264話 手土産の準備
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「ムムー」
「――♪」
畑に入ると、オルト達が出迎えてくれる。
「おはよう。今日はのんびりするつもりだから、ゆっくり畑仕事をしていてくれな?」
「ムム!」
「――♪」
昨日は激戦続きだったからな。結局、北の地下洞窟を攻略した後、南の地下墳墓も攻略してしまったのだ。
アメリアのおかげだが、うちの子たちも頑張ってくれた。
特に守護者スキルを持つオルトと、火属性に耐性のあるヒムカは大活躍である。ボスであるコールコールゴーレムの召喚するコールゴーレムたちの攻撃を見事に凌いでくれていた。いやー、本当に頼もしかったね。ヒムカが戦闘であれだけ活躍する姿は初めて見たかな?
ダンジョンでは皆のレベルが上がったのだが、俺もレベルアップできていた。特に嬉しかったのが従魔術が25に達したことだろう。テイム枠が1つ増えるとともに、モンスターウィズというスキルを覚えたのだ。
これは一定時間、配下モンスターの知力、精神力を上昇させるというスキルであった。ルフレの回復量や、サクラの魔術ダメージも上昇するはずだ。
あとは、オルトのレベルが30になり、変異率上昇を、ヒムカもレベル20になったことで食器作製というスキルを覚えている。
オルトの変異率上昇は、作物の突然変異率を上昇させるというスキルなので今すぐ効果を確認できないが、ヒムカには食器作製の能力をしっかり見せてもらった。
今まではシンプルな食器を低品質で作れるだけだったのが、細かい装飾を施した綺麗な食器を作成できるようになっていたのだ。
サクラの木製食器、ヒムカの金属製食器と、色々作れるようになった。あとはガラスと陶磁器を作れるようになれば……。夢が広がるぜ。早く素材や施設をゲットしないとな。
因みに、ドロップなどで目ぼしいものは、ポルターガイスツの落とした赤翡翠と、コールゴーレムの落とした石炭だろう。
宝石は従魔の宝珠用にいくつあっても構わない。石炭に関してはヒムカが大喜びだった。炉に使用すると、製作物の品質を向上させることができるらしい。
他にも色々な素材はあったが、それらはインベントリに仕舞ったままになっている。今のところお金には困っていないし、装備品を作る時や、錬金に使えるかもしれないからだ。売るのはいつでもできるのである。
「よし、それじゃあアメリアが迎えに来てくれるまで、ハーブティーを作るか」
「ヤー!」
「フムー!」
農作業や調合を済ませた後に、お茶会に持って行くためのハーブティー作りにとりかかる。
数え切れないほどの種類のハーブティーを作ってきたが、中でもお気に入りの物が幾つかあるのだ。それを少し多めに準備しておこうと思う。
「ファウとルフレも手伝い頼むな」
「ヤ!」
「フムム!」
「ポコ!」
以前から何度も手伝ってもらっているので、要領は分かってくれている。そこに何故かチャガマも加わって、ワイワイとハーブティーをブレンドしていた。まあ、チャガマは興味深そうに見ているだけだが。
そうやってハーブティーを準備していると、俺はあることを思い付いた。
「お茶菓子が必要になるんじゃね?」
アメリアは何も言っていなかったが、お茶会と言えばお菓子だろう。いや、品評会だから必要ない?
「うーん。でも、急に押しかける訳だし、用意しておこう。手土産は必要だ」
ファウとルフレにハーブティーの量産は任せられるしな。
となると、何を作るかだ。何人くらい参加者がいるか分からないけど、できるだけ同じものが食べられる方がいいはずだった。
「クッキーを色々作ってみるか」
ハチミツクッキーを作った頃と比べて、今なら果物にヨーグルト、甘味野菜に山羊乳など、素材がたくさん揃っている。これで色々工夫をしたら、かなり美味しいクッキーが作れるんじゃなかろうか?
「山羊乳と山羊バターを混ぜてみよう」
購入制限があるので大量にあるわけじゃないが、北の町に行くたびに少しずつ買いだめてあるのだ。
その後、少しずつ色々な組み合わせを試した結果、お気に入りの味が2種類完成したのだった。
1つが、山羊乳と山羊バター、山羊ヨーグルトに乾燥紅葡萄、ハチミツを混ぜ込んだ味だ。爽やかな酸味があり、幾らでも食べれそうだった。ゲーム中だからか、山羊乳独特の匂いもなく、普通に美味しい。
効果はないが満腹度の回復量が多く、満腹度を満たすためのアイテムとしては非常に優れているだろう。
もう1つが山羊バター、ハチミツ、ランタンカボチャ、キュアニンジンを混ぜ込んだベジタブルクッキーである。しかもランタンカボチャ、キュアニンジンがともに甘いので、バターのコクも相まってかなり食べ応えのある甘いクッキーに仕上がった。
バフ効果として、一定時間燃焼にならないという効果があり、できれば火霊門探索前にゲットしておきたかった品である。
また、味にはあまり関係ないのだがベジタブルクッキーは完成すると何故かジャック・オ・ランタンの顔の形になった。俺がその形にしているわけではなく、自動でその形状に変化するのだ。多分、ランタンカボチャの効果なのだろう。面白い効果だ。
「よしよし、これなら皆喜んでくれるだろう」
他にお茶会に必要な物って何だっけ?
「お茶会……スコーン? いや、だめだ作り方を全く知らん。ベーキングパウダーとか必要そうだもんな。あとは……ジャムとかかな?」
ハーブティーにロシアンティー的な飲み方があるのか分からないが、あっても悪くはなさそうか?
「ワイルドストロベリー、ハチミツ、ロイヤルゼリー、ワインあたりで作れんか? とりあえずやって見よう」
そう思って材料を鍋にぶち込んで煮詰めてみたんだが……。
「ジャムはジャムだが」
ワインジャムというアイテムが完成したのだった。こんなアイテムもあるんだな。効果は微量のHP回復のみ。しかも食べ過ぎると酩酊になるそうだ。名前の通り、ワインがメインなのだろう。
ただ、味はかなり良かった。リアルで普段食べているイチゴジャムから甘みをかなり引いて、ワインの渋みを足した感じの味である。甘いジャムが苦手な人でも食べることが出来そうな、大人の味だ。
むしろお茶に合わせるにはこの方が良いんじゃなかろうか?
「甘いストロベリージャムを作るつもりだったが、結果オーライかな」




