第3章 コバルトブルーの涙(夜坂ケント編)中編
六郭星学園 図書室
私は学園に戻ると図書室に何か手がかりはないか調べてみることにした。
真瀬志奈
「やっぱり無いか……。」
よく考えてみるとモンスター化についてなんて世の中では全く知られていない案件。乗っているわけがない。
真瀬志奈
「一旦部屋に戻ろう……。」
私は大量の本を本棚に戻そうとするが、思いのほか時間がかかってしまう。そこへ図書委員の柚木アイラさんが来て、片付けを手伝ってもらった。
真瀬志奈
「すみません。ありがとうございます。」
柚木アイラ
「いえ、構いません……私……でよければ……。」
真瀬志奈
「ありがとうございます。ではこれで……。」
私は図書室を後にした。
柚木アイラ
「あら……これは……?」
――月川一家交通事故事件まとめ――
柚木アイラ
「……? どうしてこれがこんなところに……?」
六郭星学園寮 志奈・ナナの部屋
来川ナナ
「あ、おかえり。」
部屋に戻るとナナが私を迎え入れてくれた。
来川ナナ
「どうだった? ケントの様子は?」
真瀬志奈
「…………。難しいかもしれない……。」
来川ナナ
「………………。ふう…………。」
ナナはため息をつくと窓の外を見つめていた。見つめていたナナは何かを考えているように見えた。
そして、何かを考え終わったのか、ナナはこんなことを言った。
来川ナナ
「ちょっと……ブラックジャックをしない?」
真瀬志奈
「ブラックジャック……?どうして急に?」
私にはナナが考えていることがわからなかった。……ただ、これがナナが気分転換に私にさせようとしているのかもしれない。
私はナナからの挑戦状に受けて立つことにした。
真瀬志奈
「いいわよ。勝負しましょう。」
来川ナナ
「よし……それじゃあ……いくわよ……!」
ナナとのブラックジャックの勝負が始まる!
決着がついた。勝ったのは……私だった。
来川ナナ
「負けね……。……でも楽しかったわ。ありがとう。」
ナナはそうお礼を言った。
真瀬志奈
「でも……どうしていきなり勝負を?」
私は疑問だったことをナナに聞いてみた。
来川ナナ
「……ケントことできっと悩んでいるんだろうなって。でもね……私はね、ケントが良くなるって信じているからね。私は志奈がこれで考え悩んでいるのみると辛くてね……少しでも気分転換になればなって思ってブラックジャックをやったわけ。」
真瀬志奈
「ナナ……。」
来川ナナ
「ねえ、信じてみてよ。ケントのことを。私は待っているから。」
真瀬志奈
「…………わかった。信じてみる!」
来川ナナ
「よし! じゃあ、ケントが戻るまでの間、作曲の練習をして待ってあげて!」
真瀬志奈
「ええ、わかったわ! 私……やってみる!」
私は、机にある楽譜を手に取り、すぐさま音楽室に向かい練習を始めた。
六郭星学園 音楽室
私はすぐさま練習を始めた。まず私が考えたのは夜坂くんのチェロの技術。どこまで弾けるのか……私はここまではできるだろうと信じてチェロの伴奏を加える。
真瀬志奈
「よし……ここを……」
私は自分が完成したと言えるところまで作曲を続けようとした。
その途中で音楽室のドアが開く音が聞こえる。
ドアの前にいたのは月川さんと柊木さんだった。
月川タクト
「真瀬さん。頑張っているね。」
真瀬志奈
「月川さん! 柊木さんも!」
柊木アイ
「来川さんから聞いたよ。ケントくんを信じて練習してるんだってね。」
真瀬志奈
「はい。私は待ってます。夜坂くんが元に戻ることを……。」
そう言うと月川さんと柊木さんはお互いを見て、ニヤリと笑った。
月川タクト
「それじゃあ、これ。貧相かもだけどアンパンと牛乳。頑張ってね。」
真瀬志奈
「あ、ありがとうございます!」
柊木アイ
「僕たちも信じているから。ケントくんのことを。」
月川タクト
「ああ、だからさ、作曲……頑張って!」
真瀬志奈
「はい!」
私はお礼を言うと月川さんと柊木さんは音楽室を後にした。
真瀬志奈
「頑張らなくちゃ……!」
私はアンパンをかじり、すぐさま練習を再開した。
数時間後……少しだけ作曲が詰まってきた……。どうしよう……。
??
「悩んでいるのね。」
真瀬志奈
「星野さん……!」
声をかけてきたのは星野さんだった。隣には古金さんも一緒だった。
古金ミカ
「はいはい。悩むのはいいけれど、こんなのはどうかなって。」
古金さんが持ってきたのは夜坂くんの写真だった。
真瀬志奈
「これは……!」
星野シキア
「ミカはね。ケントのことを見たら少しは思いつくこともあるんじゃないかって思ったのよ。……それで……どうかしら?思いつくことはあった?」
真瀬志奈
「夜坂くん…………。」
私は夜坂くんのことをさらに考える。…………そういえば、遊園地のときの夜坂くんの優しさ……不器用かもしれない……けれどその優しさも夜坂くんの一部なんだろう。私はその不器用な優しさを取り入れてみようと思った。
真瀬志奈
「ありがとうございます。おかげで少し作曲が進みそうです。」
星野シキア
「そう……それなら良かった。じゃあ私たちはここらへんで失礼するわね。」
古金ミカ
「ケンケンのことは私たちも応援しているからね!じゃあ!」
そう言い、2人は音楽室を離れた。
真瀬志奈
「よし……! 頑張らなくちゃ!」
私はすぐにさっきの案を捉えてアレンジを加えた。
そして……さらに夜も更けて……私は莉緒を呼んだ。
真瀬莉緒
「そっか……出来たんだね。……作曲。」
真瀬志奈
「ええ、莉緒、お願い。夜坂くんの代わりにチェロを演奏して。」
真瀬莉緒
「もちろん。ケントのためなら!楽譜を見せて。」
真瀬志奈
「ええ、はいこれが楽譜。」
莉緒はしばらくの間、楽譜を見ていた。
真瀬莉緒
「ふぅ……大体は掴めたかな。」
さすがは莉緒。楽譜を暗記するのが早い。
真瀬志奈
「それじゃあ……演奏するわよ。」
真瀬莉緒
「了解。」
私たちは夜坂くんとの曲を演奏する。
不器用な彼の優しさと強さをイメージして作った曲……
私たちは夜坂くんの想いを込めて演奏をしている。
そして……
真瀬志奈
「……完成したわね。」
真瀬莉緒
「うん……良い曲だね。」
真瀬志奈
「莉緒……ありがとう。」
夜坂くんの想いを込めた曲はしっかりとテープに録音をした。
少しだけ安堵していたとき……鹿崎先生が入ってきた。
鹿崎咲也
「真瀬! ……って2人ともいるのか。……いやそれどころじゃない! 大変だ!」
真瀬志奈
「鹿崎先生! どうしたんですか!」
鹿崎咲也
「…………夜坂の容態が急変した。」
真瀬志奈
「…………!?」
夜坂くんがあの状態で……!?
鹿崎咲也
「来川のお父さまから連絡があってな、すぐに真瀬にきて欲しいとのことだ。」
真瀬志奈
「わ、わかりました!」
私はすぐに準備をして来川医療センターに向かった。




