868話 ユニゾンスキル色々
なんとか死に戻らずに済んだ俺たちは、雲外鏡の能力の検証を続けた。すると、真実看破は意外にも使える能力だったことが判明する。なんと、敵味方かかわらず、使用対象のバフを解除する能力があったのだ。
問題はバフだけではなくデバフも同時に解除してしまうことだが、それも使いようだろう。
で、逆に想像よりもいまいち使いづらかったのが反射である。期待していた通り、物理も魔法も反射可能ではあった。
だが、そこに一定のダメージ以下の、という制約が付くのだ。強くなっていけばより限界が上昇していくのだろうが、現状ではメチャクチャ弱い攻撃しか反射できなかった。
それなりにMPを消費するのに、最低威力の攻撃しか反射できないとか、使えないにもほどがある。威力が低い連続攻撃に対して有効かと思ったら、一発で効果が切れてしまうのでこれも意味がない。
現状、一応使っておいて反射したらラッキーくらいの効果しかなかった。
「ま、成長に期待ってとこか」
「キョキョー!」
フワフワと浮かぶ雲外鏡が、体を上下に揺すってご機嫌な声を出している。やる気はありそうでよかった。
雲外鏡の運用方法もなんとなく分かったし、次に確認したいことがあるんだよね。それが、ヒバリ草原の村に戻って、妖怪を探すことだ。
あの村でセカンドジョブをゲットしたものの、その後はすぐにホームへと移動しちゃったからね。ヒバリ草原の村と、その前の発着場周辺では妖怪を探せていなかった。
新大陸の序盤に他にも妖怪がいてもおかしくはないと思うのだ。ゲーム的に考えれば、サモナーやテイマーが新しい従魔を手に入れる環境があって、陰陽師にそれがないのは不公平である。
「つまり、新エリア序盤に妖怪はいる!」
この推測があっているかどうかは分からないが、どうせあの辺をもうすこし探索したいとは思っていたのだ。船旅に出る前に、しっかり探索しておくのも悪くないだろう。
ということで浮遊島最初の村であるヒバリ草原の村に転移したんだが、そこにはすでに多くのプレイヤーの姿があった。
しかも、見たことがあるプレイヤーばかりなのだ。人がメッチャい過ぎて、モンスたちが邪魔になりそうだ。とりあえず、すぐに呼び戻せる雲外鏡は送還しておこう。焼け石に水って感じだけど。
「やあやあ白銀さん!」
「どうもです」
「キキ!」
声をかけてきたのは、ハイウッドとカルロだった。カルロの背中におんぶされた状態のコウモリのブルースが、片手をあげて挨拶してくれる。
可愛いブタハナコウモリ顔のブルースは、愛嬌があって可愛いよね。
「2人がいるってことは、この集団は早耳猫がメインなのか?」
「そうそう。僕らと検証班で、いろいろと情報を確認しながらやってきたのさ!」
「船に乗る前に、セカンドジョブゲットしておきたかったですしね」
俺が売った情報を検証しながら、ここまでたどり着いたらしい。既に皆、セカンドジョブを手に入れたそうだ。
ハイウッドたちと話していると、赤髪ツインテの美少女が寄ってくる。
「ユートさん!」
「アカリもいたのか!」
紅玉の探索者こと、アカリだ。背中には剣2本を交差するように装備し、防具は布系に変わって大分薄くなっている。以前の戦士っぽい装備ではなく、砂漠の踊子風って言うの?
「こんにちは!」
「その笑顔、セカンドジョブは無事ゲットできたのか?」
「はい! 私、今は剣舞士っていうジョブなんですけど、それを補助するためにダンサー選びました。そしたら、舞踊の心得っていうユニゾンスキル手に入れましたよ!」
舞踊の心得は、所持しているだけで踊り系スキルが強化されるらしい。効果が上昇するだけではなく、踊りの効果が発揮されるのが早くなり、外的要因で中断されてしまう可能性が減るという。
剣舞士とダンサーという、踊りに関係する職業を重複させた結果だろうな。俺の万能従魔術と似ているかもしれない。
ハイウッドの場合は剣士系に戦士を重ねた結果、戦場の心得という、物理系スキル強化のユニゾンスキルだ。
面白いのがテイマーのカルロで、手品師を選んだ結果、奇術従魔術というユニゾンスキルをゲットしたらしい。効果としては、召喚、送還の距離延長に加え、モンスターたちの隠密性能上昇も付いているそうだ。
従魔術と手品が合わさった結果、イリュージョンみたいなことができるようになったってことかな?
やはり、組み合わせ次第では凄まじい可能性がありそうだ。プレイヤーたちの話を聞き、ひたすら何かをメモっている検証班にはぜひ頑張っていただきたい。
「あ! 白銀さん」
「お久しぶりです」
次にやってきたのは、浜風とロクロネックだった。ロクロネックは笑顔だが、浜風は何とも言えない表情をしている。どうしたんだ? 何か問題でも抱えてるのか?
「あれは、白銀さんが陰陽師になって嬉しいけど、トップの座が脅かされるのは嫌だという表情だな」
「陰陽師の地位が爆上がりするかもしれんが、数が増えたらトップから転落するかもしれんからな」
「12人の中の1番でも、トップはトップだし」
なんか、周囲にいる検証班の人たちがヒソヒソ話してるけど、やっぱ浜風に何かあったのだろうか?
「浜風、大丈夫か?」
「え? ええ、大丈夫! 私、負けないから!」
「? 大丈夫ならいいけど。頑張れよ」
「……うん」
何故か浜風が肩を落とした。まあ、自力でどうにかするつもりなんだろう。
「セカンドジョブはゲットしたか? 俺は陰陽師になったぞ?」
「知ってますよ。白銀さんとお仲間になれて嬉しいです」
「はは、先輩として色々教えてくれよ」
「任せてください!」
ロクロネックと挨拶していると、浜風が動いた気配があった。拳を握り締めて、何やらブツブツと呟いている。
「そ、そうよ。白銀さんが陰陽師になったって言うことは、私の後輩になったんだわ。つまり私が先輩! アンパン買って来いよって言える立場! ここはその立場を利用してマウントを取れるチャンス!」
なんか急に顔を上げたと思ったら、胸を張ってドヤ顔だ。ど、どうしたんだ?
「ふふふ。白銀さん! 先輩として、この陰陽師トップの私が色々と教えてあげましょう! 何でも聞いていいですよ! 陰陽師に関することじゃなくても! さあ、質問をどうぞ!」
「お、おう。頼むよ」
「ふふふん」




