第2章 銀鼠の獣(夜坂ケント編)中編
六郭星学園 音楽室
夜坂ケント
「おお……これは……!」
翌日……私は夜坂さんに来川さんに聴いてもらった曲を弾いた。夜坂さんの反応はとてもいい感じな感触だ。
夜坂ケント
「チェロも入っていてとても良い。これなら俺でも弾ける。これで行こう。」
夜坂さんは即決で決めてしまった。実は私自身はこれで良いとは思わない……
真瀬志奈
「あの……もっと練習とかも色々と……。」
夜坂ケント
「練習か……たしかにそれは必要だな。まずは本当に弾けるか試してみるか。」
そう言うと夜坂さんはチェロを弾き始める。夜坂さんのチェロの腕前はとても良く、私の書いた曲をあっさりと弾いた。
夜坂ケント
「どうだ?これなら文句はないだろう。急いで練習をするぞ。」
真瀬志奈
「あ、あの……そういうことじゃなくて……。」
夜坂ケント
「時間はないんだ。とにかく練習するぞ。」
真瀬志奈
「…………。」
夜坂さんは何か焦っているのか、急かす様子が見れる。この状態では良い曲も弾けることはできない。
夜坂ケント
「……どうした?」
真瀬志奈
「いえ……わかりました。練習しましょう。」
ひとまず今は練習をして、早めに切り上げてもらおう。少し気になることがある。
夜坂ケント
「ああ……急いでやるぞ。時間があまり残ってない。」
真瀬志奈
「……………………。」
私は何も言わずに黙々と練習をし、夜になった時間に切り上げた。
六郭星学園 Kクラス教室
数日後……私は莉緒に相談をすることにした。夜坂さんの態度や言動について。
真瀬莉緒
「いや……正直なところ、俺も悩んでいるんだよね……。同じルームメイトではあるけれど……何かに追われている様な気がするんだよ。」
莉緒も夜坂さんに対して思うことが多々あった。何かに追われている……これに関しては私も共感を感じた。
真瀬莉緒
「姉さんの課題は……たしかに難しいけれど、1年の猶予があるならそれなりの曲は作れるとは思うけれど……。」
真瀬志奈
「ええ……夜坂さんは何か言えない事情があるのかしら……?」
莉緒と考えているとそこに古金さんと星野さんが教室に入ってきた。
古金ミカ
「おお?これはこれは莉緒っちのお姉さま。どうぞよろしく。」
真瀬志奈
「あ、はい……。」
星野シキア
「……で、志奈はどうしてここにいるの?」
真瀬志奈
「あ、はい……実は……。」
私は2人に夜坂さんのことについて話をした。
すると2人にも思うことがあったらしい。
星野シキア
「夜坂さんって人はこの間も焦っている感じがして、大丈夫ですかと聞くと焦りながら大丈夫だと言っていたわ。……あ、あと……。」
真瀬志奈
「あと……?」
星野シキア
「ずっと右腕を隠そうとしていたわ。一体何があるのかはわからないけれど……」
真瀬志奈
「右腕を……?」
言われてみればこの間の遊園地の時に苦しんでいた夜坂さんは腕を掴んでいた。夜坂さんは私たちに何かを隠しているのかしら……?
古金ミカ
「やっぱり気になりますな。一度、本人に聞いてみるのもありかと……」
真瀬志奈
「い、いえ、そこまでしなくても大丈夫です!」
私は夜坂さんのことを思い、聞いてみるのを止めた。
真瀬志奈
「だ、誰にだって言えないことがあります。いつかはきっと話してくれると思います。ですのでその時を待ちましょう。」
真瀬莉緒
「姉さんの言う通りだよ。2人とも気長に待ってみようよ。」
星野シキア
「…………そうね。もう少しだけ待ってみるわ。」
古金ミカ
「本人からの声……待ってみるとしましょうか!」
真瀬志奈
「あ、ありがとうございます。」
なんとかなったけれど……正直なところ夜坂さんの秘密は気になる。でもその秘密を無理に聞くことはできない……。
そんなとき、古金さんがあることを話した。
古金ミカ
「そうだ。話は変わるけれど、今度KクラスとEクラス合同でバーベキューをやろうと思っているんだけどどうかな?」
星野シキア
「バーベキュー? 合同で?」
古金ミカ
「そう。バーベキュー。アイと一緒に考えていて、先生に話してみたら許可が出たからやろうと思ってね。」
真瀬志奈
「バーベキュー……ですか……」
古金ミカ
「面白そうでしょ! やってみる価値ありですな!」
真瀬莉緒
「バーベキューか……久しぶりに楽しみができそうだよ。ね?姉さん。」
真瀬志奈
「……そうね。楽しみにしてます。」
古金ミカ
「よし!決まりですな!これはアイに話を通しておきますな!」
そう言うと古金さんは教室から出て行った。
星野シキア
「バーベキューね……。」
真瀬莉緒
「楽しみだね。」
真瀬志奈
「そ、そうね。楽しみにしているわ。」
今のところはバーベキューより、夜坂さんのことを考えることが精一杯だ。
気になりだすとそれしかあまり考えられない……。
夜坂さんの秘密……一体なんだろう……?
今度のバーベキューで、そのことを知れればと思うばかりであった。
あれから数週間後…………バーベキューの日がやってきた。
鹿崎咲也
「よーし! みんな楽しみにしていたか? これから始めるからな!」
笛花奏
「火の取り扱いには気をつけてね!」
先生方の一言が終わりバーベキューが始まった。
月川タクト
「よーし! 久しぶりのバーベキューだ! 今日は楽しむぞ!」
古金ミカ
「おう! そうですな! 盛り上がっていきまっせ!」
星野シキア
「バーベキューの肉は学校側が用意してくれたのね。」
柊木アイ
「うん。柳原先生がたくさんのお肉を用意してくれたんだ。今日は来てないけれど今度お礼を言わなくちゃ。」
4人は楽しそうに会話をしている。
一方で夜坂さんとナナはあまり、楽しそうな様子は見られない。4人のところへ誘おうとすると、妙な話をしていた。
来川ナナ
「それで……大丈夫なの?」
夜坂ケント
「ああ……今のところ……だけどな。」
来川ナナ
「そう……でもやばい時はちゃんと言ってね。私だけではなんとかできないかもしれないけれど……。」
夜坂ケント
「……わかってる。」
私が話す隙がないまま2人が会話をしていると、見慣れない先生が2人を呼んだ。
??
「お〜。2人してどうしたの?せっかくのバーベキューなんだから楽しみなよ!」
夜坂ケント
「か……神谷先生……。」
思い出した。この人は神谷乙音先生だ。別クラスの担任だからあまり覚えていなかったんだ。
来川ナナ
「そ、そうですね。バーベキューを楽しみます!」
夜坂ケント
「わ……わかりました。」
神谷乙音
「よろしい! では楽しみましょう!」
鹿崎咲也
「乙音! 今日はEクラスとKクラスのバーベキューなんだから、ほっといてやれよ!」
神谷乙音
「いいじゃない! 私、今日は授業無いし!」
鹿崎咲也
「やれやれ……まぁ、教員の目は多い方が良いか……。乙音もみんなの様子見てやれよ。」
神谷乙音
「了解。」
こうして、ナナたちもバーベキューに合流をした。
柳原先生の調達した肉はかなりの絶品だ。一切れ口に入れるとすぐに口の中で肉がとろける。美味しいの一言しか出ない。
月川タクト
「美味しい! さすがは富豪の柳原先生だけあるね!」
古金ミカ
「でしょ! 相当なお肉を用意してくれたわね!」
星野シキア
「…………? ……アイはさっきからたくさん食べているわね?」
柊木アイ
「いや……まあ……美味しいからね。黙々と食べたいくらいだよ。」
柊木アイ
「……こんな料理は初めてだよ………………。」
真瀬莉緒
「……? なんか言いました?」
柊木アイ
「え? いやなんでもない。ごめんね。変な感じにしちゃって。」
真瀬莉緒
「いえ、大丈夫ですよ。」
バーベキューは大盛り上がりだ。
途中から合流した、ナナたちも……。
来川ナナ
「うん。美味しい。柳原先生様々ね!」
夜坂ケント
「ああ、美味い。」
2人も喜んでいる。けれど……あまり楽しそうとは思えない。
やっぱり夜坂さんのことで色々と考えているのかしら……?
そう思いながらも私たちはバーベキューを楽しんだ。
数時間後……
楽しいバーベキューも終わりに近づいてきた。
日も暮れ始めたため、みんなでバーベキューの道具を片付け始めた。
そしてひと通り片付け終わり、先生方から終わりの挨拶が行われた。
鹿崎咲也
「みんな! 今日は楽しかったな。企画してくれた生徒たちに感謝だな。俺も楽しかったぞ!」
笛花奏
「このあとは各自で自由にお菓子パーティなどで楽しんで明後日からの授業に取り組んでね!」
生徒一同
「はーい!」
そう言ってみんなはそれぞれの仲良いグループに分かれて二次会に行った。
そして私たちも月川さんたちの部屋に行って、お菓子パーティを始めることにした。




