第1章 みずいろの足跡(古金ミカ編)中編
古金ミカ
「ねえねえ、君ってどこの学校出身なの?」
来川ナナ
「ミカ。いきなり話しかけないの! ……まあ、気になるのはわかるけど……。」
星野シキア
「莉緒は……桃乃木音楽高等学校よね。」
真瀬莉緒
「えっ……どうしてそれを!? というより下の名前……?」
星野シキア
「楽器を弾けるとしたらそこしかないわよ。あと、呼び方は自由よ。」
そういえばこの3人は親しい様子だけど、知り合いなのだろうか?
真瀬莉緒
「ちなみにみなさんはお知り合いなんですか?」
星野シキア
「ええ、合併説明会の時に知り合ったばかりだけどね。その後の説明会の後の謝恩会で意気投合して……こんな感じにね。」
古金ミカ
「あの時は楽しかったね! 今も楽しいけど。」
来川ナナ
「ええ、これからも楽しみね。真瀬さんもこれからよろしくお願いします!」
真瀬莉緒
「はい。よろしくお願いします。」
その後もたわいもない話をして、僕たちは帰路に着いた。
寮制度は明日からであり、2人1組の部屋になっている。
翌日……教室には古金さんがいた。
古金ミカ
「やあやあ……待っていたよ……!」
ああ……今日もワールド全開ってところか……
古金ミカ
「早速だけどさー! 課題どうするの〜?」
真瀬莉緒
「課題……そうですね……。」
古金ミカ
「なかったら私のやりたいことでも良い?」
真瀬莉緒
「あ、はい。それで良いですよ。内容によりますけど……」
古金ミカ
「おお、ではこれはどうかな?」
古金さんは1枚の紙を見せた時、もう1枚の紙が床に落ちた。
真瀬莉緒
「あ、落としましたよ。」
僕が拾い上げるとその紙にはこう書かれていた……
この声優の曲を作りなさい。
父より
古金さんのお父さんの手紙……? それにしても……この声優さんに曲を作るか……。
言ってもこの声優さんはかなりハードル高いな……。
古金ミカ
「…………!」
古金さんはその紙を奪い取るように取った。
真瀬莉緒
「古金さん……?」
古金ミカ
「今のは忘れて。わかった?」
今までと違い圧がすごい。それに拒否をすることはできない。
真瀬莉緒
「わかりました……。」
古金ミカ
「よろしい!! ではでは早速音楽室に行って、楽器を作ってみましょう!」
真瀬莉緒
「は……はい……。」
先ほどの圧から元に戻った。なんだったのだろう……
ただ、拒否を出来なかったので、僕は音楽室に行くことになった……。
六郭星学園 音楽室
真瀬莉緒
「ここが音楽室か……。」
音楽室はかなりの広さで、ありとあらゆる楽器が置かれている。さすがは母校が合併しただけある。
古金ミカ
「お、あったあった。これを再現するわよー。」
古金さんが手に取ったのはメトロノームだった。
真瀬莉緒
「メトロノームか……。」
古金ミカ
「そうだよー。せっかくだからこれを……」
??
「ミカ! また人を困らせているの!?」
真瀬莉緒
「えっ!?」
音楽室を開けて入ってきたのはふんわりとしたヘアスタイルの男子生徒だった。
その男子生徒は僕を見ると、お辞儀をしていた。
柊木アイ
「驚かせてすみません。僕はEクラスの柊木アイと言います。よろしくお願いします。」
真瀬莉緒
「あ、よろしくお願いします。」
とても丁寧で優しそうな人だ。こんな人が古金さんの知り合いなのだろうか?
柊木アイ
「ミカ! また人様に迷惑かけているんでしょ!」
古金ミカ
「ふん! かけてませんよーだ! ホレホレ……」
柊木アイ
「ミカ!」
柊木さんはとにかくお冠の様子だ。今はあまり関わらない方が良いかもしれない。
柊木アイ
「それよりもあの件は引き受けないの? 声優さんの曲作り……」
古金ミカ
「それ今関係ないわよね。やめて。……それにその件は1人でやるから。」
柊木アイ
「やるって……バイオリンが弾けるだけで作曲ができるわけないよ!」
古金ミカ
「本当ならやりたくないわよ! でも……私は……」
柊木アイ
「……ねえ……思ったんだけど……彼って真瀬さんのご姉弟?」
古金ミカ
「真瀬さんのご姉弟? それは聞いてないわ。」
柊木アイ
「すみません。あなたは真瀬志奈さんのご姉弟でしょうか?」
姉さんのことを知ってる……?
……ああ、よく考えれば姉さんはEクラスだったな。柊木さんもEクラスだから姉さんのことを知っているんだろう。
真瀬莉緒
「はい。志奈の弟の莉緒といいます。よろしくお願いします。」
柊木アイ
「こちらこそ。ねえ、莉緒くんは志奈さんと同じで楽器は全部弾ける?」
真瀬莉緒
「ええと……まあ……一応……。」
柊木アイ
「それなら……このバイオリンを弾いてみて!」
古金ミカ
「ちょっと……! 勝手に話を進めないで……!」
柊木アイ
「静かに! ……お願いします。」
真瀬莉緒
「わかりました……。」
僕は言われるがまま、バイオリンを弾いてみる……
バイオリンを弾き終えた。2人の反応は……
古金ミカ
「すごい……こんな簡単に弾けるなんて……!」
柊木アイ
「ああ、これなら文句なしでしょ! だからさ、その……作曲……彼と一緒にやってみたら?」
作曲……先ほどの紙に書いてあったやつだろう。
古金ミカ
「いや……でもそれは……。」
柊木アイ
「あの声優さんははっきり言ってハードルやレベルが違いすぎる。万能な人がいないと難しいよ。」
古金ミカ
「わかってるわよ……なら……莉緒っちが良ければ。」
莉……莉緒っち!? ……いや、今はそんなことは関係ない。僕は……作曲を課題にしようとしていたんだ。断る理由もない……
真瀬莉緒
「僕で良ければ、お手伝いさせていただきます。」
柊木アイ
「本当に!? ありがとう! 良かったねミカ!」
古金ミカ
「うん……てな訳で……よろしくねー! よろよろー!」
あ……色々あったけどよく考えたらこんな性格だった。けど今さら断ることもなぁ……仕方ない。やるからには本格的にやらないと。
真瀬莉緒
「はい。よろしくお願いします。」
僕がそう言うと今日は解散しようと言うことになり、それぞれの寮の部屋に戻ることにした。
六郭星学園 寮
寮の中はかなりの広さだ。700人前後の生徒が全員同じ屋根の下で寝るのだから当たり前なのかもしれない。
柊木アイ
「うわ……相当な広さだね……。」
柊木さんも寮の広さに驚きを隠せない。
なお、寮のルールは2人1部屋で、どんな人と同じ部屋なのかはまだわからない。
柊木アイ
「あ、莉緒くんもこっち? 僕もこっちなんだ。せっかくだから一緒に見ようよ。」
真瀬莉緒
「そうですね。どんな人と一緒なのか楽しみですね。」
僕たちはそれぞれの部屋に向かうため寮の中を歩いた。
真瀬莉緒
「あっ、ここだ……。」
僕が部屋を見つけると……
柊木アイ
「えっ。莉緒くんもここの部屋なの? 僕と同じ部屋?」
真瀬莉緒
「ということは柊木さんが部屋のパートナーですか?」
柊木アイ
「そうなるね……。これからよろしく!」
真瀬莉緒
「あ……はい! よろしくお願いします!」
僕たちはドアの前で改めて挨拶をして、部屋の中に入った。
部屋の中に入ると2人部屋の割にはかなりの広さだった。
真瀬莉緒
「おお……かなり広いですね。」
柊木アイ
「そうだね。……僕の部屋よりも広いや。」
真瀬莉緒
「……え?柊木さん何か言いましたか?」
柊木アイ
「いや、なんでもないよ。ごめんね。」
真瀬莉緒
「あ、はい……」
気まずい雰囲気になってしまった。何か話をしないと……
そういえば古金さんと柊木さんの関係ってなんなんだろう?聞いてみようかな?
真瀬莉緒
「あの……古金さんとはお知り合いなんですか?」
柊木アイ
「うん。そうだよ。知ってるかな? 六郭七富豪って。」
六郭七富豪……聞いたことある。この近くの大金持ちが7組もいるんだっけ……でもそれと何か関係が……?
柊木アイ
「僕はその七富豪の1つ柊木家の1人息子で、ミカは古金グループって言う富豪の1人娘なんだ。その縁で何度か会ってはあんなことをしてるってわけ。」
真瀬莉緒
「おお……。」
なんと……あの柊木家と古金グループの御曹司と御令嬢とは……この2人と関わるとは驚きを隠せず、おお……としか言えなかった。
柊木アイ
「そんなに緊張しなくていいよ! 僕とかミカもあんな感じだから。それに僕のこともアイって呼んでもいいよ?」
うぅ……いきなり名前で呼ぶのは……でもこう言われたら断れないなぁ……。
真瀬莉緒
「わかったよ……アイくん。」
柊木アイ
「ありがとう!それじゃあ僕はちょっと出かけるからよろしくね!」
そう言ってアイくんは部屋から出ていった。
それにしても、今日は一段と疲れた……こんな時はあれでも見よう。
最近ハマっているVtuberの動画だ。名前は綺羅星メルマ。ここ最近で登録者数が60万人を超えた、今1番勢いのある女性Vtuberだ。
綺羅星メルマ
「星々のみんな〜! みんなのアース。綺羅星メルマで〜す!」
いつものかけ声にいつもの挨拶。最近の心の拠り所だ。
綺羅星メルマ……癒されるな……。
メルマの動画をひと通り見終わると僕はすぐに寝床についた……。




