第２章 紫色の空模様（美園エリカ編）中編
六郭星学園 音楽室
美園エリカ
「おお……なかなかやるわね……！」
僕は小鳥遊くんに聞いてもらったフルートを使った曲を美園さんにも聞いてもらった。
美園エリカ
「この曲なら問題なさそうね。」
真瀬莉緒
「この曲なんですが……。」
美園エリカ
「…………？」
僕は小鳥遊くんから聞いたオーディションの参加の件を美園さんに伝えた。
美園エリカ
「なるほど……カルマからってのは気に食わないけど……。やってみる価値はありそうね。」
真瀬莉緒
「それじゃあ……！」
美園エリカ
「ええ、やってみましょう。」
真瀬莉緒
「ありがとうございます！」
美園エリカ
「良いのよ。まずは練習ね。」
真瀬莉緒
「そうですね。少し演奏してみましょう！」
美園エリカ
「そうね。じゃあまずはフルートを吹こうかしら。」
そう言うと美園さんがフルートを吹く。美園さんが吹くフルートの音色はとても鮮やかで聞いている方が気持ちが良くなる。
真瀬莉緒
「すごい……。」
僕は思わず口にする。本当にすごいからだ。ここまで素人でフルートを吹ける人はなかなかいない。
美園エリカ
「ふふふ……ありがとう。」
美園さんが演奏を終えると、誰かが音楽室に入ってきた。
真瀬莉緒
「ど、どちら様ですか？」
柿本瑛久
「あ、ごめん……急に入ってきて……。フルートの音色が気になって……。僕は柿本瑛久。一応先生だから……よろしくね……。」
柿本先生はそう言うと僕に話しかけてきた。
柿本瑛久
「フルートを吹いたのはきみかい？」
真瀬莉緒
「いえ、フルートを吹いたのは美園さんです。」
柿本瑛久
「そうか……きみがフルートを……。」
美園エリカ
「ええ、私のこの大いなる左腕の力……」
柿本瑛久
「え…………？」
柿本先生が動揺しているため、少しだけ説明をした。
真瀬莉緒
「彼女……少しだけ中二病が混ざっているんです。」
柿本瑛久
「そう……。まあ人には個性があるからね。」
真瀬莉緒
「そうですね。」
柿本瑛久
「まあ……とりあえず……頑張ってね。じゃあ。」
そう言うと柿本先生はどこかへと行ってしまった。
美園エリカ
「さ、練習を開始しましょう。」
真瀬莉緒
「そうですね。練習を始めましょう。」
僕たちは今日一日、練習をできる限り行った。
美園さんのフルートは紛れもなく玄人並みだ。
真瀬莉緒
「さすがですね。」
僕は思わずそう言った。
美園エリカ
「ありがとう。」
美園さんは笑みを浮かべながらそう言った。
そうして夜が更けていき……今日は切り上げることにした。
真瀬莉緒
「今日はありがとうございます。」
美園エリカ
「こちらこそ。久しぶりに私の左腕の力が使えたわ。」
真瀬莉緒
「相変わらずですね……。」
美園エリカ
「良いじゃない。憧れってものがあるんだから。」
真瀬莉緒
「憧れ……？ 憧れって一体？」
美園エリカ
「それは……言えない。」
真瀬莉緒
「そうですか……まあ、気が向いたら話してくださいね。」
美園エリカ
「ええ……。」
美園さんは何も言わないまま、その日は解散した。
六郭星学園寮 莉緒・カルマの部屋
真瀬莉緒
「ただいま……。」
小鳥遊カルマ
「おかえり。今日はどうだった？」
真瀬莉緒
「うん。それなんだけど……。」
僕は美園さんのフルートの実力や作曲の順調さについて話した。
小鳥遊カルマ
「そうか、美園のやつはフルートは得意楽器だって散々言っていたからな。」
真瀬莉緒
「うん。あのフルートの実力はただものではないな……って。」
小鳥遊カルマ
「そうか……作曲の方も順調そうだし、しばらくは安心できるな。」
小鳥遊くんはホッとしていたが、僕は小鳥遊くんにあることを聞いた。
真瀬莉緒
「小鳥遊くん。美園さんは何に憧れているんだい？」
小鳥遊カルマ
「…………それを言うべきなのか？」
真瀬莉緒
「少し知りたいです。何故、彼女があそこまで憧れを持っているのか……。気になります。」
小鳥遊カルマ
「…………。研究……。と言えばわかるかな？」
真瀬莉緒
「研究……？どういうことですか？」
小鳥遊カルマ
「…………やっぱり伝えにくいな……。とある研究に美園は憧れを持っていてな……。」
真瀬莉緒
「その研究は危険なんですか？」
小鳥遊カルマ
「ああ、だから俺はやめたんだ。」
真瀬莉緒
「やめたって……？ それってもしかして……？」
小鳥遊カルマ
「ああ、俺も美園と同じ、中二病だったんだ。」
真瀬莉緒
「そうだったんですか！？」
小鳥遊カルマ
「この先端の髪の色も当時の名残でな……俺はあの時に見たものが忘れられなくてな……。それで中二病を辞めようとしたんだ。」
真瀬莉緒
「あの時に見たもの……研究の何かですか？」
小鳥遊カルマ
「まあそんなところだ。美園も何かきっかけがあれば良いんだけど……。」
真瀬莉緒
「……………………。」
小鳥遊カルマ
「まあ俺から話せるのはこんな感じだ。美園のことを頼んだぞ。」
真瀬莉緒
「…………はい。」
そう言われ、僕たちは各々課題制作に取り掛かった。
数時間後……
真瀬莉緒
「まあこんな感じかな？」
小鳥遊カルマ
「完成したのか。見せてみろ。」
真瀬莉緒
「はい。」
僕は小鳥遊くんにある程度完成した曲の譜面をみてもらった。
小鳥遊カルマ
「なるほど……フルートを上手く使えているな。」
真瀬莉緒
「ありがとう。」
小鳥遊カルマ
「これなら美園のやつも喜ぶだろう。」
真瀬莉緒
「そうなると嬉しいけれど……。」
小鳥遊カルマ
「まあ、あいつ次第だな。」
真瀬莉緒
「そうだね。美園さんがどう反応してくれるのか……。」
そう話していると、廊下が騒がしくなっていた。
真瀬莉緒
「何か騒がしいですね。」
小鳥遊カルマ
「何だ一体？」
外に出ると、クラスメイトたちが何かに追われているのか逃げ回っていた。
小鳥遊カルマ
「何だ？何かあったのか？」
？？
「うわあ……！ 逃げてください！」
真瀬莉緒
「え？君は確か……？」
話してきたのはＡクラスの初杉ジロウさんだった。普通な性格と言われている彼が話をかけるほど大事なのだろうか？
真瀬莉緒
「一体何があったんですか？」
初杉ジロウ
「学園内に大型の獣が入ってきて、屋上に避難してくださいと先生方から連絡が入ってきまして……。」
小鳥遊カルマ
「何だって？ それはもしかして……」
？？
「ガルルルルルル……！」
真瀬莉緒
「あれは…………！？」
声が聞こえてくる方を見ると、謎の獣の姿が見えた。
真瀬莉緒
「あれは……！？ 一体……！？」
小鳥遊カルマ
「やっぱり……あれが……！？」
真瀬莉緒
「えっ……？ 小鳥遊くん……何か知っているの……？」
初杉ジロウ
「話は後にしてください！ 今は屋上に逃げますよ！」
僕たちは初杉さんの言われるがままに屋上まで走り出した。
