第1章 きみどり色の草原で(来川ナナ編)中編
古金ミカ
「ねえねえ、君ってどこの学校出身なの?」
来川ナナ
「ミカ!いきなり話しかけないの!……まあ、気になるのはわかるけど……。」
星野シキア
「莉緒は……桃乃木音楽高等学校よね。」
真瀬莉緒
「えっ……どうしてそれを!?というより下の名前……?」
星野シキア
「楽器を弾けるとしたらそこしかないわよ。あと、呼び方は自由よ。」
真瀬莉緒
「そうですか…………。」
そういえばこの3人は親しい様子だけど、知り合いなのだろうか?
真瀬莉緒
「ちなみにみなさんはお知り合いなんですか?」
星野シキア
「ええ、合併説明会の時に知り合ったばかりだけどね。その後の説明会の後の謝恩会で意気投合して……こんな感じにね。」
古金ミカ
「あの時は楽しかったね! 今も楽しいけど。」
来川ナナ
「ええ、これからも楽しみね。真瀬さんもこれからよろしくお願いします!」
真瀬莉緒
「はい。よろしくお願いします。」
その後もたわいもない話をして、僕たちは帰路に着いた。
寮制度は明日からであり、2人1組の部屋になっている。
翌日……教室に行くと、来川さんが先に座っていた。
来川ナナ
「あ、おはようございます。真瀬さん。」
真瀬莉緒
「おはようございます。」
来川ナナ
「今日もいい天気ですね。」
真瀬莉緒
「そうですね。」
来川ナナ
「…………。」
真瀬莉緒
「……? 来川さん……?」
来川ナナ
「ああ、すみません。あの……課題の方……は……どうしますか?」
真瀬莉緒
「あ……そうですね……。」
来川ナナ
「もしあれでしたら……真瀬さんのやりたいことを課題にしましょう!」
真瀬莉緒
「え、僕がやりたいことですか?」
来川ナナ
「はい。真瀬さんがよければですけど……。」
真瀬莉緒
「そうですね……。音楽室にある楽器を使いましょうか?」
来川ナナ
「良いですね! それでは、放課後に音楽室に行きましょう!」
真瀬莉緒
「わかりました。では放課後で。」
そして……放課後……
六郭星学園 音楽室
真瀬莉緒
「ここが音楽室か……。」
来川ナナ
「広いですね……!」
真瀬莉緒
「そうですね……。」
来川ナナ
「では、真瀬さん。音楽室で何をしますか?」
真瀬莉緒
「そうですね……。」
何をするか考えているとき、1人の男子生徒が、音楽室の扉を開けた。
??
「ん……? 来川か……?」
来川ナナ
「ケ……ケント……?」
2人は驚いた様子だった。ケントという人は来川さんと知り合いなのか?
夜坂ケント
「すまない。俺の名前は夜坂ケント。Eクラスだ。……って言うか……真瀬の弟か?」
Eクラス?……ああ、それなら姉さんのクラスだ。夜坂さんが知っているのもわかる。
真瀬莉緒
「はい。真瀬莉緒です。よろしくお願いします。」
夜坂ケント
「ああ……。よろしく。」
来川ナナ
「ケント……。」
夜坂ケント
「来川……お前、もしかして曲を……?」
来川ナナ
「ち、違うわよ。真瀬さんがやりたいことを課題にしようとしているだけ!」
夜坂ケント
「そうか……でも、真瀬の弟なら姉と同じで楽器を何でも弾けるんじゃないのか?」
来川ナナ
「そ、それは……。」
来川さんは僕を見る。
真瀬莉緒
「……はい。僕も姉さんと同様、色々な楽器を弾けることができます。」
夜坂ケント
「本当か! じゃあ、来川の弾けるピアノはどうなんだ?」
真瀬莉緒
「弾けます。」
夜坂ケント
「そうか……なら、弾いてくれないか?」
来川ナナ
「ちょっと……ケント!」
真瀬莉緒
「わかりました……。弾かせていただきます。」
僕は言われるがままにピアノを弾く……
ピアノが弾き終えた。……夜坂さんの反応を見てみると、なるほどと思っているような表情をしていた。
夜坂ケント
「どうだ、来川。真瀬の弟と曲を作ったらどうだ?」
来川ナナ
「私は……真瀬さんが言うのであれば……」
夜坂ケント
「……だそうだ。どうする……?」
夜坂さんは僕に問いかける。
曲を作るのは難しいけど……来川さんがやりたいのならやってもいいかな。
真瀬莉緒
「わかりました。やりましょう。」
来川ナナ
「え……いいんですか?」
夜坂ケント
「……良かったな。来川。俺は戻るから曲作り頑張れよ。」
そう言うと夜坂さんは去っていった。
来川ナナ
「…………。」
曲作りを始めようと思ったものの、来川さんはどこか拍子抜けしているような気がする。
作曲は明日にして、今日は寮の方に行くことにした。
六郭星学園 寮
真瀬莉緒
「ここが僕の部屋か……。」
部屋は2人1組。つまりもう1人この部屋で寝泊まりする人がいる。果たしてどんな人なのか……
真瀬莉緒
「失礼します……。」
部屋に入るとそこには……
夜坂ケント
「ん?真瀬の弟か?」
真瀬莉緒
「夜坂さん……!?」
部屋のパートナーは夜坂さんだった。
夜坂ケント
「真瀬……莉緒。莉緒でいいか?」
真瀬莉緒
「はい。莉緒でお願いします。」
僕がそう言うと、夜坂さんは考え込み、こう呟いた。
夜坂ケント
「こうも簡単に言ってくれれば……」
真瀬莉緒
「え?」
夜坂ケント
「ん?あぁ……すまん。独り言だ。気にしないでくれ。」
真瀬莉緒
「はぁ……。」
夜坂ケント
「……こうして同じ部屋になったんだ。ゆっくりしていてくれ。俺は少し外へ行くから、出かけるなら部屋の戸締まりは頼むぞ。」
そう言うと夜坂さんは外出しにいった。
それにしても疲れた……こんな時はあれでも見よう。
最近ハマっているVtuberの動画だ。名前は綺羅星メルマ(きらぼし めるま)。ここ最近で登録者数が60万人を超えた、今1番勢いのある女性Vtuberだ。
綺羅星メルマ
「星々のみんな〜! みんなのアース。綺羅星メルマで〜す!」
いつものかけ声にいつもの挨拶。最近の心の拠り所だ。
綺羅星メルマ……癒されるな……。
メルマの動画をひと通り見終わると僕はすぐに寝床についた……。
六郭星学園 音楽室
翌日の放課後……僕たちは音楽室にいた。
曲のコンセプトを考えるためだ。ただ……
来川ナナ
「あの……コンセプトは……お任せします。」
どうやら僕の一存でことが変わるかもしれない。
とりあえず僕は考えてこう思った。
真瀬莉緒
「声優さんに作曲をする程というのはどうですか?例えば……この声優さんに作る程で作曲しませんか?」
僕がそう言うと、来川さんは驚いていた。
来川ナナ
「…………!」
真瀬莉緒
「……? 来川さん……?」
来川ナナ
「いえ、何でもありません。そうですね!そうしましょう!」
真瀬莉緒
「あ……はい……。」
来川さんは即決でこの声優さんに曲を作る程で、曲を作ることを決めた。
せっかく曲を作るんだ。場所を変えてみてら色々と思い浮かぶかもしれない。
真瀬莉緒
「来川さん。もし良ければ場所を変えて曲を作ってみませんか? 場所を変えることによって色々と発想が思い浮かぶかもしれませんし。」
僕はそう言うと……
来川ナナ
「いいですね! そうしましょう!」
真瀬莉緒
「では、さっそく外で作曲してみましょう!」
来川ナナ
「はい!」
僕たちは音楽室から出て、学園の外へ行くことにした。
六郭星草原
六郭星草原へやってきた。黄緑色の草原がゆらゆら揺れる。風も気持ちよく、景色もきれいだ。
来川ナナ
「……きれい……ですね。」
真瀬莉緒
「ええ、とても……」
……………………………………あれ?
真瀬莉緒
「…………。」
来川ナナ
「真瀬さん?」
真瀬莉緒
「ああ……すみません。大丈夫です。お気になさらないでください。」
来川ナナ
「はぁ……。……それじゃあ、早速やりましょうか!」
真瀬莉緒
「はい。そうしましょう!」
僕たちは早速、曲のことについて考えていった。……けれど、曲を作ると言うことはかなり難しい。そのため、意見はなかなか出ない。
真瀬莉緒
「…………。」
来川ナナ
「…………。」
なかなか思い浮かばない……。そこで……。
来川ナナ
「あの……よければ……お弁当作ってきたので、食べませんか?」
真瀬莉緒
「お弁当ですか。いいですね! ありがとうございます!」
来川さんのお弁当は茶色系が多かった。ハンバーグに焼きおにぎりもついていた。
来川ナナ
「私、こう見えても茶色が好きなんです。特に薄い茶色が好きで、色々なものを薄茶色で統一しているんです。」
真瀬莉緒
「へえ……薄茶色が好きなんですね。」
珍しいとは絶対に言わない。なぜなら僕は色が好きだからだ。赤も青ももちろんマイナーな色でも何でも好きだ。その人その人の好きな色も否定をする気は絶対にない。
真瀬莉緒
「いただきます。」
僕は早速、お弁当に手をつけることにした。
そして、ハンバーグをひと口食べる。
来川ナナ
「……どうですか?」
真瀬莉緒
「美味しいです!」
とても美味しかった。肉厚なハンバーグに塩加減がとても良かった。
来川ナナ
「……良かったです。」
来川さんはホッと肩をなでおろしていた。
真瀬莉緒
「……あ。」
ふと曲のフレーズや、曲調が思い浮かんだ。しかし、来川さんはどう思うのだろうか。
真瀬莉緒
「来川さん、曲の曲調とかフレーズですけど……。こんな感じはどうでしょうか?」
僕は来川さんに聞く……
来川ナナ
「…………いいですね! それでいきましょう!」
真瀬莉緒
「良かった……。ではこれで……。」
僕たちは早速、曲調やフレーズをこしらえていく。僕が意見を言うと来川さんは即決して良いと決めてくれる。
真瀬莉緒
「じゃあ、今日はこんな感じですね。」
来川ナナ
「はい! ありがとうございました! 明日もよろしくお願いします。」
真瀬莉緒
「ええ、こちらこそよろしくお願いします。」
そう言うと、来川さんは先に学園に帰って行った。
僕は少しだけこの草原を佇んでいた。
真瀬莉緒
「なんでだろう……どこかで見たような気がする……それも悪い意味で……。」
僕はそう思うと気味が悪くなり、そそくさとその場を離れた。




