183話 クママの新装備
畑仕事や調合を終えた後は、ギルドへと向かった。農業ギルドで、収穫したばかりの赤テング茸・白変種を納品する。
収穫した白変種の納品クエストがあることを思い出したのだ。それ以外でも、もやしや、水耕プールで収穫した水草なども納品し、合わせて5000G程度の報酬を手に入れるのだった。だが、重要なのはギルドランクが上がった事だろう。
無人販売所で売れる品物の量が増えた。あともう一つ、雇えるNPCの質が少し上がった。まあ、本当に少しだが。もっとギルドランクが上がったら、凄いスキルを持ったNPCが雇えるようになるのかね?
その次に向かったのは、ルインの鍛冶屋だ。体が大きくなって、今までの防具は装備できなくなってしまったからな。現在のクママはすっぽんぽんなのだ。いや、熊だからそれでもいいんだけどさ。戦闘力的な面でも、やはり防具は必要だろう。
実は昨日ログアウトする前に、冒険者ギルドに預けてあった素材なども渡して、依頼済みなのである。連絡してみるとルインはまだ北の街にいるらしい。
「こんちわー」
「クックマー」
「おう、来たな」
ルインの視線を受けたクママが、シュタッと右手を上げて挨拶をする。
「クマ公の装備はできてるぜ」
「楽しみですね!」
「ほれ、こいつだ」
名称:守護のポンチョ
レア度:3 品質:★6 耐久:280
効果:防御力+48、魔法耐性(小)
装備条件:精神12以上
重量:6
名称:泥のベスト
レア度:2 品質:★9 耐久:190
効果:防御力+20、水中呼吸(微)、暗視(微)
装備条件:知力7以上
重量:3
名称:青水晶のブローチ
レア度:3 品質:★6 耐久:260
効果:防御力+11、低確率でダメージ軽減
装備条件:体力腕力15以上
重量:1
「めっちゃ強いな!」
「だろう? 自信作よ」
俺の装備よりも遥かに強い。そもそもレア度も高いし、装備条件も厳しいのだが。
ルインには水霊、土霊の試練で入手したドロップや採集品、あとは青水晶なんかも渡してあったのだが、見事に利用してくれたらしい。
ただ、かなり派手だな。土霊のガーディアンのドロップをメインに作ったという守護のポンチョは、その名の通りポンチョの形をしている。しかも民族衣装の方ではなく、完全に幼稚園児が雨の日に被るあれだ。抜ける様な空色をした、可愛らしいポンチョだった。
まあ、クママには似合いそうだからいいか。その下に着こむ泥のベストは、襟付きのお洒落な茶色ベストである。泥という名前が少し気になるが、水と土の属性を合わせたっていうことなのだろう。
青水晶のブローチは名前そのままで、青い水晶に金具が付いた装飾具だ。ベストの胸元にキラリと輝いている。ダメージ軽減効果は低確率でも、前衛のクママには嬉しい能力だ。これでオルトと並んで優秀な壁役になってくれるだろう。魔術に耐性までついたしね。
「じゃあ、これが代金です」
「おう! 毎度!」
俺は6万Gをルインに支払った。素材持ち込みなのにかなり高いが、これだけの装備だ。文句はない。俺の持ち込んだ素材以外に色々と必要だったんだろうしな。
「あと、こいつも持っていけ」
「これは……バンダナ、いやスカーフですか?」
「お前んとこのリスのだ。いつまでもあんな弱い装備のままじゃ、すぐに死に戻っちまうぞ」
ルインが投げ渡してきたのは、赤いスカーフだった。ワンポイントで小さい水晶の様な物があしらわれている。
名称:守護者のスカーフ
レア度:3 品質:★5 耐久:210
効果:防御力+19、麻痺耐性(小)、毒耐性(小)、出血耐性(小)
重量:1
予想以上に強かった。こんな凄い装備をもらっても良いのか?
「気にするな、お前から渡された素材のあまりを使ってるから、俺は損をしてない」
「じゃあ、有り難く使わせてもらいますけど、いいんですか?」
「どうしても気になるなら――」
「気になるなら?」
「あー、その、なんだ」
珍しくルインが言いよどむ。どうしたんだ? やっぱり代金をよこせとか?
「今度、あのリスを連れてこい」
「は?」
「だから、次はリスを連れてこいって言ってるんだよ! わかったか!」
どうやらルインはリック派だったらしい。しかし、髭もじゃドワーフが顔を赤くしてツンデレしている絵面は色々キツイな。
「わ、分かりました。次は連れてきます」
「おう!」
さて、装備関係はこんなもんだな。俺のローブをどうしようかとも思ったが、まだいいだろう。オークションもあるしね。ローブ自体が手に入らなくても、良い素材が入手できればそれでローブを作ってもらっても良いのだ。
「となると、次はいよいよ花見のお誘いだな」
俺は始まりの町に戻ると、花屋のスコップの下に向かった。
「スコップさん、こんにちは」
「おお、旅人さんじゃないか! 久しぶりだな」
「はい。お久しぶりです」
「今日はどうしたんだい?」
「実は、桜の花がようやく咲きまして。お花見のお誘いに来たんです」
「なるほど! そりゃあいい!」
俺の言葉に、スコップが満面の笑みで頷いた。
「じゃあ、ライバとピスコ叔父には俺から連絡しておくよ。旅人さんは他に参加できる奴を探してくれないか?」
「え? 他に?」
「おう! 花見は人が多い方がいいからな!」
特殊クエスト
内容:花見にプレイヤー、NPCを参加させる
報酬:参加者に応じて変化
期限:3時間
「3時間後に、桜の前で集合だ! いいかい? もし誘える人がいないのであれば、俺の方で人を探すが?」
「いえ、俺の知人を当たってみます」
「そうか? じゃあ、頼むな」
さて、とりあえずフレンドに片っ端から声をかけてみるか。報酬は集めた人数に応じて変化するみたいだし、できるだけたくさん呼びたかった。とりあえずフレンドの一番上にあるアシハナからだな。ログインしているようなので、フレンドコールをかけてみる。
『もしもし?』
「今、話せるか?」
『平気だよ』
俺はアシハナに、特殊なクエストの関係で花見をすることと、その参加者を探していることを伝えた。すると、食い気味に参加するという返事が返って来る。
「いいのか?」
『クママちゃんもいるんでしょ?』
「そりゃあ、いるけど……」
『絶対行くから!』
クママにお酌くらいはさせてやるか。ただ、デカくなったクママに驚かなけりゃいんだけどな。まあ、その時はその時だ。
「た、助かるよ。参加者が多いに越したことがないからな」
『じゃあ、私も友達を連れて行こうか?』
「お願いしてもいいか?」
『任せておいて! 大丈夫、ちゃんと食べ物とかも持っていくから!』
そう言えば料理や飲み物の事を完全に忘れていたな。俺のインベントリにある食べ物を全部放出しても、全員分を用意するのはかなり大変だろう。少しでも持ってきてもらえたら有り難かった。
「頼む」
『うん、じゃあまた後でね!』
さて、次はアメリアだな。




