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123話 ウサギの良さ


『大悪魔グラシャラボラスの撃破に成功しました。おめでとうございます』

「おおー!」

「やった!」

「戦闘部隊グッジョブ!」


 撃破アナウンスの直後、俺やオルトたちのレベルが1つずつ上昇した。戦闘に少ししか貢献してない俺たちがレベルアップできるとは……。さすが大規模レイドボス、どんだけの経験値だよって話だ。他に、スキルなどが一気にレベルアップしているな。アナウンスが一気に来すぎてもう何が何だか!


 確認していたら、アメリアが駆け寄って来た。


「きゃー! 白銀さん! オルトちゃん! やったね!」

「アメリア。お疲れさん」

「いやー、あんな早めに死に戻っちゃったのに、レベルが上がっちゃって、なんか申し訳ないんですよねー」

「俺もだな」

「あ、やっぱり? スキルレベルも上がって、すっごいラッキーだったけどね」


 そう言えば、俺もスキルレベルが上がったんだよな。従魔術はレベルが15に達して、モンスターキュアというスキルを得ていた。これは、モンスの状態異常を治せる術らしい。ただ、全てではなく、毒、麻痺、出血、痛撃、火傷、凍傷だけを治せる様だ。テイムできるモンスの数も増えたし、従魔術のレベルアップはマジで嬉しいのだ。


 アメリアはしゃがみ込んで、オルトに話しかけている。


「オルトちゃん、大丈夫だった? 痛いところとかない?」

「ム?」


 アメリアは相変わらずだった。死に戻ったオルトを心配したり、小首をかしげるオルトを見て黄色い悲鳴をあげたりしている。


 後ろにいるアメリアのモンスたちを見ると、嫉妬した様子はないな。むしろ、ヤレヤレっていう感じだ。


 うーん、こうやって見ると、兎もいいなー。モフモフでヒクヒクでウサウサだ。


 な、撫でたい……。だが、俺とアメリアはフレンドじゃないので、この兎さんを触ろうとしてもブロックされてしまうのだ。


うちの子のファンたちが、スキンシップを取るために俺とフレンド登録をしたがる理由が分かったな。


「……」

「ピョン?」

「か、かわいい……」


 つぶらな瞳で俺を見上げて、鼻をヒクヒクさせる兎さん。背中のハート模様がラブリーすぎる。我慢できん!


「なあアメリア、フレンド登録しないか?」

「ええ! いいの?」

「ああ、ダメか?」

「ううん! むしろこっちからお願いします!」


 と言う事で、俺たちはフレンドコードを交換した。


「ねえ、オルトちゃんと遊んでいい?」

「いいぞ。俺もそのウサちゃんを撫でていいか?」

「いいよ! うちのウサぴょんに目を付けるとは、白銀さんもやりますな!」

「いや、このモフモフはぜひ撫でねばいかんでしょう?」

「さすが白銀さん! お目が高い! ウサぴょんの毛はすっごいの! モフモフどころか、モフォモフォ! 一度抱いたらもう離せなくなっちゃうから!」


 オルトファンであっても、やはり自分のモンスが一番なんだろう。俺がウサぴょんを抱きたいと言うと、満面の笑みでその良さを語ってくれる。


 しかし、ウサぴょんね……。いや、俺のクママも似たようなもんか。アメリアからウサぴょんを受けとる。大人しいもんだな。


「ピョン?」


 おおー、リックやクママとはまた違う、やわらかい毛と、フニフニの体の感触だ。まさにモフォモフォ。


 この真っ白なお腹に顔を埋めたいが、さすがに人のモンスにそこまでできんよな~。後でリックのお腹をモフらせてもらおう。


 アメリアと共に互いのモンスを愛でていたら、村の老人たちが再びやって来た。そして、口々に礼を言い始める。


「ユートよ、感謝するぞ」

「そなたとその仲間たちのおかげで助かりました」

「ありがとう! 村に損害が出なかったのも、貴方達のおかげです」


 そこに他の村人も次々と集まって来て、あっと言う間に大人数に囲まれてしまった。空港で出待ちをされる韓流スターの気持ちが分かりそうだぜ。


 何故、俺のところに来る? 巻き込まれて一緒に囲まれているアメリアにコソッと聞いてみた。


「なあアメリア、なんで俺の周りに来るんだ?」

「そりゃあ、サーバー貢献度1位だからじゃない?」


 そう言えば、そんなランキングがあったな。いつの間にか1位になってたので、実感もいまいちだ。なのにリーダー扱いされたり、村人に感謝されたり、影響力は大きいんだよね。


「お主らの活躍は、きっと神もご覧になっておる事じゃろう。村を救ってくれて、本当にありがとう」


 多分、運営が見てるって事かな? 村も無傷だし、神聖樹も枯らさなかった。グラシャラボラスも撃破したし、他のサーバーがどんな状態か分からないけど、イベントの攻略状況は悪くないと思う。


 少し気になるのは、守護獣たちがやられちゃったことだな。ガーディアン・ベア、ガーディアン・ボア、共にグラシャラボラスに倒され、動かなくなってしまった。あのまま死亡扱いになっていたら、ポイントがマイナスになってしまうのではなかろうか?


 だが、その後村に帰還したコクテンたちに話を聞くと、グラシャラボラスを撃破した直後に、守護獣は復活して去っていったと言う。良かった、死んでなかったか。


 戦闘部隊のプレイヤーの大半は、装備の一部が破損してしまっており、HPMPも半分以下だ。それでも、皆笑顔だった。あれだけの大ボスを倒したわけだし、達成感が半端ないんだろう。こういう時は、ちょっと戦闘職が羨ましくなるね。



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