第2章 黒い魔の手(月川タクト編)中編
六郭星学園 音楽室
あれから数日。私と月川くんは作曲づくりをしている。月川くんはかなり真剣に取り組んでいる。
月川タクト
「とりあえず休憩しようか。」
真瀬志奈
「はい……」
月川くんと練習して気づいたことがある。休憩はあるものを出して書いていることがある。
真瀬志奈
「月川くんっていつもそのノート持っていますね。」
月川タクト
「ああ、これね。」
月川くんが持っていたのは若竹色のノート。このノートに作曲のネタを書いているのだろうか。
月川タクト
「このノートに作曲で思いついたこと書いているんだ。他にも色々書いてはいるけど……」
真瀬志奈
「そういえば……あの時のくじ引きでも若竹色のボールを引いてましたね。」
月川タクト
「そうだね。若竹色は赤とか青とかに比べて決してメジャーな色ではないけど俺が1番好きな色でもあるんだ。」
真瀬志奈
「そうなんですね。」
月川タクト
「ああ、だからくじで引いた色が自分の好きな色だった時は本当に嬉しかった。しかも、相手は楽器が得意なことを知った時は……」
と言いかけた時、鹿崎先生が入ってきた。
鹿崎咲也
「おう。曲作りは順調か?」
月川タクト
「…………先生! はい。とても順調に進んでると思います!」
鹿崎咲也
「そうか! それは良かった。実は今日は伝えなければならないことがあってな。」
真瀬志奈
「伝えたいこと?」
鹿崎咲也
「今日はな、文化祭の出し物の会議が教員の間で行われてな、みんなの第一希望…………無事に通ったんだ!」
月川タクト
「おお! ということは……!」
鹿崎咲也
「そう! 出し物は演劇に決まったんだ!」
月川タクト
「やった! 演劇だ! 俺、ずっとやりたかったんだ!」
真瀬志奈
「やりましたね! 月川くん!」
月川タクト
「うん、志奈さん頑張ろう!」
真瀬志奈
「はい! 頑張りましょう!」
鹿崎咲也
「ところで…………みんながやりたかった作品のヒーローとヒロインの役だけど…………2人がやってくれないか?」
月川タクト
「え!? 僕たちがですか?」
鹿崎咲也
「ああ、柊木と夜坂の強い推薦もあってな。無理にとは言わないが、もしやるならお願いできるだろうか?」
月川くんとヒーローとヒロイン……なんだろう……少しやってみたい気持ちがある。でもどうしようか……
いや、気になった以上はやろうと思おう。私はすぐさまに宣言しようと思った。
真瀬志奈
「あの、やらせてください!月川くんと!」
月川タクト
「ええ!? いいの!?」
真瀬志奈
「はい。私……月川くんとならできる可能性があると思いました。なんでしょう……他の皆さんよりも信頼できるような気がしています。月川くんはパートナーでもありますから。」
月川タクト
「志奈さん……俺の事を…………ありがとう!そう言ってくれて! 俺も…………志奈さんとならやれる気がします。鹿崎先生、僕らにやらせてください!」
鹿崎咲也
「そうか…………わかった! じゃあ2人にお願いしよう! 2人とも頼むな! じゃあ、先生は戻るから、よろしくな!」
そう言って鹿崎先生は音楽室から出ていった。
月川タクト
「志奈さん……よろしくね。」
真瀬志奈
「はい!」
そうして私たちは作曲の練習に戻った。
六郭星学園 廊下
今日も作曲をしに音楽室に行くが、放課後の掃除が長引き、練習に遅れそう。急いで行かないと。
真瀬志奈
「はぁ……はぁ……音楽室に着いた……」
音楽室のドアに手をかけた時…………
??
「行かせないわよ。」
真瀬志奈
「三蜂さん……!?」
三蜂さんに腕を強く掴まれた。この人はまだ私たちを疑っているのだろうか……
三蜂レンカ
「あなた、付き合っているんでしょ。あいつと。」
真瀬志奈
「つ、付き合っている……!?」
三蜂レンカ
「とぼけんじゃないわよ! 恋愛なんて不要! これ以上あなたたちが付き合うのなら私にも考えがあるわ!」
真瀬志奈
「なっ…………! 私たちは付き合ってなんか……!」
その時、音楽室のドアが開く。そこには月川くんがいた。険しい表情で。
月川タクト
「その手を離せ……!」
三蜂レンカ
「ひっ……!?」
月川くんの威圧感に恐縮した三蜂さんは逃げるようにその場を去った。
月川タクト
「志奈さん大丈夫? あいつに何かされなかった?」
真瀬志奈
「はい……なんとか。大丈夫です。ありがとうございます。」
月川タクト
「そっか…………良かった……。」
真瀬志奈
「あの…………さっきの話聞いてましたか?」
月川タクト
「うん……まぁ…………気にしなくて良いよ。付き合ってはいないのは事実だからね!」
真瀬志奈
「そ、そうですよね……。はい。」
満面の笑みで月川くんに言われ、ホッとした反面、少しモヤモヤを感じる。それは月川くんの方にもあった。そんな表情がどことなく感じた。
月川タクト
「……。志奈さん、練習しよっか。」
私は黙って頷き、音楽室に入ったがその日はあまり上手くいかなかった……
真瀬志奈
「……。」
月川タクト
「志奈さん……。今日はもう帰ろうか。」
真瀬志奈
「そうですね……。」
六郭星学園 校門前
真瀬志奈
「あ……雨……。」
雨が降っていた……傘……忘れた……。
月川タクト
「志奈さん、傘忘れたの?」
真瀬志奈
「はい……。」
月川タクト
「じゃあこれ。貸してあげる。」
月川くんは私に若竹色の傘を渡してきた。
真瀬志奈
「えっ……月川くんは……?」
月川タクト
「走ればそこまで濡れないよ。」
真瀬志奈
「それはちょっと……。申し訳ないです。」
月川タクト
「いいって! 大丈夫大丈夫!」
真瀬志奈
「月川くん……。」
月川くんの傘を借りるのは申し訳ない……
真瀬志奈
「月川くん一緒に入りませんか?」
月川タクト
「一緒に……?」
月川くんは目を丸くしてそう言った。
真瀬志奈
「ダメですか?」
月川タクト
「いや……ダメじゃないよ! じゃあ行こうか。」
真瀬志奈
「はい。行きましょう。」
雨が降る中、私たちは相合い傘をしながら歩いた。
月川くんは鼻歌を歌いながら道中を楽しみながら歩いていく。
私は月川くんの鼻歌を、聞く……とても綺麗な鼻歌……私はいつの間にか聞き惚れていた。私まで楽しくなった。
月川くんの曲には人を楽しませることが、できるとそう思った。私も作曲を頑張らないといけないな。そのためにはひたすら精進しないと。
月川タクト
「志奈さん。これからまた頑張ろうね。」
真瀬志奈
「……はい。」
私たちは雨だけど少し楽しい道中を過ごした……。
六郭星学園 図書室
三蜂レンカ
「あぁ、もう! どうしたらあの2人別れないのかしら!無駄なものなのに……!」
??
「あの…………別に良いのでは……? 校則的には問題なんて無いですし……。」
三蜂レンカ
「アイラは黙ってて! これは私にとっては問題なの!」
柚木アイラ
「は……はい……すみません。」
三蜂レンカ
「……はぁ、こんな時に新聞記事の整理だなんて……私はあの2人をどう始末するか決めないといけないのに…」
三蜂レンカ
「……ん? この記事……?」
――月川一家交通事故事件まとめ――
三蜂レンカ
「……ふふ。」




