第3章 黄色い光(月川タクト編)中編
来川医療センター 月川タクトの病室
あれから数日、私は月川くんの病室にいる。月川くんはまだ心を閉ざしたままだった。
真瀬志奈
「月川くん……。」
月川タクト
「…………志奈さん……。俺……あの記憶だけは思い出したくなかったんだ……。」
真瀬志奈
「それを……三蜂レンカが……。」
月川タクト
「……俺はどうしても許せないんだ……けど……行方不明で……どうすればいいのか…。」
真瀬志奈
「……………………。」
来川医療センター 玄関前
月川くんはあの状態のまま……私はどうすればいいのか……行方不明になっている犯人を見つける方法も難しいのに……
真瀬志奈
「はぁ……どうすればいいのかしら……」
その時、私の目の前が眩い光に包まれると同時に大きな爆発音が鳴る。
真瀬志奈
「な、何!?」
??
「やぁ、真瀬志奈さん。お会いできましたね。」
真瀬志奈
「あなた…………私の名前を何で知ってるの?というよりあなたは?」
虹谷サイ
「失礼、僕は虹谷サイ。僕は今とある調査をしていてね。」
真瀬志奈
「ちょ、調査?」
虹谷サイ
「はい。月川タクトはとある容疑があってね。」
真瀬志奈
「容疑って……」
虹谷サイ
「というわけで、彼を連れ出すよ。」
真瀬志奈
「な…………! やめてください!!」
虹谷サイ
「どうして止める? 彼は容疑者なんだよ。それとも彼を庇うのかい?」
真瀬志奈
「あの状態で連れ出したら月川くんはまた苦しみます!これ以上苦しませたくないです!」
虹谷サイ
「…………。」
真瀬志奈
「あなたがなんなのか知りませんが、あなたが月川くんを連れ出すなら私は許しません。帰ってください。」
虹谷サイ
「……君は彼の何なんだい?」
真瀬志奈
「わ……私は……。」
私は…………月川くん……タクトくんの……
真瀬志奈
「彼女です…! 私はタクトのことを愛しています!」
虹谷サイ
「…………。そうか。わかったよ。君の好きにすれば良い。」
そう言って、再び光に包まれ、虹谷サイは消えていった……
真瀬志奈
「なんなの……今のは……。」
……ただ、これでわかった……私はタクトが好きなんだって……。今までの気持ちは恋心だったことに気がついた。
真瀬志奈
「助けなきゃ……タクトのことを……。そして、あの曲を完成させなきゃ……!」
六郭星警察署
翌日、私は夜坂さんと一緒に三蜂レンカの嫌がらせの手紙について相談をしに行った。
女性警官
「なるほど……確かに悪意があるわね。」
真瀬志奈
「はい…………もう心がボロボロになってしまって…………」
女性警官
「もう1人被害者がいて……名前が月川タクト…………ねえ…………月川タクトか…………。わかりました。なんとか対応します。」
夜坂ケント
「すみませんが、よろしくお願いします。」
女性警官はこくりと頷き、席を離れた。
夜坂ケント
「これで少しは落ち着ければいいのだが……」
真瀬志奈
「そうですね……。」
夜坂ケント
「ふぅ…………学園に戻るか。」
真瀬志奈
「はい。」
六郭星学園 Eクラス教室
警察署を訪れた数日後、私は柊木さんと古金さんに呼び出された。そこには星野さんもいた。間を空けないかのように柊木さんが口を開く。
柊木アイ
「真瀬さん、この間の話だけど少し重たくなりそうなんだ。覚悟はできてるかい?」
そう言われると私はすかさずに覚悟を伝える。
真瀬志奈
「大丈夫です。覚悟はできてます!」
柊木アイ
「わかったよ。言うね……調べたらタクトくんのお母さんと犯人の奥さんは姉妹だったんだ。」
真瀬志奈
「姉妹……。」
柊木アイ
「誤見あかり。タクトくんのお母さんの名前。犯人の奥さんは誤見めりって名前だったんだ。」
真瀬志奈
「誤見……?どこかで…?」
古金ミカ
「ところがどっこい。それだけならまだどうしたで済むけど、犯人がぶつけた車…………外国車だったの。」
真瀬志奈
「外国車?」
柊木アイ
「知り合いの警察によると、警察の資料ではぶつけた車は日本車になっているんだ。」
真瀬志奈
「それって……どうしてそうなっているんですか?」
古金ミカ
「調べてみると、事故の当日に廃車にした車はこの辺りだと1台だけ。それも外国車。その上目撃したのは警官1人だけ。」
真瀬志奈
「それじゃあ……もしかして……。」
星野シキア
「冤罪の可能性もある……?」
柊木アイ
「その警官が嘘をついているかもしれない……!」
古金ミカ
「しかもその担当警官の名前は誤見ひかり。」
真瀬志奈
「……!」
柊木アイ
「彼女も姉妹で、もしかすると家族ぐるみの計画の可能性も高い。今、知り合いの警官に調べてもらってる。」
真瀬志奈
「それじゃあ犯人だった方は……」
星野シキア
「自分がやってもないのに犯人に仕立て上げられ、家族から絶縁される…………そりゃあ狂うわよ。」
真瀬志奈
「そ……そんな……。」
柊木アイ
「担当警官は今現在の行方はわからない……。調べたら写真はあるみたいだからそれもまとめて調べてもらっている。」
真瀬志奈
「担当警官がわかれば何があったのか、わかるんですか……?」
柊木アイ
「確実ではない……でもタクトくんを救うためには可能性は低くても助けなきゃ!」
真瀬志奈
「柊木さん…………!」
古金ミカ
「ちょっと〜。アイだけにいい思いはさせないよ!私も力になるわ!」
真瀬志奈
「古金さん…………!」
星野シキア
「……………………。」
真瀬志奈
「みなさん……ありがとうございます!」
そう言ってその日は解散した。
六郭星学園 志奈・シキアの部屋
星野シキア
「……タクト。救えるかしら。」
真瀬志奈
「大丈夫です。タクトはきっとあの時のタクトに戻るわ!」
星野シキア
「えっ……タクト?」
真瀬志奈
「私、気づいたの。この気持ち。私はタクトと一緒にいたい。そう思ったの。」
星野シキア
「そう…………。いいわね。」
真瀬志奈
「星野さんはタクトを信じないの?」
星野シキア
「いえ……ただ夢を持って羨ましいだけ……。」
真瀬志奈
「……夢?」
星野シキア
「ねえ、少し勝負しない? 私が出す問題に答えてくれたら私の過去のこと教えてあげる。」
真瀬志奈
「……わかった。私も知りたい。」
星野シキア
「いいわ。じゃあ勝負よ。」
勝負をした結果。私が勝った。
星野シキア
「強いわね。私の負け。教えてあげるわ私の過去……。」
星野さんに勝った私は過去の話を聞く。
星野シキア
「覚えている? 私と初めて会った時のこと。夢みたいなことを言うなって言ったこと。」
真瀬志奈
「ええ…………。覚えてるわ。」
星野シキア
「私ね、タクトと一緒で声優さんに曲を作りたいって夢を持っていたの。ただ…………その夢を潰された。私は音源を作り、応募した。でもね、審査員は譜面も見ずに破り捨てたの。」
真瀬志奈
「譜面を…………!? 酷い…………!」
星野シキア
「それ以来、信じられないの…………。夢を叶えられること。信じられそうにない…………。」
真瀬志奈
「星野さん…………。」
星野シキア
「タクトのことは任せるわ……。私にはこれが精一杯。」
真瀬志奈
「…………。」
ふと、目をやると若竹色のボールが目に入った。ペアを組むために引いたボールだ。
真瀬志奈
「タクト……。待っててね。」




