第4章 薄茶色のピアノ(来川ナナ編)後編
真瀬莉緒
「やりましたね!」
僕は下りた直後に来川さんにそう言った。
来川ナナ
「ええ、本当に良かったわ! ……それにこの曲が……!」
真瀬莉緒
「はい。声優さんに歌っていただけるんですよね。」
来川ナナ
「ええ、それが一番楽しみで仕方がないの。莉緒……本当にありがとう!」
真瀬莉緒
「ええ! こちらこそありがとうございます!」
僕たちは嬉しさのあまりグータッチをした。
そして……いよいよ……
六郭星学園 大講堂
楽しい時間が終わり、いよいよ卒業式。
SクラスからKクラスまで全クラスの生徒がずらりと並ぶ。
笛花奏
「ただいまより、六郭星学園卒業式を行います。」
卒業式が始まる。1年間ではあるが、このクラスに出会えてよかったと実感する。
1人1人名前が呼ばれていく。
笛花奏
「真瀬莉緒。」
真瀬莉緒
「はい。」
始めに男子が呼ばれる……そして、みんなの名前もそれぞれ呼ばれる。
笛花奏
「古金ミカ。」
古金ミカ
「は〜い。」
笛花奏
「星野シキア。」
星野シキア
「はい。」
笛花奏
「来川ナナ。」
来川ナナ
「はい。」
そうか……卒業するんだ……。そう思うと悲しみに溢れていく……
笛花奏
「以上で卒業式を終了いたします。」
そして、あっという間に卒業式が終わる。
本当にあっという間だった。卒業式も学校生活も。
ただ……唯一の救いは……。
古金ミカ
「うほー!みんな同じ大学に通うんだね!」
来川ナナ
「ええ、まさかテスト上位の50人全員が同じ大学に通うことになるなんて……。」
星野シキア
「現実は小説より奇なり……ね。」
そう、みんな一緒の大学。なのでほとんどは別れの挨拶などはなかった。おまけに姉さんたちも同じ大学だ。
真瀬莉緒
「そういえば、そろそろですね。」
来川ナナ
「そうね。声優さんの曲の披露……。」
古金ミカ
「うひょー!それは楽しみだね!」
星野シキア
「そうね……楽しみにしているわ。」
真瀬莉緒
「本当ですね!楽しみです!」
来川ナナ
「………………。」
古金ミカ
「……?ナナ様?どうしたの?」
来川ナナ
「え、いや、その……なんでもないよ。」
真瀬莉緒
「……………………?」
来川さんが何か悩んでいる……?何を考えているかはわからないが……。まずは僕たちが作った曲を聴くことを考えよう。
六郭星学園 Kクラス教室
教室にはクラスメイトの何人かと、姉さんたちのクラスメイトたちが僕たちの曲を聴こうと教室にいた。
真瀬莉緒
「いよいよ……ですね。」
来川ナナ
「ええ……緊張するわ。」
僕たちはどんな曲になったか少しだけ緊張している。
古金ミカ
「まあまあ、落ち着いてくださいな!」
星野シキア
「そうよ。歌ってくれるんだから……。」
真瀬志奈
「そうそう。だからさ、落ち着いて見よ。ね。」
真瀬莉緒
「そ、そうですよね。」
僕は落ち着きを取り戻した。周りの人たちは……。
月川タクト
「曲を声優さんに歌ってくれるとは……。羨ましい!」
柊木アイ
「タクトくんも声優さんに歌って欲しいって思っているんだよね。」
月川タクト
「ああ、だからこそ来川さんたちが羨ましいよ。」
柊木アイ
「それもそうだね。僕のとても楽しみだな。」
みんなが楽しみにしてくれている。僕たちもとても嬉しい。
その後、夜坂くんがやってきた。
夜坂ケント
「莉緒、来川。」
来川ナナ
「ケント! ……なんか久しぶりね。」
夜坂ケント
「ああ、それもそうだな……。」
来川ナナ
「………………。」
夜坂ケント
「お、そろそろ曲が始まりそうだな。」
テレビを見ると、声優さんが映っている。
真瀬莉緒
「始まる……!」
来川ナナ
「…………。」
テレビのMC
「それでは声優を代表して歌っていただきます!」
MCの人が言うと、声優さんは口を開く。
女性声優
「この曲を聴いてください。彼女の想い。そして、この歌を!」
声優さんがそう言うと聞き馴染みのある音楽が流れ始める……
曲が終わり……声優さんがいる会場は拍手に満ち溢れていた。
一方で僕たちの教室でも……
月川タクト
「すごい良い……!」
柊木アイ
「うん。とても心が躍るよ!」
会場でも良かったとの好評を得た。
夜坂くんも良い曲だったと、そう言ってくれた。
来川さんにも良かったと言おうと思っていたが……来川さんの姿がない。
星野シキア
「莉緒。ナナは屋上に行ったわ。話があるみたいだけど……行ってみたら。」
真瀬莉緒
「……。わかりました。」
僕は来川さんを追いかけて、屋上に向かう。
六郭星学園 屋上
来川ナナ
「…………。」
真瀬莉緒
「来川さん。あの曲、みなさんから好評でしたよ。」
来川ナナ
「うん……そうね……。」
真瀬莉緒
「ええ……そうですけど……。」
来川ナナ
「ねえ、そろそろ答えてよ。」
真瀬莉緒
「こ、答えてって……何をですか……?」
来川ナナ
「思い出せないの?言ったでしょ?」
真瀬莉緒
「あ……。」
思い出した。……けれど……せっかくだからもう一度でいいから聞いてみたい。あの頃と意思は変わっていないのかを。
真瀬莉緒
「来川さん……もう一度聞いてみたいです。あの頃と本当に気持ちが変わってないのかを。」
来川ナナ
「もちろん……。」
来川さんは僕のところに近づいてきて、改めて告白した。
来川ナナ
「私は真瀬莉緒が好きです。これから何があろうと、ずっとずっと、あなたのそばにいさせてください。よろしくお願いします。」
真瀬莉緒
「来川さん……。」
僕の答えはもう決まっている。
真瀬莉緒
「もちろんだよ。これからも、ずっと一緒にいたいです。」
来川ナナ
「じゃあ…………下の名前で呼んで?お願い。」
真瀬莉緒
「わかったよ。ナナ。」
来川ナナ
「ありがとう……莉緒。」
虹谷アヤ
「…………ハズレね……他を当たるしかないわね……。」
来川ナナ編 完




