第4章 黄色い写真を添えて(霧宮ナツハ編)中編
撮影スタジオ
霧宮さんとの写真を撮る日が来た。少しだけドキドキが止まらない。
すると井上さんが僕に話しかけてくれた。
井上カメラマン
「やあ、莉緒くん。この間はごめんね。お詫びと言ってはなんだけど写真を撮らせてくれないかと思ってね……引き受けてくれてありがとう。」
井上さんは深々とお礼をしてくれた。
真瀬莉緒
「いえ、僕は霧宮さんに言われて……それに、断る理由もなかったので……。」
井上カメラマン
「そっか……じゃあ早速撮ろうか。」
そう言われ、僕たちはグリーンバックの前に立つ。
井上カメラマン
「それじゃあいくよ。」
井上さんはカメラのシャッターを何度か切った。
慣れない撮影に僕はしどろもどろになっている……井上さんに何度か声をかけられるも、どうすればいいかわからない……。
すると霧宮さんが耳元で囁く。
霧宮ナツハ
「莉緒くん、大丈夫よ。落ち着いて撮影すれば良い写真が取れるから。」
真瀬莉緒
「えっ、あ……はい。」
霧宮さんにそう言われると、次第に落ち着きを取り戻し、次第に表情にも笑みが浮かんできた。
井上カメラマン
「お、いいね! その調子だよ! どんどん撮るからね!」
井上さんにも喜んでもらえ、撮影はどんどん進んでいく。
撮影を終えて僕たちは撮影した写真を確認する。
真瀬莉緒
「おお……すごいや。」
たくさんの写真が並び、さまざまな表情をした僕たちの写真を確認し、僕は1枚の写真が目に入った。
真瀬莉緒
「これは……。」
霧宮ナツハ
「莉緒くんもその写真が気に入ったのね。」
真瀬莉緒
「はい。この写真が1番良いです。」
霧宮ナツハ
「決まりね。じゃあ……背景は……これでどうかしら?」
真瀬莉緒
「……これは良いですね! そうしましょう!」
霧宮ナツハ
「ふふふ……ありがとう。」
僕たちが選んだのは黄色い背景が鮮やかに輝いている写真だ。
僕の表情はとても良く、霧宮さんも楽しそうな表情をしていた。
僕が初めて撮影を見学したときや水着撮影のときの表情とは違い、心から楽しそうな表情をしていた。
マネージャーさんが霧宮さんは僕がいると楽しそうと言っていたけれど、確かに今、とても楽しそうだ。でも何故だろう、僕も霧宮さんと一緒にいるととても楽しい……。
霧宮ナツハ
「それじゃあ井上さん。これでお願いいたします。」
井上カメラマン
「ああ、わかったよ。じゃあこれでプリントするね。」
井上さんはそう言うとすぐに僕たちの写真をプリントしてくれた。
そして僕と霧宮さんの2枚、写真を渡してくれた。
霧宮ナツハ
「ありがとうございます。」
僕もすかさずお礼を言う。
真瀬莉緒
「ありがとうございます。」
井上カメラマン
「こちらこそ無理言ってくれてありがとう。また何かあったらよろしくね。」
真瀬莉緒
「は、はい。よろしくお願いいたします。」
こうして撮影は終了した。
僕たちは六郭星学園の寮に帰るため、帰り道を歩いていた。
真瀬莉緒
「今日は楽しかったですね。霧宮さん。」
霧宮ナツハ
「そうね。…………ん。」
真瀬莉緒
「え……?」
何を思ったのか、霧宮さんは手を差し出してきた。
霧宮ナツハ
「今日は……手を繋ぎたい気分。莉緒くん……お願い。」
真瀬莉緒
「霧宮さん……。」
霧宮ナツハ
「私……卒業までって言ったけれど、待ちきれない。私じゃあ……ダメかな?」
真瀬莉緒
「霧宮さん……やっぱり……。」
霧宮ナツハ
「どうかな……?」
僕は…………。
真瀬莉緒
「…………僕で……良いんですね。」
霧宮ナツハ
「莉緒くん!」
霧宮さんは嬉しそうな表情をして、僕を見つめていた。
真瀬莉緒
「手……繋ぎましょうか。」
霧宮ナツハ
「ええ、もちろんよ。帰りましょう。」
手と手を握り、僕たちは帰路へ着いた。それまでの間の手の温もりはとても心地良かった。
最初は霧宮さんと僕はただのパートナーだった。
でも今は違う。とても大切なパートナーだ。
まだ霧宮さんとの課題は残っている。大切なパートナーとして作っていくんだ!
六郭星学園 音楽室
僕たちは作曲の最終段階に入っていた。これでもかと言うくらい熱心な練習をしている。
恋のパートナーになってからは初めての練習ではあるが、上手く続いている。
真瀬莉緒
「ここがこうで、ここはこうしてください。」
霧宮ナツハ
「ええ、わかったわ。こうね……。」
霧宮さんのヴィオラはとても心地よい音色を響かせていた。
真瀬莉緒
「良い音色です……。霧宮さん。」
霧宮ナツハ
「ふふふ……ありがとう。」
真瀬莉緒
「この調子ならもうすぐで完成しそうです。」
霧宮ナツハ
「ええ、これなら大丈夫ね。それじゃあ、終わったら学食にでも行きましょうか。」
真瀬莉緒
「そうですね。ちょうど良い時間ですからね。じゃあ行きましょうか。」
霧宮ナツハ
「ええ。それじゃあ行きましょう。」
僕たちは練習を切り上げて学食へ行くことになった。
六郭星学園 食堂
食堂に行くと担任の神谷先生がいた。
神谷乙音
「おお! 2人ともお疲れ様!」
真瀬莉緒
「神谷先生……!」
神谷乙音
「作曲は順調? 私も楽しみにしているからね〜!」
霧宮ナツハ
「ありがとうございます。そう言っていただけるとありがたいです。」
神谷乙音
「あ、そういえばナツハ! シオンやエリカから聞いたわよ! 無理して撮影してたんでしょ!」
霧宮ナツハ
「あ……。それは……すみません。」
神谷乙音
「先生はね。こんなんでも生徒の心配はちゃんとしているんだからね。必要があるならば、すぐに助けを求めて良いんだからね。」
霧宮ナツハ
「神谷先生……。」
神谷乙音
「さ、莉緒も座って。先生とご飯でも食べよう!」
真瀬莉緒
「あ、はい!」
僕と霧宮さんは神谷先生に言われるがままに食堂でご飯を食べながら、曲のことを話した。
神谷乙音
「そっかー! それじゃあもうすぐ完成するのね。ちなみに歌詞とかはできているの?」
真瀬莉緒
「歌詞ですか……? それは……。」
僕が少しうろたえていると……
霧宮ナツハ
「歌詞は私が作ります。どうしてもこの曲に書きたい言葉があるんです。」
神谷乙音
「ほおほお……。作りたい歌詞ねえ……。」
霧宮ナツハ
「この歌詞は今度の課題発表の時までには間に合わないですが、声優さんに見てもらう時までには間に合わせます。」
神谷乙音
「そっかー! じゃあ、莉緒はそれで良いの?」
真瀬莉緒
「僕ですか? 僕は……。」
霧宮さんの作る歌詞……少し気になるな。期待してみよう。
真瀬莉緒
「はい。霧宮さんに託したいと思います。」
霧宮ナツハ
「莉緒くん……ありがとう。絶対に間に合わせるからね。」
神谷乙音
「よーし! それなら問題無し! それじゃあ2人の作曲した曲、楽しみにしているからね!」
真瀬莉緒
「は、はい。ありがとうございます。」
僕たちは神谷先生にお礼を言い、食事を終えてそれぞれの部屋へと戻った。
六郭星学園 莉緒・ノクアの部屋
風亥ノクア
「お、おかえり。どうだった今日は?」
真瀬莉緒
「今日はとても良かったよ。霧宮さんとの曲作りも順調に進んでいるよ。」
風亥ノクア
「そうか……それは良かった。」
真瀬莉緒
「それに……歌詞も霧宮さんが考えてくれることになったよ。」
風亥ノクア
「ナツハが? ……そうか。ナツハならなんとかなるか。」
真瀬莉緒
「うん。どんな詞を書くかわくわくが止まらないよ。」
風亥ノクア
「そうだね。きっと良い歌詞を作るさ……きっとね。」
真瀬莉緒
「ん……?」
風亥ノクア
「なんでもないよ。さ、そろそろ寝なきゃね。」
真瀬莉緒
「あ、うん……おやすみ……。」
僕はノクアに少しだけ気になる間があり、疑問を抱いたが、夜も更けてきたため、僕も寝床に着くことにした。
六郭星学園 音楽室
あれから数日、僕たちの曲は……
真瀬莉緒
「できた……! 僕たちの曲が!」
霧宮ナツハ
「ええ、これならきっと……! あの人も喜んでくれると思うわ!」
真瀬莉緒
「はい! やることは全てやり尽くしました。きっと気に入ってもらえると思います。」
霧宮ナツハ
「ええ……ここまで良くなるとは思わなかったわ。莉緒くん……ありがとう。」
真瀬莉緒
「……どういたしまして。」




