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20.名前を呼んだら反応するのがお友達


 やべぇよやべぇよ。まじでやべぇよ。


 ぶちギレフローラさんがまじでやばい。目の血走り方が怖すぎる。


 もうね、斬ってるっていうか剣で殴ってるって感じ。しかもありえない力で。アロンダイトで受けるたびに、重すぎて地面にヒビが走るからね。


 まいったなぁ……なにがまいったって、こんな状態続けてたらフローラさんの身体がぶっ壊れちまうってことだ。


「無理しすぎだっつーの!!死んじまうぞっ!?」


「この期におよんで私の心配!?自分の身を心配した方がいいんじゃないかしらっ!!」


 フローラさんが剣を薙ぎ払うと、そのままデーモンキラーが数体吹き飛んでいった。それはいいんだけど、ここからどうすればいいのかまるで思いつかん。


「お願いだからもう帰ってくれよ!」


「あなたを倒すまで帰らないわ!」


 懇願作戦失敗。万策尽きました。


 まずいぞ……このままフローラさんが魔力を行使し続けたら、最悪魔力暴走が起こっちまう。それだけは何とか防がねぇと。


 かと言ってどうする?気絶させられれば魔力を止められるけど、今のフローラさんははっきり言って強い。生命力を燃やして強力な聖属性魔法を使ってんだ、強いに決まってる。早急に勝負を決めるだなんて無理な話だ。


 無詠唱で魔法陣を連発する。全部、あの白いのに弾かれちまってんな。目くらまし程度の効果しかねぇか。本腰入れた魔法じゃねぇと、あの鎧は貫けねぇ。


 ……一つだけ方法がある。それは究極(アルテマ)身体強化(バースト)を使ってそっこーフローラさんを無力化するってことだ。


 だけど、それをしちまったらデーモンキラーを倒す力が残るか自信がねぇ。俺が倒れてこのクソ兵器共が砦に行っちまったら魔族は終わりだ。


 ……あぁ、くそっ!でも、やるしかねぇだろ!!


 俺は五重の魔法陣を頭の中で構築しながら、究極(アルテマ)身体強化(バースト)を発動しようとする。


「げほっ!!」


 突然、フローラさんの膝がガクっと折れ、その場で吐血した。そのまま蹲る様に倒れ込み、地面に手をつく。


 これは……魔力切れか?


 しめた。暴走が起きる前に魔力が切れたんならもう大丈夫だ。すさまじい倦怠感に襲われているだろうけど、それは自業自得ってことで。


 俺はすぐさま頭を切り替え、デーモンキラー達に身体を向ける。フローラさんは放っておいても、デーモンキラーに襲われないから問題ないだろ。


 そう思っていた俺の目に信じられない光景が飛び込んできた。


「えっ……?」


 顔を上げたフローラさんが思わず間の抜けた声を漏らす。味方であるはずのデーモンキラーが振りかぶったメイスを、フローラさん目掛けて叩き下ろした。


 ガキンッ!!!


 間一髪、転移魔法でフローラさんの前に移動した俺が、そのメイスを受け止める。ただそれだけなのに、俺を中心に大きなクレーターが地面に広がった。


「こ、いつら……!!」


「シュ、シューマン君!?」


 フローラさんが困惑したような声を上げるが、それに応える余裕はない。デーモンキラーの力が半端なく上がってやがる。それこそ、フル強化のライガに匹敵するぐらいに。


 メイスを降ろしたデーモンキラーはすぐさま携えている斧を横なぎにしてきた。なんとかアロンダイトで防いで直撃は免れたが、そのまま猛スピードで横へと吹き飛ばされた。


「きゃぁぁぁぁぁ!!!!」


 その叫び声に反応し、目を向けずにフローラさんの所に転移すると、背中に激痛が走る。あー、こりゃバッサリいったわ。


 俺は倒れそうになるのを何とか踏ん張り、左腕でフローラさんを抱き上げると、さっき頭で作り上げていた魔法陣を身体に刻み込む。


「ご、五重っ!?」


 驚くフローラさんを無視して、俺は究極(アルテマ)身体強化(バースト)を解放する。そして、肩を抉られながらも、アロンダイトを思い切り振りぬいた。飛び交うデーモンキラーの部品。そんなのいちいち確認してらんねぇ!とにかく、近づくものは全部ぶっ壊す!


 だが、デーモンキラーが強化されたのはパワーだけではなかった。片腕に荷物を持った俺の攻撃、奴らは軽々と躱していく。それだけに留まらず、フローラさんがいる左側ばかり集中攻撃してきた。防ぎようがないから自分の身体を盾にするしかねぇ。くそっ……フローラさんを庇いながらだと、転移魔法も使えねぇよ。


「お、降ろして!私をっ!早くっ!!」


 みるみる傷が増えていく俺を見て、フローラさんは涙目になりながら訴えかけてきた。なんだよ、俺を倒すために来たんだろ?だったら俺が攻撃受けても別にいいだろうが。


「このままじゃシューマン君が死んじゃうっ!!」


 デーモンキラーの槍が太腿にささり、俺は思わず歯を食いしばる。死ぬ?結構じゃねぇか。兄貴の(かたき)なんだろ?殺すつもりで来たんじゃないのか?


「なんでよっ!なんで私を助けようとするのよ……!!」


 あーもう鬱陶しい……ボロボロ泣きやがって。泣くぐらいなら戦場なんかに来るなっていうんだよ。


「私達は敵同士なのよ……!?なのに……なんで……!!」


「うるせぇ!!」


 俺が大声を上げると、フローラさんが腕の中でビクッと身体を震わせた。


「あんたが死ぬとレックスのバカ野郎にどやされるだろうがっ!!いいから今は生き残ることだけ考えやがれっ!!」


 俺の言葉を聞いたフローラさんは涙を流しながら口を真一文字に結び、顔を下に向ける。やっと静かになったか。これで打開策を考えられる。


 落ち着いて考えるんだ、クロムウェル。お前は頭脳明晰で容姿端麗、そして眉目秀麗だ。……眉目秀麗と容姿端麗って違いあんの?


 デーモンキラーを全滅させる……出来るんだったら最初からやってるわ。却下。


 フローラさんだけこの場から逃がす……その方法を教えてくれよ。却下。


 とりあえずデーモンキラーさん達に頼み込んで少しの間だけ待ってもらう……最近厨二病語はわかってきたけど、兵器語はさっぱりわかりません。却下。


 人に頼る……そういや奴隷のロリババアがいたな。採用。


「フライヤァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!」


 喉がはち切れんばかりに叫び声をあげ、フローラさんを力の限り、上空へと投げ捨てた。フローラさんの驚いた顔が一瞬見えた気がするけど、気にしている余裕はない。


「……でかい声で名前なんて呼ぶんじゃないわい!!誤解されるじゃろうが!!」


「フ、フライヤさんっ!?」


 上から聞こえる怒声に、俺は思わず笑みを浮かべる。


「そう言うなって。友達なんだろ?」


「……昨日言ったことを激しく後悔しておるところじゃ」


 フライヤとフローラさんの気配が消えたところで、俺も転移魔法を発動し、デーモンキラー達から距離を取った。


 ふぅ……結局奥の手を使っちまったな。どっちにしろ、なんか知らんがいきなり強化したこいつらを相手にするには究極(アルテマ)身体強化(バースト)を使うしかなかったからしゃあねぇか。


 一度大きく伸びをすると、赤く光る眼をこちらに向けるデーモンキラー達に向き直る。


「来いよ、木偶人形共。相手してやる」


 俺は不敵な笑みを浮かべると、アロンダイトを担ぎ、クソ兵器の群れへと飛び込んでいった。


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