロビーへと戻されていた。地獄のような洞窟から視界が一瞬で切り替わり、小奇麗なフロアが目に入る。
消耗していたし、そのまま第二階層に挑戦とか言われなくてマジでよかった。まあ、今は報酬の確認をするかね。
「妖怪強化のスキルか。さすが陰陽師系のイベントだな」
所持していると、妖怪が僅かに強化されるというパッシブスキルだった。スキルレベルがないので、強化率は固定だろう。これ系のスキルは腐らないからいいよね。
早速習得しておいた。
「陰陽師度が上がるってわけじゃないか」
「フフ?」
四鬼たちの姿は今までと変わらない。浜風のようなムキムキタイプに変化しないかとちょっと期待してたんだけどね。やっぱ、鬼道陰陽師にならなきゃダメらしい。
「さて、どうしよう……。第二階層、行ってみるか?」
ソイ豆があったら、意外と行けちゃったりしするんじゃなかろうか? 鬼ごっこは死んでもデスペナないし、情報を得るために挑むのはありだろう。
そもそも、再挑戦可能なのか? 死に戻ったり追い出されたりしたときには、24時間再挑戦できない仕様だが……。
試しにカウンターに向かったら、今までになかったウィンドウが出現した。
「何々? 攻略所要時間?」
そこには俺が第一階層を攻略するまでにかかった時間と、それによって付けられたランクが表示されている。
それによると攻略所要時間は15分12秒。格付けは梅となっていた。10分以内で竹、5分以内なら松となるらしい。
いや、10分ならともかく、5分って……。多分、もっとレベルを上げて、移動用のスキルや妖怪を揃えたうえで上手くいったらって感じなんだろう。今の俺じゃ逆立ちをしても不可能なタイムだ。
「竹なら頑張ればなんとかなるか……?」
どうやら、攻略時の格付けによって貰える報酬が違うらしい。再度挑戦して格を上げれば、ちゃんと竹と松の報酬が貰えるそうだ。
やっぱこれ、短期間で攻略するようなもんじゃないよなぁ。何層まであるか知らんが、ずっと遊べそうだし。
「で、死んでなければまた挑戦可能か。いってみようかね」
情報をちょっとでも得られればいいなーとかいう軽い気持ちで第二階層に挑戦した俺だったが――。
「はいむりー!」
1分後にはロビーで頭を抱えていた。
いやね? 難易度が上がるのは想定してたんだよ? でもね、その上がり方がちょっと予想外だったのだ。
「毒と溶岩って……」
そう。出発地点から辺り一面溶岩の池なうえ、毒ガスが充満している殺意満々のフィールドだったのである。
毒耐性と火耐性のアイテムではダメージを無効化するまでには至らず、まごまごしている内に鬼に見つかってジ・エンドという訳だった。
白鬼だったから、俺が豆を投げなきゃいけなかったんだけどさ。パニックの最中に右手と左手間違えることなんて、よくあるじゃん?
はい! そうです! 光属性と闇属性を間違えて、鬼を怒らせました! 俺が悪かったです! 怒った鬼は豆をぶつけても意味がないらしく、光属性をぶつけ直しても逃げることはなかった。
「第二階層は浜風たちに頑張ってもらって、俺は一階層の竹ランクを目指そう」
そのためにも、浜風たちに属性豆を渡さなくては。ログインはしてるみたいだな。コールをしてみると、船のデッキでくつろぎ中らしい。楽しんでいるようで何よりだ。
属性豆の話をするとすぐに欲しいということだったので、俺は船へと転移した。しばらく待っていると、浜風たちが俺の部屋にやってくる。
「やほー! ソイ豆できたって?」
「やっぱり精霊さんたちに畑を手伝ってもらうと早いんですねぇ」
「まあね! うちの子たちは畑仕事大得意だから!」
ロクロネック、分かってるじゃないか! うちの子は凄いんだよ! もっと褒めてくれ!
「それでそれで! 属性ソイ豆、どんな感じ? もう使った?」
「それ聞いちゃう?」
「それって、もしかして……」
「おう! 鬼ごっこ、第一階層突破しました!」
「おー!」
「さすが白銀さんです!」
褒めてくれる二人だったが、鬼ごっこの情報自体は聞きたがらなかった。あまり情報を仕入れず、攻略したいらしい。気持ちは分かるから、俺も何も言わないぞ。
「じゃ、ソイ豆だけ渡しておくな」
「ありがと!」
「感謝します」
二人に少し多めにソイ豆を渡すと、支払金額を聞かれる。あー、全然考えてなかったな。
でも、今のところオルトしか作れない希少な作物! しかも、陰陽師にとって重要なクエストをクリアするための必須アイテム!
少しくらいふっかけても許されるよな? 浮遊島で、ソイ豆・光が10個入り1セットで2000Gだった。つまり1粒200Gだ。
だが、今回はふっかける! 1粒2000G! つまり10倍!
今回はそれぞれに200粒渡しているから――。
「よ、40万でどうだ?」
「了解!」
「40万G送りますね」
2人は特にひっかかる様子もなく、即座に40万Gを譲渡してくる。あれ? 吹っかけたつもりだったけど、意外と適正価格だったか?
「いやー、こんな安く売ってもらえて助かるよ!」
「そうですね。さすが白銀さんです」
や、安く? 10倍だよ? もしかしてもっと高くてもよかった?
「じゃあ! いってくるね!」
「私もです!」
「お、おう。あとで色々聞かせてくれよ」
まあ、2人は陰陽師仲間だし、安くてもいいか。損してるわけじゃないんだし。
早速鬼ごっこに挑戦に行った2人を見送りながら「ふふふ。精々情報を持ってきてくれよ。俺のためにな」というフィクサーごっこをしていたんだが――。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
え? なになに? 船の中で女性の悲鳴? どういうこと?
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