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colorful 〜rainbow stories〜 encore  作者: 宮来 らいと
第1部 夜坂ケント編

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第1章 煉瓦色のお屋敷で(夜坂ケント編)後編

 六郭星ランド



 笛花先生に言われて私たちは六郭星ランドに来た。六郭星学園のすぐ近くにある遊園地で、六郭星学園の学生もよく出入りをしている。

 異性の人と2人きりで来るとは夢にも思わなかった。


 真瀬志奈

「ここが……六郭星ランドですね……。」


 夜坂ケント

「ああ、そうだな。初めて来るが、とりあえずそこら辺のアトラクションに行こう。」


 真瀬志奈

「あ、はい……。」


 そう言うと夜坂さんはジェットコースターのアトラクションに向かった。

 私は黙々と歩いていく夜坂さんのあとをついて行った。


 歩いていた夜坂さんの足はジェットコースターのアトラクションの前で止まる。


 夜坂ケント

「む……相当な行列だな……。」


 真瀬志奈

「そうですね……並んでいますね。」


 最後尾を見ると2時間待ちとなっていた。


 夜坂ケント

「仕方がない……他のアトラクションに行くか。」


 夜坂さんはそう言うと再び歩きだす。私はそれにただただついていくだけだった。


 コーヒーカップ、ゴーカート。メリーゴーランドに向かうがどれも同じく行列でいっぱいだった。


 夜坂ケント

「…………。」


 夜坂さんも行列が多いのか、少し苛立ちが見られる。


 何とか遊べる場所を探そうと辺りを見ると煉瓦色のお屋敷らしきアトラクションがあった。そこには行列が無く、すぐにでも入れるようなアトラクションだ。


 真瀬志奈

「夜坂さん。あそこのアトラクションなら空いてますよ。」


 夜坂ケント

「…………。あそこで良いのか?」


 夜坂さんが少し不安そうに声をかける。


 真瀬志奈

「空いているところを行きましょう。」


 夜坂ケント

「…………わかった。」


 私たちは空いていた煉瓦色のお屋敷に足を踏み入れる。


 屋敷の中は薄暗く奇怪な音楽も鳴っている。


 真瀬志奈

「もしかしてここって……。」


 そう、お化け屋敷だった。こういうのはかなりの苦手で泣き出してしまうほどだ。


 後ろを見ると途中退場不可とまで書いてある。

 ゴールまで行くしかない……


 そう思った時、最初の曲がり角で走るゾンビが出てくる。


 真瀬志奈

「きゃあああ!!」


 私はあまりの恐ろしさに悲鳴をあげてしまう。


 そして、廊下を歩くと薄気味悪い笑い声が聞こえると……天井から生首が落ちてきた。


 真瀬志奈

「きゃああああ!! 嫌……もう嫌……!」


 その後も次々と出てくる仕掛けに驚いていると、夜坂さんが声をかけてくれた。


 夜坂ケント

「怖いのか……?」


 真瀬志奈

「は……はい……もうこういうのは苦手で……。」


 そう言うと夜坂さんはため息混じりに手を出してきた。


 真瀬志奈

「え……?」


 夜坂ケント

「怖いんだろ?だったら早く行くぞ。手を握っていれば少しは怖くはなくなるだろう。」


 真瀬志奈

「あ……ありがとうございます。」


 夜坂さんは私の手を優しく握ってくれた。


 道中もゾンビが襲ってきたり、壁の額縁がガタンと落ちてきたりもしたが、夜坂さんの手の温もりと言葉で怖さは薄れてきた。


 夜坂ケント

「ほら、行くぞ……大丈夫だ……。」


 真瀬志奈

「あ、はい……。」


 そのまま手を握りながら歩くとようやく出口があり、外に出れた。


 外に出ると私たちは芝生のところで休憩を取ることにした。


 真瀬志奈

「はぁ……。何だか疲れました……。」


 夜坂ケント

「あれだけ悲鳴を上げていたからな。……ほら、ハンカチだ。これで顔を拭け。涙が出てる。」


 真瀬志奈

「ありがとうございます……。」


 私は夜坂さんからいただいたハンカチで顔を拭く。


 ハンカチの色はとても鮮やかな薄く茶色いハンカチだった。


 真瀬志奈

「薄茶色…………。」


 私がポツリとそう言うと夜坂さんは少しだけ嬉しそうに語り出した。


 夜坂ケント

「俺は薄い茶色が好きでな。幼いころから薄い茶色にものを統一しているんだ。あの来川のやつも薄い茶色が好きらしく、そこには深く共感できるんた。」


 嬉しそうに喋っている夜坂さんを見るとこっちまで嬉しくなってきた。その嬉しさからか、いつのまにか涙も止まり、すっかりと元気になっていた。


 夜坂ケント

「どうやらすっかりと落ち着いたようだな。さて……これからどうす…………。…………うっ!」


 真瀬志奈

「よ、夜坂さん!?」


 夜坂ケント

「ぐあああ…………。」


 夜坂さんは急に苦しみ出して身体を強く抑えている。


 真瀬志奈

「きゅ、救急車を……!」


 夜坂ケント

「だ……大丈夫だ。すぐに治まる……。」


 真瀬志奈

「大丈夫って、何がですか!すぐに治まるって言ったってそんな……。」


 夜坂ケント

「大丈夫だって言っている…………! ……ほら。もう大丈夫だ。」


 夜坂さんは一呼吸を置いて、ゆっくりと芝生の上に座った。


 真瀬志奈

「お、落ち着きましたか……?」


 夜坂ケント

「ああ……すまなかったな。」


 そう言うとしばらくの間、沈黙が流れ出した。気まずくなりそうだ。そう思い私は……


 真瀬志奈

「今日はお互いに疲れてますし、もう寮の方に戻りましょうか?」


 夜坂ケント

「……そうだな。帰ったら色々と作曲のことも考えなくてはな。」


 真瀬志奈

「あ、そういえばそうでしたね。」


 私たちは作曲のコンセプトを考えたあと、お互いの親睦を深めるためにここに来たのであった。


 夜坂ケント

「しかし……少し深い時間だ、やることは明日話そう。」


 真瀬志奈

「わかりました。ではそうしましょう。」


 私たちは立ち上がって寮の方へと戻った。



 六郭星学園寮



 お互いに明日のやることを話して、それぞれの部屋へと戻る。


 部屋に戻ると来川さんが既に帰ってきていた。


 来川ナナ

「あ、おかえりなさい。今日はどうでしたかケントとの作曲は……?」


 真瀬志奈

「はい……それなんですけど……。」


 私は今日会ったことを私が泣いたこと以外話した。


 来川ナナ

「へえ……ケントがね……。珍しいわね。普段なんて放っておくくらいなのに……。」


 真瀬志奈

「そうなんですか? ……それは意外ですね。」


 来川ナナ

「ええ、それよりもコンセプトは決まってはいるのですね。」


 真瀬志奈

「はい。コンセプトはこの声優さんに曲を作るとしたらです。」


 来川ナナ

「なるほど……あの、一応この声優さんならこんな曲っていうのは考えてはいるのですか?」


 真瀬志奈

「ええ、一応……。夜坂さんにはまだ話してはいませんが……。」


 来川ナナ

「それなら少し聞かせてもらえますか?私も真瀬さんの演奏を聞いてみたいです。」


 真瀬志奈

「私の……ですか?」


 来川ナナ

「はい。お願いできますか?」


 真瀬志奈

「わ……わかりました……。」



 私は言われるがままに部屋にあったピアノで曲を演奏する…………



 演奏が終わると来川さんは一瞬驚いていたが、すぐに表情を元に戻した。


 来川ナナ

「なるほど……たしかにその声優さんっぽいですね。」


 真瀬志奈

「あ、ありがとうございます。」


 来川ナナ

「あとは……ケントの身体次第……ね。」


 真瀬志奈

「え……?」


 来川ナナ

「いえ……なんでもないです。」


 真瀬志奈

「…………。」


 来川ナナ

「すみません……少しだけ離れます……ごめんなさい。」



 そう言って、来川さんは部屋から出ていった。

 来川さんは何かを隠しているのだろうか?



 夜坂さんの身体…………夜坂さんはあまり体調が良くないのかしら……?


 真瀬志奈

「………………。」



 私は何もわからないまま、明日の準備をして、寝床についた。

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