785話 スペシャルかき氷
氷塊の周囲に存在する採取ポイントから、レア度8の超レアアイテムが手に入ってしまった。さすが最前線だぜ……。
「ほぇー」
思わずアホ面になって永久氷河の使い道を妄想していると、リックがビョイーンとジャンプして、俺の顔面に張り付いてきた。
「キキュ!」
「ぶへ!」
しかも、リックだけではない。
「クマ!」
「ヒヒン!」
「ラー!」
「え? どうしたお前ら?」
急にモンスたちに囲まれた! クママなんか背後から俺をがっしりと抱きすくめ、絶対に逃さないという決意が伝わってくる。
リックは髪の毛引っ張るなって! 普段はいい子なキャロまでローブをハムハムしないで! アコラ! 首しまってる!
なになに! なんなのさ!
「キキュー!」
「えーっと? なんだ? 手に持った何かを動かしてるのか?」
「クックマ!」
「何かを食ってる?」
え? もしかして、あれのこと?
「お前ら、かき氷食わせろっていってんの?」
「ヒヒン!」
「ララー」
「ちょ、まって。そりゃあ、いい氷が手に入ったら、それでかき氷作ってやるって言ったけどさぁ……!」
確かに、一番いいやつで作るって言ったよ? それは認める! 認めるけど……!
「こ、これ使ってかき氷を作れっていうの?」
「ペペン!」
「フムー!」
「お、お前らまで!」
レ、レア度8だよ? 多分、過去最高レア度。しかも、また手に入るかどうかも分からない超々レアアイテムですよ?
「ファ、ファウ?」
「……ヤー」
唯一の希望、ファウに目を逸らされた!
「キキュー」
「ヒヒン」
「クマー」
「くっ……」
期待に満ちた目! 無理! この期待を裏切ることは俺には無理!
「ええい! 分かった! 分かったよ! 作ればいいんだろこんちくしょーめ!」
「ララー!」
「ペペー!」
「フームムー!」
「ただ、お前らだけで独占したら絶対に怒られるからな? ホーム戻るぞ?」
オルトやアイネが激オコになるのは目に見えている。俺だけじゃなくて、こいつらも正座説教ルートだろう。
それが理解できたのか、モンスたちは素直に頷くのだった。
特殊プライベートエリア経由ですぐに戻れるのが憎い! これがなければ、「あとにしような?」とか言って、有耶無耶にできたかもしれんのに!
渋々ホームに戻ると、オルトたちが首を傾げながら近寄ってくる。さっき送り出したばかりの俺たちが、すぐに戻ってきたからだろう。
「ム?」
「キキュ! キュキュー!」
「フマー!」
「クマクマー!」
リックたちが留守番組にも説明をしているな。皆が大喜びだ。
まあ、ヒムカは興味なさそうだけど。お汁粉でも出してやるから、そんな嫌そうな顔すんな。ヒムカにとってかき氷は、苦手な食べ物最上位なんだろう。
「氷は、これを使うとして」
永久氷河を取り出すと、メチャクチャデカい。これ1つあれば、色々な加工物が作れそうだった。全員分のかき氷に十分足りるだろう。
「これを削って、かき氷に……」
まじでこれかき氷にすんのかー。
「キュ?」
「クマ?」
くそ! もう「やーめた」って言えない! やるしかない! こうなったら、最高のかき氷を作ってやんよ!
となると、問題はシロップだ。宣言通り、最高のものを作るのだ。
「というか、工房いこう。しっかり作る方が絶対にいいものできるし」
「フム!」
ルフレが手伝ってくれる気満々だ。あわよくば味見できるとか思ってないだろうな?
ともかく、ルフレと一緒に地下の万能工房へ向かい、材料を吟味する。
「よし。使うのは、フロストベリー、スノウベリー、ロイヤルゼリー、属性ハチミツだ! 贅沢ベリーとハチミツのフワフワかき氷を作ってやるぜ!」
「フムー!」
かき氷機で永久氷河を削ると、雪のようにフワフワなかき氷ができあがる。そこに、複数のベリーとハチミツを煮詰めたシロップを回しかけたら、スペシャルかき氷の完成だ。
フロストベリーは完全に潰して溶かしているが、ラズベリーに似たスノウベリーはジャムっぽく形を残してある。
そんな赤紫色のシロップがかかったかき氷は、俺から見ても凄まじくおいしそうだった。
名称:かき氷・スペシャルベリーソース
レア度:8 品質:★6
効果:満腹度を35%回復させる。使用者に1時間、耐寒・大、氷雪無効、雪の民を付与する。
な、なんか、すんごいのできちゃったんじゃないか?




