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283話 妖怪の絵


 座敷童と遊ぶを選択すると、俺たちのパーティが瞬間移動で立体迷宮の入り口前へと戻される。


 さっき座敷童が隠れていた扉が閉まっており、そこに「10、9、8――」というデジタルのカウントダウンが表示されていた。


 その数字が0になった瞬間、扉の向こうから座敷童の「あーいーい!」という声が響く。


 もういーよー的な事なんだろうな。扉が開くと、そこに座敷童の姿はない。再び隠れんぼが始まったのだ。


 ただ、先程の隠れんぼが活きたのだろうな。10分ほどで、箪笥の影に隠れていた座敷童をリックが見つけだしていた。


「キッキュー!」

「あーいー」


 見つけたリックも、見付けられた座敷童も楽しそうにはしゃいでいる。うんうん、楽しそうでよかった。さて、これで――。


『座敷童がまだ遊びたがっている様です。どうしますか?』

「おお? まじか」


 なんと再びそんな文字が表示されたのだ。先程と全く同じ潤んだ眼で、座敷童が俺を見上げる。


 くそっ! 運営め! 俺をこの場所で永久に拘束するつもりか! これ以上、お前らの思惑には踊らされないからな!


『では、隠れんぼを再開します』

「あい!」


 そうして、再び扉の前に戻され、カウントダウンが始まった。うん、断れるわけないよね。



 およそ1時間後。


 4度目の隠れんぼを終えた時だった。


『座敷童が満足したようです』

「あーいー」

「おお、そうか。よかったよかった」

「あい!」


 そんなアナウンスが聞こえ、直後に座敷童の姿が消えていく。ここは他のNPCと同じだな。最後まで笑顔で、楽し気に手を振っていた。これでイベントも終了だろう。


『アイテムを1つ取り、屋敷から退出してください』

「さて、ようやくアイテムをゲットできるな」


 まあ、隠れんぼに夢中になり過ぎて、どれを選ぶか全然考えてなかったけどね! どのアクセサリーをゲットするか頭を悩ませつつ、アイテムの置かれていた小部屋に戻る。


 すると、俺はある変化を発見していた。


「絵が増えてるな」


 壁にかかった妖怪の日本画の中に、座敷童の絵が増えていたのだ。アクセサリーに変化はないようだった。


「他の4つはアクセサリーにも名前があるけど、座敷童はこれだけか?」


 河童や幽鬼の絵はちょっと不気味だし、凄く欲しいって感じでもない。むしろ怖い。ただ、座敷童の絵は非常に愛らしい雰囲気があり、目を引かれた。


 それに、さっきまでなかったわけだし、多分イベントをこなしたことによって出現したレアアイテムなのではなかろうか? 隠れんぼに付き合った報酬なんだろう。


「うーん……。よし、決めた! これにしよう!」


 ステータス上昇アクセサリーも気になるが、俺は戦闘をメインにしているわけじゃないのだ。器用さと生産力が上昇するアクセサリーなら迷わずゲットしたんだがな。


 俺は座敷童の封じられた絵を取り外して、インベントリに仕舞いこんだ。


「えーっと、これで終了か?」


 特にイベントが起きたり、終了を告げるアナウンスもない。


「……あれ?」


 普通にアクセサリーを手に取れるんだけど。これって、もしかしてアクセサリーもゲットできるんじゃないか?


「いや、でもな……。アイテムを1つって言ってたもんな」


 ここは欲をかかずに帰ることにしよう。そうだ、欲深は罰せられるのだ。そのまま来た道を引き返す。すると、外に出た瞬間に再びウィンドウが起動した。そこには、「マヨヒガから持ち出したアイテム1つを差し上げます」とだけ書かれている。やはり欲をかかずに正解だったか。


「あ、白銀さんが戻ってきた!」


 どうやら俺が最後だったらしい。エリンギたちと情報を交換したんだが、人によって置かれたアイテムが違っていたみたいだった。


 アクセサリー4種は全員が見つけたそうだ。だが、壁にかかっていた絵に関しては、それぞれ違っていた。どうやら座敷童にあげたオモチャによって変化したらしい。


 また、座敷童にあげるオモチャなんだが、これはレトロゲーム露店で人形をゲットした妖怪に対応して、修復されるようだ。コガッパのベーゴマ露店に自力勝利して人形を手に入れた冬将軍だけ、ベーゴマが修復されて座敷童にあげることができたそうだ。


 しかも、座敷童との隠れんぼに関して、おかわりが発生しなかったという。まだ続けるかどうかというアナウンスがなく、『アイテムを受け取って屋敷を退出する』、『アイテムを受け取らずに屋敷を退出する』の2つしか選べなかったらしい。


 その理由はいまいち分からなかった。お手玉なのか、人形4種コンプなのか、他に理由があるのか……。


「すまん。だとするとずいぶん待たせたな」

「いえ、おかげで露店を回れましたから。検証する時間も取れましたし」

「それで、白銀さんは何を手に入れたのでしょうか?」

「おオ、俺も興味があル!」

「ああ、俺はこれだよ」


 エリンギたちは普通にアクセサリーをゲットして戻ってきていた。人が持っているのを見ると、急に羨ましくなるんだが……。


 いやいや、座敷童の絵はそれなりに入手が難しいみたいだし、これをゲットして良かったんだ。そう思っておかなきゃやってられん!


「うわぁ、絵ですか」

「さ、さすが白銀さん。チャレンジャーです」

「なるほド、ここで迷わず絵にイけるかラ、白銀さんなんだナ」


 妙に感心されてしまった。いや、結構迷ったよ? それにレアアイテムなんだし、皆だってこれを選ぶと思うけどな。


「まあ、使い道が分かるまではしばらくは持っておこう……」


 それよりも、もう時間がギリギリだ。風霊門のためにも、一度始まりの町に戻らないと。


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― 新着の感想 ―
[良い点] まさにマヨヒガの申し子(ωー
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