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8.全力

「"二つ頭の可愛い(ビッグドッグロック)岩んちゃん(・デュオ)!!」


「"大噴射(スプラッシュ)"!!」


 岩で形作られた双頭の番犬と激しい水の飛沫がぶつかり合う。魔法の威力はほぼ同じ。だが、等級は異なる。片方は二種(デュオ)最上級魔法(クアドラプル)の重複魔法であり、もう片方はただの上級魔法(トリプル)。魔法陣の数が魔法の威力を飛躍的に倍増させるというのに、半分以下の数で格上の魔法を相殺に持っていくなど、悪夢以外のなにものでもなかった。

 だが、アルカはこの状況を十二分に楽しんでいる。


「すごいすごーい!シンシアお姉さんはやっぱりすごい!!」


「……褒めていただき光栄ですね」


 興奮した面持ちでぴょんぴょん飛び跳ねるアルカとは対照的にシンシアの表情に余裕は一切なかった。さっきまでは秘境のように木が生い茂っていた二人の周囲が今は更地と化している事からも、かなりの魔法を撃ち合ったことを窺わせる。戦闘開始と同時に耳につけていた魔力制御装置を外したシンシアは、この戦いが終わるまで自分の魔力を制御できるか不安であった。


「"四つの巣から(リトルサンダー)飛び出した(バード・)ビリビリ小鳥さん達(カルテット)"!!」


 四個の上級(トリプル)魔法陣から雷でできた無数の鳥が飛びかかってくる。シンシアは迎撃すべく即座に優勢属性である地属性の魔法陣を組成しようとしたが、魔法を放つ彼女を見て大きく目を見開いた。


「"風の鷹さん、突撃!(エアロトマホーク)"」


 風属性の最上級魔法(クアドラプル)を前にして対処方法を変更する。シンシアは手を前にかざし、魔法障壁を張りながら内心舌を巻いていた。

 恐るべき魔法陣構築のスピードだ。四種(カルテット)上級魔法(トリプル)の重複魔法という離れ業をやってのけながら、インターバルなしで最上級魔法(クアドラプル)を放つなど、普通の人間にはまず不可能。


 シンシアの張った壁に雷が迸り、続いて暴風がぶち当たる。その瞬間、二人の魔法で近くに転がっていた木片などが綺麗さっぱり吹き飛んだ。その結果また一段と二人の周りの見晴らしが良くなる。まさに自然災害に匹敵するほどの魔法だったというのに、シンシアは何事もなかったかのようにその場に立っていた。


「本当にすごいの!アルカの最上級魔法(クアドラプル)を魔法障壁で楽々受け止めちゃうなんて、ルシフェル様みたい!」


 キラキラした瞳を向けられ、なんとも言えない表情を浮かべるシンシア。目の前にいるのは魔族の代表であるため、自分にとって間違い無く敵なのだが、どうにも心からそう思うことができない。


「お姉さんはどんな訓練をしているの?アルカもお姉さんみたいになりたい!」


 まさかの敵から自分のようになりたい発言。これにはシンシアも思わず苦笑いを浮かべてしまった。


「……私は他の人とは少し違うんです」


「違う?」


 小首を傾げるアルカにシンシアは遠慮がちに頷く。


 彼女は生れながらにして魔法陣に愛されていた。


 初めて魔法を使ったのは城で家庭教師から魔法陣について習った時。初歩的な魔法を唱えるよう言われ、教わった通りに最下級の火属性魔法を放ったら中庭が小火騒ぎになった。

 火属性魔法が特別なのかと思ったがそういうわけではなかった。他の属性でも結果は同じ。なぜだかわからないが、同じ魔法陣でも彼女が魔法を撃つと、他の者よりも威力が高かった。それも段違いという言葉が似合うレベルで。

 それを知ったお付きの家庭教師が彼女を神童だ、ともてはやした。当然、王の耳にもそれが届き、大層喜んでいたが、当の本人は自分の力に恐怖しか抱けないでいた。


 歳を重ねるごとに魔法陣の腕は上達していく。その度に彼女は化け物じみた自分の力と向き直らなければならない。周りの者達は「神の祝福」などと言っていたが、自分からしてみれば身に余るこの力は「神の呪詛」以外のなにものでもなかった。


 そして、彼女は自分の才能に蓋をする。他人の賛美よりも普通に生きていくことを選んだ。尤も、その封印を自らの手で解き放つ事になるとは思ってもいなかった事なのだが。


「……私の魔法陣は自動で魔法の効果が増幅されるみたいなんです。同じ魔力の消費でも、その威力は数倍にもなります」


「ぞうふく?うーん……難しい事はよくわからないけど、とにかくシンシアお姉さんはすごいって事?」


 アルカが眉を寄せながら尋ねると、シンシアは自嘲じみた笑みを浮かべる。


「すごい……のですかね?私にはわかりません」


 なんの努力もせずに得たこの力……正直、彼女は嫌いだった。仲間達が本気で魔法陣の練習をしている中、自分がやっていたことはいかに本気を出さないか、というもの。学園の授業の一環として行われる模擬戦でも、常に手加減をしているような感覚。相手を軽んじていると言われても反論できない。


 なぜか気落ちしている彼女の顔をアルカが心配そうに覗き込む。


「どうしたの?大丈夫?」


 その声から溢れんばかりのアルカの優しさを感じた。本気で自分を気遣ってくれている彼女を見て、自分の心がより一層戦いに臨むものから遠いていく。


「これはいけませんね……他の人達はきっと必死に戦っているでしょうし」


 シンシアはキッと表情を引き締めると、その場で後ろに飛び、アルカと向き直った。


「アルカさん、私達は敵同士なんです。馴れ合いは不要です」


「シンシアお姉さんとアルカは敵……」


「そうです」


 きっぱりとそう告げると、シンシアは魔力を身体に巡らせる。それを見て、アルカも慌てて魔力を練り始めた。


「あなたがとてもいい人だということはわかりました。エルザ先輩の言っていたことが少し理解できた気がします……ですが、この戦いは人間の存亡をかけたもの。私は負けるわけにはいかない」


 心に迷いがあるのはどうしようもない。だが、父親も言っていた。王たる者、私情を持ち込んではならない。曲がりまりにも自分は王家の血筋を引く者……国のために、ひいては人間のために全力をかけなければならない。


 ズゴゴゴゴ……。


 覚悟を決めて魔法陣を組成しようとした瞬間、地鳴りのような音が響き渡る。アルカとシンシアが同時に音のした方へと視線を向けると、自分達のせいで更地になっていた地面から何者かがゆっくりと姿を現した。


「なっ!?ド、ドラゴンっ!?」


 突然現れた高ランクモンスターに動揺を隠せないのも束の間、放たれた炎のブレスから魔法障壁を張りながら慌てて後方へと回避する。燃えている口元を鼻息で吹き消しながらドラゴンは自分の縄張りを侵す不届き者達を睨みつけた。自分達の王から巣穴に籠っていろ、という命令を受けたもののこんなにも近場で騒ぎを起こしていれば、黙っていることなどできるわけもない。


「このタイミングで……!!」


 シンシアはドラゴンをけん制しながら、思わず表情を歪めた。こうなってしまえばアルカと戦っている場合ではない。青白い鱗をしていることからこのドラゴンはクリスタルドラゴンに違いない。この種類はドラゴンの中でも魔力耐性が高く、魔法による攻撃が主体である自分とアルカには相性の悪い相手。このままでは二人とも殺されてしまう。


「とにかくあの魔物を何とかしなければ……アルカさんっ!!」


 かなり絶望的な状況ではあるが、二人で力を合わせればなんとか打開できるかもしれない。そう考えたシンシア共闘を申し出るべく、アルカの方に顔を向ける。


「ここは青いドラゴンさんのお家だったんだ……悪いことしちゃったの」


 そんな彼女は木の上に立ちながら眉を落としてドラゴンを見つめていた。焦燥に駆られている自分とは対照的に、彼女からは一切の緊迫感は感じられない。その様に一瞬呆気にとられたシンシアだったが、素早く頭を振り、もう一度アルカに声をかけた。


「アルカさんっ!あのドラゴンは危険です!ひとまず戦いを中断して一緒に倒しましょう!」


「うーん……せっかくジルさんがお家で大人しくしててねって言ってくれたのに、その近くで遊んでいたアルカ達が悪いの。……でも、このままじゃシンシアお姉さんとの続きができないよね」


 そう言うと、アルカは一瞬で二種(デュオ)最上級(クアドラプル)身体強化(バースト)を自分の身体に構築し、同時に転移魔法を発動する。そして、再びこちらに向かってブレスを吐こうとしていたドラゴンのもとまで転移すると、静かに腕を振りかぶった。


「……ごめんね。少しの間だけお昼寝してて欲しいの」


 ドゴォンッ!!


 心底悲しそうな声とは対照的に、凄まじく鈍重な音がこの場にこだまする。その強烈な拳を喰らったドラゴンは白目をむいてゆっくりとその場に倒れ込んだ。アルカは泡を吹いている頭を申し訳なさそうに撫でると、立ち上がりシンシアの方に顔を向ける。


「これで大丈夫なの。……このドラゴンさんは後でパパに頼んで回復してもらうからその時にちゃんと謝るの」


 罰が悪そうにアルカは呟いた。だが、その言葉はシンシアの耳には届かない。それほどまでに今起こったことが信じられなかった。


 アルカは自分と同じ、強力な魔法を駆使して遠距離からの戦いを得意とするタイプ。実際に戦った結果、勝手にそうだと思っていた。思い込んでいた。

 だが、実際は違ったのだ。確かに、魔法陣は驚くほど精錬されており、魔法の威力はシンシアの知る限り比肩する者は自分の師であるマーリンぐらいだと思われる。ただ、目の前にいる魔王軍指揮官の娘はそれだけじゃなかった。

 二つの最上級魔法陣(クアドラプル)で自分を強化するという信じがたい所業、複雑な転移魔法陣を瞬時に組成する技術、冒険者にも恐れられるドラゴンを一発で倒す破壊力。今まで自分と繰り広げていたのは彼女にとって児戯に等しい行為だったことを痛感させられた。


「……なるほど。初めから私に勝ち目はなかったのですね」


 思えばここに連れられてきたのも、アルカの転移魔法によるもの。その時点で彼女の力量をしっかり見極めるべきだった。


 気まずそうにポリポリと頬を掻いているアルカに、シンシアは微笑を向ける。


「アルカさん、私の負けです」


「ほえ?」


 アルカが素っ頓狂な声を上げながら目を丸くした。自分の思った通りの反応見せる彼女を見て、シンシアはなんとなくおかしい気持ちになる。


「私に合わせて魔法の打ち合いを挑んでくれたんですよね?接近戦なら即座に勝負がついたというのに」


「あっ……えっと……」


「やっぱりそうなのですね」


 目を激しく左右に動かすアルカ。シンシアは笑いながら諦めたように息を吐いた。


「私は身体強化(バースト)が得意じゃないですからね……無理をしても上級(トリプル)がやっとです。その程度ではまったくアルカさんの相手にはなりませんものね」


 シンシアの特異体質はあくまで魔法陣から魔法を放つ時に発動する。そのため、魔法を行使するわけではない身体強化(バースト)には効果が出なかった。


「……敗戦を喫してしまったので合わせる顔がありませんが、皆さんの戦いを近くで見守りたいと思いますのでこの辺で失礼させていただきます」


 ぺこりと頭を下げ、シンシアはアルカに背を向けて歩き始める。


「待って欲しいの!」


 そんな彼女の背中にアルカが慌てて声をかけた。シンシアは足を止めると、ゆっくりとアルカの方に振り返る。


「どうしました?……負けを認めたからといって、敵を見逃すわけにはいかないと?」


「そうじゃないの!まだ勝負はついてない!だって、お姉さんは本気を出してないんだもん!」


 アルカの言葉にシンシアの肩がビクッと跳ねあがった。そんな彼女の揺れる瞳をアルカはしっかりと見つめる。


「お姉さんの強さは本物だよ!なのに、まだ全力で魔法を撃ってないの!だから、アルカはお姉さんの本気が見たくてずっと魔法を撃ってたんだよ!」


「私の全力……」


 シンシアがアルカの視線から逃げるように目を伏せた。アルカの言う通り、シンシアは自分の限界を出してはいない。その理由ははっきりしていた。


「……私はまだ未熟者でして、自分の力をうまくコントロールできません。なので、今の私が全力で魔法を撃ったらどうなるか……怖いのです」


 そう、恐怖だ。自分の魔法が引き起こす破壊がどれほどのものなのか、想像するだけで過去のトラウマが蘇る。


「お姉さんは未熟者なんかじゃないよ!!」


 ほんの少し本音を吐露したシンシアに対して、アルカは勢いよく頭を振って否定した。


「戦ったアルカにはわかる!シンシアお姉さんはすごい魔法陣士さんだよ!同じ魔法を使ったらきっとパパだってルシフェル様だって敵わない!」


 必死に自分を慰めるアルカを前にして、シンシアの気持ちは穏やかなものになっていく。本当に不思議な女の子だ。なぜ人間である自分をここまで気遣ってくれるのだろうか。彼女は学園で残虐非道と教わった魔族だというのに。……いや、今更それを鵜呑みにすることなどできない。この時間を通して、魔族は人間と全く変わりない種族であることを知ってしまったから。


「……どうして、私に全力を出させたいのですか?」


 それでも聞いてみたかった。彼女が自分の全力にこだわる理由。


「え?どうして?」


 一瞬ポカンとした表情になったアルカだったが、すぐに当然と言わんばかりの顔で言い放つ。


「そんなの決まってるの!全力で魔法を撃った方が楽しいからだよ!」


「た、楽しい?」


「そうなの!それにすっきりするの!お姉さんにもそれを感じて欲しいな!」


 アルカが満面な笑みを浮かべた。それを見たシンシアの身体から、フッと力が抜けていく。


 楽しい……魔法を撃つ時にそんな感情を抱いたことはない。あるのははち切れんばかりの破壊力を無理やり抑制しなければならないという嫌悪感だけだった。だからこそ、それを解放すれば彼女の言ったようになるのかもしれない。


 マーリンに対しても全力で魔法陣を構築したことはない。ただ、アルカであればしっかりと受け止めてくれるような気がした。


 シンシアはゆっくりと息を吐き出すと、気絶しているドラゴンの周りに魔法障壁を張った。巻き込んでしまった彼を、自分達のわがままに付き合わさせるわけにはいかない。


「アルカさん……これから使う魔法は生まれて初めて試すものです。何が起こるかは一切わかりません」


 自分の中にある魔力をありったけひねり出す。その量は人間の枠を超えるものではないが、彼女の特殊な体質である魔力増幅を考えると、その威力は計り知れない。


「……全力でいきますよ?覚悟してください」


 シンシアは集中力を高め、魔法陣を構築し始めた。作り上げるのは四つに重ねた最上級魔法陣(クアドラプル)。それ自体組成したことはなかったが、自分の最も得意とする火属性であれば、作り上げることができる確信があった。

 目の前で出来上がっていく魔法陣を見ながら、アルカは嬉しそうに笑いながら武者震いをする。上級魔法(トリプル)ですら自分の最上級魔法(クアドラプル)を凌駕する威力であったのに、それを超える魔法陣であればどれほどの性能になるのか想像もつかない。


「やっぱりお姉さんはすごいの!」


 アルカは後ろに下がると、体内の魔力を一気に爆発させた。そして、そのまま自分が出来る最高の魔法陣を作り出す。四重の魔法陣が五つ、基本四属性と父親から教わった重力属性。それを見たシンシアは驚きながらも、笑みを向けた。


「アルカさんもすごいです!……私も負けていられません!」


 彼女はより慎重により丁寧に魔法陣を構築していく。時間がかかっても構わない。焦る必要はない。たとえ相手の方が早く魔法陣を作り上げたとしても、完璧な魔法陣で自分をすごいと言ってくれた彼女にぶつかりたいのだ。


「いくよー!シンシアお姉さん!”金ピカドラゴンさん(ファン・ロン)”!!」


「こちらもいきます!”獄炎の歪フレアディストーション”!!」


 シンシアの魔法陣が構築し終わったのを見計らってアルカが魔法を発動する。それと同時に彼女も魔法を唱えた。


 シンシアの魔法陣から噴き出したのは視界を埋め尽くすほどの業火。山を一つ焼き払うには十分な程の火力を内包した極大の炎がアルカ目掛けて襲い掛かる。

 一方、アルカの魔法陣から飛び出したのは四匹の龍。フェルの十八番であり、以前クロが見せてくれた"四大元素を司る龍エレメンタルドラグーン"を重力魔法により、合成させ一匹の金色の竜を生み出した。


 二つの規格外の魔法がぶつかり合う。その瞬間、なにもかもが吹き飛んだ。その規模は今までの魔法の打ち合いがお遊びだったと思えるほどのすさまじさ。

 どちらの魔法も一歩も譲らない。顕現した伝説の龍を焼き尽くすべく纏わりつく獄炎を、黄龍が喰らいつくそうとする。その様は神話の世界をそのままくり抜いたかのように激しく、そして神々しかった。


「……くっ!!」


 シンシアの魔法陣が震えだす。これ以上もたせることはできない。だが、負けられない。負けたくない。


「……っはぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 限界を超えて魔法陣に魔力を流し込んだ。破壊の権化と化している炎がその身に力を宿す。


「アルカも全力だー!!」


 魔力の支援を受けた黄龍が負けじとその体躯を肥大化させた。その強靭な体で自らに襲い来る凶炎を力でねじ伏せようとする。


 二つの魔法を取り巻く圧力が更に激しさを増した。それでも拮抗状態は続いていく。どちらも意志を持っているかのように、己の誇りをかけて相手を叩き潰そうとしていた。


 だが、二者の底知れないパワーにこの世界が耐えきることができなかった。二人の放った魔法は絵の具の様に交じり合うと、そのまま想像を絶する爆発を引き起こす。


「はぁ……はぁ……」


 魔法障壁によって爆風から自身を守ったシンシアは荒い息遣いのままその場に膝を崩した。もう初級魔法(シングル)も放つことができない。それほどに彼女の魔力は空っぽになっていた。

 指一本動かすのも億劫になるほどの疲労感に苛まれながら、シンシアはアルカの方に顔を向ける。アルカは満足そうな笑みを浮かべると、そのまま大の字になって地面に横たわった。


「っはー!楽しかった!!やっぱりシンシアお姉さんはすごいのっ!!」


 アルカの声にはまだまだ余裕が感じられる。あそこまで驚異的な魔法を使ったというのに、だ。やはり自分はこの小さな女の子に勝つことはできなかった。にもかかわらず、シンシアの心はやけに晴れやかだった。


「どう?全力で魔法を撃つと気持ちいいでしょ?」


 ピョコっと身体を起こしてキラキラした瞳でこちらを見てくるアルカにシンシアが優し気なまなざしを向ける。


「……えぇ。アルカさんの言っていた通りとてもすっきりしました。それにとても楽しかったです」


「でしょー!」


 アルカが嬉しそうに笑った。それにつられるようにしてシンシアの顔にも笑みが広がる。


「またやろうね!シンシアお姉さん!」


「はい……是非」


 その言葉は本心からのものだった。その事に気が付いたシンシアは驚きつつも、心はすんなりとそれを受け入れる。そう思えたのも目の前にいる可愛らしい魔族の女の子のおかげだ。アルカに感謝しながら、シンシアはゆっくりと自分の意識を手放していった。

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