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作戦会議 1


とある休日の昼下がり。

モーリス侯爵邸には、アナスタシア、ヴィクトリア、マジョルテ、クロエラが集まっていた。

何度か個人では話し合いを持っていたが、全員が揃うのは久しぶり。


「ごきげんよう、みなさま。本日はわたくしアナスタシアが議長を務めますわ」


防音設備を整えた広間を貸し切り、それぞれの侍女や護衛は部屋の外に待機している。

緊張の面持ちなのは、転生者という秘密を暴露したヴィクトリア。

これほど大仰な形になるとは思わなかったのだろう。


残念だが、アナスタシアに打ち明けた時点で主導権は彼女が握っている。諦めるしかない。


「まず、確認事項から。マジョルテ」


「はい。みなさまご存知の通り、先日、隣国より王子殿下が留学されました。また、特待生が三人編入してきたのも、みなさまご存知かと思います。ヴィクトリア様のおっしゃっていた特徴のある生徒も確認できております」


「確かにピンクでしたわね……」


「すごくピンクでした」


「ええ……とても」


ピンク色の髪と目の愛らしい女性、というイメージから、なんとなく淡い桃色を想像していたが、ものすごくビビットなピンクだった。

どこにいても見つけられる気がする。


可愛らしい顔立ちに、くるくると変わる表情。

もちろん成績も優秀で、王子と同じクラスに編入してきた。

このあたりも、ヴィクトリアの話と合致する。


「ヴィクトリア様、間違いなさそうですか?」


「あ……ええ、間違いないかと。おそらく、わたくしと同じ転生者ではないかと考えております」


「なんですって?」


ヴィクトリアという転生者の存在もようやく受け止めたところだというのに、なんと『ヒロイン』も転生者らしい。

アナスタシアたちは戦慄した。


「まだ確証はありませんが……たとえばみなさま、素敵な男性たちが複数人いたとしたら、どうなさいますか? 一番好みの、もしくは最も条件のいい男性を選ぶのではないでしょうか」


「ええ。その通りですわ」


ヴィクトリアが何を聞きたいかはわからないが、当然の確認をされて三人はそれぞれ頷く。


「彼女は、おそらく『逆ハーレムルート』……攻略対象の男性たち全員との恋愛成就を目指しています」


「…………全員? なに? どういうこと?」


混乱するマジョルテが、アナスタシアやクロエラに視線を向けるが、二人も理解できていないため反応できない。


「わたくしの知るこの世界の乙女ゲームは、基本的に一対一の恋愛模様を楽しむものです。ヒロインは固定で、ヒロインと誰かの恋愛が成就する道が、攻略対象者の数だけある。という流れです」


「ええ。わたくしたちも、そう認識しておりましてよ」


「ですが、攻略対象者を全員攻略し終えた場合のみ、特典として『逆ハーレムルート』という話があって……ヒロインを、男性全員で愛する、という形の結末に……」


説明しながら、ヴィクトリアとしても常識とはかけ離れた内容に、言葉を詰まらせている。


この国は、王族であっても一夫一婦制である。

そして、貴族は貴族同士の政略的な結婚が主体であり、女性には特に貞淑さが求められる。

男性であっても、愛人や妾を隠れて持つことはあっても、表に晒された時点で『ナシ』と判断され、出世や家門への影響が出る。


その昔、南方の国では皇族の権威を示すために、大勢の女性を娶る『ハーレム』という制度があった。

その文化も廃れて久しい。


それが、平民の女性一人を、王族や高位貴族の男性たちが共有するという。

にわかには信じがたいが、ここで嘘をつく理由もない。


誰もが息を詰める広間に、ヴィクトリアの静かな声が響く。


「判断した理由は、決定的ではありませんが、ヒロインが攻略対象の男性たち全員との『出会いイベント』を終えているからです」


「……確か、ヒロインが男性たちの目に留まるきっかけとなる、初対面の場面ですわね。もちろん一対一の」


「はい。攻略したい男性がいる場合、他の男性たちの『好感度』を上げずに……ええと、親密になるのは一人の男性に限る、というのが、通常の進め方です」


「ええ、理解できますわ。わたくしたちなら、婚約者以外の男性とは距離を保つとか、接し方を控えるということですわね」


理解されたことにほっとしたヴィクトリアは、一度紅茶で喉を潤す。

つられるように、みんなカップに手が伸びた。喉がカラカラだ。


「唯一『逆ハーレムルート』のみ、全員の親密度を上げていく……全員と恋愛を始める必要があります。なので、全員との『出会いイベント』を回収するのです。それをしようと思う自体、ゲームをプレイした転生者ならではの思考かと」


「……なぜ、それが済んでいると?」


「わたくしは悪役令嬢ですので……いつもと違うことをしたつもりなのに、なぜか、すべての場面を目撃してしまって……」


おいたわしい。

思わず同情してしまった。

そんな奇天烈な行動を取る女性なんて、そうそう見かけることはないだろうに。


「わたくしは、前世の記憶があるとはいえ、ヴィクトリアとして生きてまいりましたから……なんというか、知識と現実の差異に、少々目が回りそうなのです」


「わかりますわ。お話を聞いているだけなのに、わたくしたちも混乱しますもの。おつらかったですわね」


「ありがとうございます。そのお言葉で救われますわ」


相当参っていたらしい。

これは、茶会で急な暴露をしちゃっても仕方ない気がする。




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