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27.夫婦喧嘩は犬も食わない

最終回が近くなってきたので、人気投票やることにしました!

人気が上位のキャラはSSなんかを書こうと思っています!

詳細は活動報告にて記載していますので、よければ見てやってください!


投票サイト↓


https://t.co/x1ug3nWS8g?amp=1

 俺はアロンダイトを持つ手に力を込め、レックスが残していったエクスカリバーを拾い上げる。二刀流かぁ……あのハーレム勇者みたいで嫌だけど、贅沢言ってられねぇな。


「行くぞ!セリスッ!!」


「私の名前を呼ぶなぁぁぁ!!」


 幾何学模様を描くように飛んでいた魔力球が俺に狙いを定めて一斉に向かってきた。俺は究極(アルテマ)身体強化(バースト)を発動し、迫りくる球を一つ一つ斬り伏せながらセリスに近づいていく。

 とまぁ……なんか始まったんだけど、どうすりゃいいのか全然考えついていないんだよね。この状況を打開するためにはとにかくセリスに俺を認めさせることが大事だと思うんだけど……俺が本当にクロムウェル・シューマンである事を理解させれば、あいつも目を覚ますだろ、知らんけど。そのためにはとにかくあいつに近づかねぇと。


「今すぐそこに行ってやるぜ!!待ってろ!!」


「近づかないでっ!!」


 面と向かってそれを言われるとかなりへこむ。特に惚れている女に。でも、本音じゃないんだろ?だって、俺はこうやって近づくことができているんだから。

 俺に斬られた魔力球は、斬られた同士が結合し、さらに大きくなって俺に襲い掛かってくる。それでもエクスカリバーとアロンダイトを使えば、なんとか迎撃することができた。流石は伝説の勇者が作った逸品だ、性能がばかげてる。


「つっても、ここまで攻撃が激しいと近づくどころじゃねぇぞ、これ」


 魔王の間が無駄に広いってのもあるけど、セリスとの距離が絶望的に遠い。あいつの近くに行けば行くほど魔力球の数は多くなっていくから、そう簡単には近づけねぇんだよ。まずはこの厄介な魔力球を吹き飛ばさねぇと。

 そう考えた俺は魔法陣を構築し始めた。大切なのはこの無数の魔力球に俺の魔法をぶち当て、動きを止めること。なるべく広範囲にまき散らすような魔法を組まなきゃならねぇ。それを見たセリスが髪を振り乱しながら声を張り上げる。


「魔法陣なんて作れない……作れるわけがないっ!!」


 な、なんだ!?魔法陣が消えていくぞ!?どういうことだ?……そうか、あいつの言葉に反応しているのか。セリスが魔法陣を作れないと言えば、そうなるように世界が動く。いやいやいやちょっと待て……そんなことになったらもうどうすることもできねぇぞ!?


「消えろ……消えてしまえっ!!」


 そうなったら、セリスを救えねぇじゃねぇか!!


「消えるわけねぇだろっ!!」


 俺はセリスに負けない声で言い放った。セリスの身体がビクッと震える。


「消えねぇ!!絶対に消えねぇ!!俺はこの魔法陣でお前の目を覚ますっ!!」


「そ、んな……!?」


 一度消えかけた魔法陣が再び息を吹き返した。よし、これなら魔法を唱えられる。


「“砂漠の霰(デザートヘイル)”!!」


 地属性と風属性を合成させ生み出された砂の飛礫が魔王の間に吹き荒れた。その砂の飛礫(つぶて)から主人を守るべく、魔力球がフル稼働し始める。つまり、俺にまとわりつく魔力球が減ったってことだ。


「“無重力状態(ゼロ・グラビティ)”!!」


 続いていつもの重力属性魔法を発動。こっちの方が地上を行くよりも自由に動くことができるはずだ。


「と、飛べない!!人間は空を……!!」


「なーに言ってんだ?空なんか飛んでねぇよ。ただ、重力を操作しているだけだっつーの。鳥じゃねぇんだから飛べるわけねぇだろ」


「くっ……!!」


 セリスが悔しそうにギリッと奥歯を噛んだ。ははーん、こいつは使える。ただの屁理屈だけど、効果覿面みたいだな。しっかり念じないと”失楽園(パラダイス・ロスト)”は発動しない。お願いだから人間は重力なんて操作できないって言わないでください。


「オラオラオラァ!!邪魔だ、どけぇ!!」


 俺は無茶苦茶に剣を振りながらセリスへ向けて飛んでいく。魔力球の層が薄い、これならあいつの所まで行くことができるはずだ。


「来るな……!!こっちに来るな……!!」


 セリスの顔には焦りが浮かんでいた。俺を見ながら両手を動かし、魔力球をかき集めていく。巨大な魔力球の塊が二つ、セリスの前に浮かび上がった。そいつらは飴細工の様に形を変え、龍と虎の姿を模していく。


「来るな……来るな……!!」


 うわ言の様に呟きながら、両手を俺の方に向けた。すると、魔力で出来た龍虎が俺目掛けて突進してくる。俺は左手に握るエクスカリバーを虎に、右手に握るアロンダイトを龍にぶつけた。


「ちっ……!!なんつーバカげた威力だ……!!」


 究極(アルテマ)身体強化(バースト)をフルに発動していることに加え、アロンダイトには限界まで魔力を注ぎ込んでいる。なのに、俺の方が圧されてるなんて悪い夢以外の何物でもねぇ。だが、負けねぇ、負けるわけにはいかねぇ!!


「うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!邪魔すんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 俺は力の限り、二本の剣を振りぬいた。その瞬間、俺に牙をむいていた龍虎が真っ二つになるのと同時に、黄金の剣と漆黒の剣が粉々に砕け散る。……これで本当にさよならだ、相棒。マジで世話になった。ありがとな。


 俺は柄だけになった剣を投げ捨て、一直線にセリスへと向かう。一秒でも早く、あいつのもとに駆け付けたい。これ以上、セリスにあんなつらそうな顔をさせたくねぇんだよ。


「来るな……来るな……来ないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 喉から血が出るほどの大絶叫。でも、そのお願いは聞けねぇな。俺には早く私の所に来て、って言っているように聞こえちまうから。

 さっきまで俺に襲い掛かっていた魔力球に加え、龍虎となっていたものが融合し、一つの魔力球となって俺とセリスの間に立ちはだかった。それはさっきと同様、形を変えていき、一羽の神々しい鳥に変貌する。


「これ以上私を……惑わせないでぇ…………!!」


 セリスが両手で頭を抱え激しく左右に振った。まじっすか。あの鳥はちょっとばかしやばそうですねぇ……俺が死ぬ的な意味で。アロンダイトもエクスカリバーも失った今、あれに対抗できるのは魔法陣を組み上げる時間も考慮して”七つの大罪(セブンブリッジ)”だけだ。いや、あれでも厳しい。全力で撃ったとしても、力負けするのは明白だ。どちらにせよ、セリスを傷つける可能性がある魔法は撃てない。


「……だったら、俺に残された選択肢は一つしかねぇな」


 今の俺にできること、それは……。


 俺は覚悟を決め、こちらを威嚇している鳥目掛けてなんの策もなく真正面から突っ込んでいく。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 セリスの作り出した鳥が俺とぶつかる瞬間、煙の様に消えていった。自然と口角が上がった俺はそのまま速度を落とさずにセリスのもとへと飛んでいく。


「セリスっ!!!!!!!!」


「っ!?!?!?!?!?」


 そして、そのまま包み込むようにセリスの身体を抱きしめた。何かを言おうとしたセリスの唇を俺の唇で塞ぐ。息が続く限界までそうしていた俺は、静かに唇を離し、硬直しているセリスに笑いかけた。


「やっと捕まえたぞ……バカ嫁が」


「あっ……あっ……」


 震える身体を宥めるように、腕に力を込める。初めは抵抗していたセリスも少しずつ身体から力が抜けていった。


 まったく……本当に手のかかる奴だ。普段は何でもそつなくこなすくせに、嫉妬深かったり、勝手に思い悩んだりしてポンコツ秘書の一面を見せる。

 アルカをドラゴンから助けた時だって、チャーミルの街を勇者から守ろうとした時だってそうだ。自分を犠牲にしてまで誰かのために生きている。そういう奴なんだよな、お前は。俺なんかよりよっぽど危なっかしいって言うんだよ。


 だから、これからもずっと、俺がお前のことを守り続けてやる。



 目を開けると、金色の髪が目に飛び込んできた。頭には柔らかな感触。これは俗にいう膝枕という奴ですな。

 少しだけ頭をずらして、周りの様子をうかがう。さっきまで魔王の間にいたはずなのに、今はどこかののどかな草原地帯にいるようだった。


「……目を覚まされましたか?」


 セリスの優しげな声が耳をくすぐる。俺が真上を見上げると、ダークブルーの瞳がこちらを見つめ返してきた。


「あぁ……ここはどこだ?」


「さぁ、わかりません。私が静かな場所で二人きりになりたい、と願ったらいつの間にかここにいました」


 まだ、魔法が続いていたってことか。セリスの願いに、世界が応えたんだ。


「また無茶をなさったみたいですね……ですが、今回に関しては私もクロ様にとやかく言える立場ではありません」


「そうだな。ぶっちゃけお前の方が大分無茶したぞ?」


「反省しております」


 セリスが俺の身体に手を添えながら頭を下げてきた。


「……まぁ、俺も無茶したことには変わりないからな。おあいこだ」


「ふふっ、そうですか。ありがとうございます」


 よくよく考えたら、死んでから蘇るっていう離れ業をやってのけてんのか。なんか、やっぱり俺の方が無茶した気がしてきた。


「……一つ、お伺いしてもいいですか?」


「ん?なんだよ?」


「どうして私の”朱雀(すざく)”になんの対策もとらずに飛び込んできたのですか?」


 ”朱雀(すざく)”……あのやば鳥の事かな?


「……思い出したんだよ、お前に立てた誓いをな」


「誓い?」


「あぁ……結婚式の時に言っただろ?何があってもお前を信じぬくって。だから、俺はセリスがあの魔法を消してくれるって信じたんだ」


「クロ様……」


 咄嗟に口元を抑えたセリスの目から涙が溢れる。なんとなく気恥ずかしくなった俺は身体を起こし、その場で立ち上がった。


「あーっと……あれだな。ここでのんびりすんのもいいけど、帰って後片付けすんのが先だな」


 両手を組み、おもいっきり伸びをすると背中がボキボキと音を鳴らす。こりゃ、筋肉痛確定だわ。二、三日は動けねぇんじゃねぇか。


「それに消しちまった奴らも元に戻してやらねぇと……それは可能なんだろ?」


 俺が振り返ると、少し離れたところでセリスは微笑みながら静かに佇んでいた。その表情を見た俺は言いようのない胸騒ぎに襲われる。


「……セリス?」


「ごめんなさい、クロ様……私は一緒に戻れません」


「は……?」


 言っている意味がまるで分らない。一緒に戻れない?どういうこと?


「ちょっと待て……一体何を言って」


「人間達が魔族を恐れる理由を知ってしまいました。人間の王が私に拘る理由も……この力が原因だったのですね」


 俺が混乱の絶頂にいる中、セリスは自嘲じみた笑みを浮かべながら自分の手を見た。


「世界の常識を無理やり書き換える力……確かにそんなものが存在したら、なんとしてでもその力を無力化しようとしますよね」


「お前……まさか……!!」


 セリスのやろうとしていることが分かってしまった俺は慌ててそっちに行こうとする。


「……クロ様はこちらに来れません」


 だが、それはセリスの言葉に阻まれた。身体の自由が全く効かない。必死になって自分の身体を動かそうとする俺を見て、セリスは慈しむような笑顔を向けてきた。


「この力を使ってこの力を封印します。そして、私という存在の記憶を抹消します。そうすれば、魔族と人間が争わない平和な時代が訪れるはずです」


「そんなことしたら許さねぇぞ!!これは指揮官命令だ!!」


「残念ながらその命令は聞くことができません」


 こいつは……こいつはまた犠牲になろうって言うのか?魔族のために……人間のために。


「クロ様に出会えて本当に良かった……あなたはいつも私に温もりを与えてくれましたね」


「おいやめろセリス……!!」


「あなたと恋をして、あなたと愛を育んで、あなたと共に生きる道を選んで……私は本当に幸せでした」


「そんな言葉聞きたくねぇ!!」


 動けよ!動けよ俺の身体!!動いてそのバカな考えを止めさせろよ!!お願いだから動いてくれよぉぉぉぉぉ!!


 セリスはゆっくりと俺に近づき、俺の頬に手を添えると涙を流しながら口づけをする。そして、ゆっくりと唇を離し、とびきりの笑顔を浮かべた。


「ありがとう……そして、さようなら。私の最愛の人」


「セリス……!!」


「……この世界に『セリス』という魔族は存在しなかった。だから、人間達が魔族を脅威に思うことは何一つない。これからは魔族と人間が互いに手を取り合って生きていく時代が永遠と続いていくことになるでしょう」


 そうセリスが言った瞬間、俺の見ている風景がぐにゃりと歪んでいく。


「そんな世界でクロムウェル・シューマンは本当の幸せを掴み取る……それが私の願いです」


 その風景に吸い込まれる様にセリスは俺から遠ざかっていった。やっと身体に自由が戻った俺が懸命に手を伸ばしても届かないはるか遠くに。


「セリスっ!!」


 だが、声なら届くはずだ。


「俺は負けねぇぞ!!お前の魔法になんて負けねぇ!!例え記憶からお前の存在が消えようとも、必ず見つけ出してやるからな!!覚悟しておけよ!!」


 セリスは答えない。ただ黙って微笑んでいた。


「いいか!!絶対にだ!!絶対にお前を見つけ出してその名前を呼ぶ!!魔王軍指揮官を舐めるんじゃねぇぞ!!」


 幻惑魔法がなんだ!!世界を滅ぼす力がなんだ!!そんなもんで俺のセリスを思う気持ちを止められるわけがねぇんだ!!


「俺の本当の幸せはセリスと共に生きていくことなんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 俺の魂を込めた叫びが、消えゆく景色の中で木霊した。

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