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孤独な粒子の敗残兵団  作者: のすけ
  第1戦 ケート山賊討伐
35/134

第34話 『 戦後処理という名の(1/6) 』


「すみませんでした!」


トリス公爵への試験結果報告後、晴れて堂々と僕はアヤ姉を連れて…

じゃなくて、アヤ姉に連れて行かれた。

最初に向かったのはボーエン王国在中のリトア王国総合産業組合。

そこの漁業組合責任者に面会し、頭を下げまくった。


「申し訳ありません、私どもの指導が至らず…」

「すみませんでした…」


敗残兵団の上陸に伴う漁猟不振、漁港破壊、船舶損傷。

体長100メートルを越すアパルト級を始めとした46基の機動兵器群の集団移動により、

港湾施設は損傷、リトア王国の漁業に少なからず影響を及ぼしてしまった。



当然、兵団の及ぼした影響はそれだけに留まらない。


アパルト級大型機動兵器の移動により、縦断した全ての重要交易路が破損してしまった。

大陸平原同盟領内の道路は、荷馬車の高速輸送に特化した舗装が成されている。

その舗装が全て破壊され、平原同盟内の物流を止めてしまった。


「申し訳ありません、私どもの指導が至らず…」

「すみませんでした…」


という事情により、ラーセン商会、カルーフ商会、リアンツ商会に頭を下げて回って…。



突如出現した巨大魔獣に対応すべく、神聖法国、魔導王朝、平原同盟が軍を出動させた。


当然だけど、それだけで大きな迷惑をかけたわけで…

軍の出動自体にも当然費用がかさむわけで…


「申し訳ありません、私どもの指導が至らず…」

「すみませんでした…」


先日の魔獣騒ぎから舌の根も乾かぬうちに頭を下げて回っていた。



「シロ…戦争って始めるのは簡単だけど終わらせるのは大変なんだね…」

「あぁ、俺も初めて知ったよ…」


戦後処理という名の謝罪行脚だった。

謝って、謝って、謝り通して…もう一生分頭を下げた気がした。


しかし、更なる悲劇が僕達を待ち構えていた。


「ところでさ、アヤ姉…山賊討伐の懸賞金は…」

「全部賠償に当てたわ」

「え…えぇ!?残りは!?残金は!?」

「残らないわよ!それどころか全然足りなかったんだから!」


もう、なぜか…いや、予想はつくけど無茶苦茶怒ってた。


「た、足りなかったって…どれくらい?」


アヤ姉は無言で指を2本立てた。


ちなみに懸賞金で得た金額は2億ソラだ。


「…2000万ソラ?」


アヤ姉は首を横に振った。


「もしかして…2億ソラ?」


それでも首を横に振った。


「はは、なぁんだ…200万ソラ…」


アヤ姉は凄い勢いで首を横に振った!


「…2桁よ」


「え…なんて…」


「山賊討伐の懸賞金じゃ、金額が2桁足りないのよ!」


今回、兵団上陸からケート山脈まで侵攻しただけで多方面に経済的損失を招いた。

アヤ姉は大まかに…とてもアバウトに計算しても、それくらいになるらしい。



最優先で支払われたのはリトア王国北岸の漁業関係者。

兵団上陸騒ぎで、ここ数日の漁獲量が減ってしまったらしい。

彼等の生活が滞らないよう、最低限の保障がされるように手配された。



パラス神聖法国とヴリタラ魔導王朝のボーエン王国内在中の騎士団を訪問した際は、

速攻で謝って何らかの賠償を請求される前に速攻で退出して強引に逃げ帰った。

アヤ姉が巧みな外交話術で誘導して戦費の話題を避けてくれた。

その意味も込めて、念入りに謝った。

とても頭を下げて謝った。



ボーエン王国内在中のトスカー共和国大使館には暖かく出迎えられた。

軍を出動する羽目になったが、ケート山賊の捕縛には大変満足されていた。

これまでの頭痛の種が消え、共和国首脳は非常に喜んでいると。

共和国民や商人達からの陳情が多く対処に困っていたので非常に助かったらしい。

各都市で避難準備や誘導を進めて騒ぎになっていたが、それは仕方ないと許して貰えた。

交易路の破壊についても、大目に見てもらえた。

インフラの修復に時間と費用は必要だが、人命の損失が無かったので問題無いと。

4回目の山賊討伐の戦費と考えればギリギリ許容範囲だと許してくれた。

有り難くて何度もお礼を言った。

何度も何度も頭を下げた。



3つの商会も梯子をして回った。

ボーエン王国の支店や本店を訪問し、今回の騒動の事情の説明と謝罪をした。

だが、どの商会からも好意的な反応をされた。

矢張り、これまで頭痛の種だった山賊の討伐成功が非常に大きい。

これでトスカー共和国とヴリタラ魔導王朝間、ケート山岳周辺の交易路が正常化する。

各都市間の物流が滞ってしまったが、それを補って余りある成果だと喜んでくれた。

今までケート山岳を迂回せざるを得なかったが、これで収益の増加が見込めると。

これからの採算性を考慮すれば、今回の損失は十分に補填可能らしい。

とても喜んで貰えたけど、やっぱり頭を下げて謝っておいた。



「もう…どれだけ謝ったんだろ…」

「何言ってんのよ!

 私達はまだ全然楽な方なのよ!?」


とてつもなく嫌な予感が脳裏をかすめた。


「レスリーさん…もっと怖い人達を訪問して謝ってるんだから…」


「ど…どんな人達…?」


「…聞きたい?」


僕はこれからどれだけの時を費やせばレスリーさんに負債を返せるのだろう。

本当の本当にもう…頭が上がらない。



城塞都市内のあちこちを、アヤ姉と一緒に回り一緒に頭を下げて下げて下げまくって…。

一通り謝罪が終わった頃には、完全に夜が更けていた。


いや、謝罪は終わってなかった。

最後にもう一人、頭を下げなくてはならない人がいる。


今日、この日ほど帰りの足取りが重かった時は無いだろう。

自宅の明かりが見えてくると、思わず逃げ出したい衝動に駆られた。



「ただいま戻りました…」


扉を開いて中に入ると、居間のテーブルには2人が…。

レスリーさんはテーブルに両肘を立てて寄りかかり、重々しい表情で腰掛けていた。

ドナ先生は無表情で行儀よく椅子に腰掛けていた…怖いくらい無表情で。


「アキヒト…そこに座りなさい、シロもよ」


抑揚の無い…空恐ろしささえ感じるドナ先生の声。

僕は言われるまま、レスリーさんと向かい合う席に腰を下ろした。

シロもぼくの右肩に。


僕の傍にはアヤ姉が立ち…しばらく無言の時が流れた後、レスリーさんが口を開いた。


「…自信を無くしたよ。」


その口調は疲れ切っていた。


「今後、君の後見を続けられる自信が無い…。

 アキヒト君は、私の代わりの後見人を見つけた方が…。」


「すみませんでした!」


話が終わるよりも早く、僕はレスリーさんに頭を下げていた。


「今回も大変迷惑をお掛けして…!

 僕なんかのために、大勢の人達に謝りに行かせてしまって…!

 本当の、本当に申し訳ありませんでした!

 ですから、それだけは…僕の後見人をこれからも…!

 もう二度とレスリーさんに迷惑をお掛けしないと約束します!」


立ち上がり、深く…深くレスリーさんに頭を下げた。


「俺からも頼むよ、レスリー。

 色んな奴等に謝りに行かせたのは悪かったけどよ、後見は止めないでくれ。

 俺もこれからは迷惑をかけないって約束するから許してくれよ…」


僕とシロは何度も謝ったけれども、レスリーさんの表情は変わらない。

その時、横からドナ先生が呟いた。


「…本当に2人とも馬鹿ね。

 何を謝るべきか、せめてそれを確認してから謝りなさい」


「え…それは…」


「お父様はね、後見人だから周囲に謝りに行くのは当然の義務なの。

 そんなこと露ほども気にしておられないわ…」


「それじゃ…えっと…」


戸惑う僕に、レスリーさんは再び重々しい口を開いた。


「なぜ黙って山賊の討伐に出て行ったんだい?」

「それは…」


「私は言ったはずだね、公爵にもう一度掛け合って試験内容を変更して頂くと。

 きっとアヤちゃんを連れ戻せるように…公爵も納得頂けるようにと。

 

 その言葉が信用できなかったかい?」


その時、僕は始めて自分の過ちが理解できた。


「君達は私が信用できなかったと…。

 私に任せても事態は良くならなかったと考えていたんだね?

 君達から見て私が頼りにならないなら仕方ない…他の人物に後見を…」


「ま…待ってください!

 レスリーさんを信用してないなんて…!

 それだけは決して有りません!」

「待てよ!それなら俺の責任だ!

 俺が強引にアキヒトを連れ出したからだよ!」


僕とシロは弁解したが、レスリーさんの表情が晴れることは無かった。


そんな弁解が続く中、横の…ドナ先生の変化に気付いた。


「馬鹿…っ……本当に……ぐっ……」


つい今までの無表情から…気付いたら嗚咽して涙を流していた。


「……う……っ…2人とも…………」


隣に立っていたアヤ姉も、口元を手で覆いながら泣いていた。


正面を見るとレスリーさんも指で目頭を抑えて、必死に涙を堪えていた。



「え…えぇっと……」


困惑して言葉が出せないでいると、台所からティアさんが姿を見せた。


「アキヒトさんとシロさんは反省なさるべきです…」


いつも微笑みを絶やさないティアさんが、柔らかくだけど怒っていた。

とても優しく穏やかだけど…僕達を責めていた。


「勝手に山賊討伐へ出て行かれて、どれだけ皆さんが心配なさったか…。

 お2人には想像できませんか?」


その時、レスリーさんが擦れた声で言葉を漏らした。



「良かった…2人とも、本当に無事で良かった…」



僕は馬鹿だった。

本当に謝るべきことが何なのか…愚かな僕にもようやく理解できた。


「馬鹿…本当に2人とも馬鹿なんだから…!」


「誰がそこまでしろって…人の気も知らないで…!」


ドナ先生とアヤ姉の言葉が突き刺さった。

その時…本当に僕は自分の何が悪いか…罪悪感というモノが分かった。


「心配させて…ごめんなさい…」


今日一日で何度も何度も謝ったけど…初めて本心から謝罪の言葉が出た気がする。


「わ…悪かったな」


さすがのシロも今回ばかりは反省したか、皆には謝っていた。


「お2人とも、結果さえ良ければという考えはお止めになるべきです。

 成すことが大きければ大きいほど、周囲には気を配らなくてはなりません。

 でなければ成功したとしても決して祝福されません…」


昨日まで無力だった僕が山賊討伐を成し遂げた。

それはシロから兵団の力を得たからだ。


そう…僕は舞い上がっていた。


偶然手にした力で山賊を討伐して浮かれて…回りの人達のことを忘れていた。

どれだけ心配していたのか、少し考えれば分かるのに…。


余りにも配慮が足りなかった。


「みんな…ごめんなさい。

 本当に…本当に…心配かけて…ごめんなさい…」


今の僕には…もう、それしか言葉が出なかった。



「さぁ、レスリー様も皆さまも…そろそろ食事になさりませんか?

 アキヒトさんもシロさんも反省されてるようですし…。

 今夜は腕によりをかけて用意しましたので、是非召し上がって下さい」


「そ、そうだね…難しい話はこの辺で一区切りしよう。

 私も昼から何も食べて無くてね。みんなもお腹がすいただろう…」


ティアさんの勧めにより、台所から次々と御馳走が運び込まれた。


トマト、ズッキーニ等の色鮮やかな夏野菜のサラダ

柔らかな牛バラブロック肉が入ったビーフシチュー

海から離れた中央平原では珍しい白身魚のムニエル

たった今焼き上がったばかりのミートパイ


テーブルに並べられていく光景…どれも手が込んでいるのが分かった。。

騒がしい一日が終わり、安心したらお腹が鳴った。


「ティアさん、私達の分まで済まないね」

「いえ、お気になさらず…食事は大勢の方が美味しく頂けますから」


さっきまでの空気は、並ばれた御馳走でかき消されていた。

レスリーさんもドナ先生も…アヤ姉も今は笑顔に戻り、僕もほっとした。



「…待て、食事の前にハッキリさせておこうぜ」


和やかな雰囲気でこれから食事という時に、シロが話を切り出した。


「何が?」


「アヤだよ…これでアキヒトの案内人には戻ったが…。

 何か言うべきことがあるんじゃないか?」


「何を?」


「だからよ、お前はアヤに案内人をやって欲しくて頑張ったのか?

 その為にわざわざ山賊を討伐しに行ったのか?」


「そ…それは…」


「どうなんだ?お前にとってアヤは単なる案内人なのか?

 アキヒトの本心はどうなんだ?」


すっかり忘れていたけど、シロは思い出させてくれた。


「何の話…?」


事情が呑み込めないアヤ姉が不思議な顔で僕達を見ていた。


「あ、あのねぇ、アヤ姉…僕は案内人としてだけじゃなく…」


「何なの?」


「僕は…僕はアヤ姉に……その…えっと…」


「何よ、改まって…」


これからも一緒に居て欲しかった。

しかしそれは案内人としてだけでは無く…なんて説明すれば良いんだろう。


そう――また辛い時には抱きしめて欲しかった。

けれども今ここで、レスリーさん達の前ではとてもじゃないが口に出せなかった。


うん、ハッキリ言って恥ずかしい…


「な…何なのよ?」


なぜかアヤ姉まで縮こまって照れて頬が紅潮して…明らかに緊張していた。

僕とアヤ姉の間に何とも言えない微妙な空気。

しかし、意を決して言葉を出した。


「だから僕は…アヤ姉に……アヤ姉にさ…!」


「ハーレムに入って欲しいんだってさ」


シロの発言に何もかもが凍った。


「アキヒトがな、ハーレムを作りたいんだとさ。

 それで手始めにアヤをぐぁぁぁああ!!」


即座にシロの首(?)を締め上げていた。


「し、シロぉぉ!いきなり何を言い出すんだよ!

 どこでそんな言葉を覚えたんだぁぁ!?」


「い、いや!人間の男はみんな、ハーレムが夢だって本で読んで…!

 アキヒトもそうしたいのかと…!」



バチィ!!



アヤ姉の張り手が僕の頬に炸裂した。


「さ…最低ね!

 マジメな顔をして何を言い出すかと思ったら!」


「ち、違うよ!」


「じゃあ、何を言おうとしたのよ!?」


僕はアヤ姉に胸ぐらを掴まれて詰め寄られた。


…とてもじゃないが言える空気じゃなかった。

瞬間湯沸器のように即効で怒りに満ちたアヤ姉に聞く耳は無かった。


「ねぇ、アヤはともかく…まさか私までハーレムに考えてないわよね?」


「ドナは2号だ」


またもやシロがとんでもない事を言ってしまった。


「わ、私が…この私が2号!?

 はは…ははは…ア…アキヒトも偉くなったわね…?」


「ご、誤解だよ!それはシロの勘違いで…!

 僕にはそんな気、全然無いから!」


ドナ先生の湧き上がる怒りが嫌になるくらい分かる。


「…もしかして、私もアキヒトさんのハーレムに入る予定なのですか?」


テーブルに食事を並べながら、ティアさんが楽しそうに言った。


「じょ、冗談ですから!

 シロの冗談なんて忘れて下さい、ハーレムなんて僕は!」


「私は嬉しいですよ…?」


今度は僕が固まる番だった。


「は…はは、ティアさんこそ…冗談は……」


「いえ、冗談なんかじゃありませんよ。

 アキヒトさんがハーレムを作るなら是非、私も入れて頂きたいです」


「…からかうのは止めてくださいよ」


「からかってなんかいません」


ティアさんは微笑みを湛えながら、顔を近づけた。


「御主人様…このティアをハーレムに入れて頂けないでしょうか…?」


「え…と……」


今更だけど、ティアさんはとても美人で…間近だと非常に…困って…。


ガンッ!


突然、アヤ姉にゲンコツで脳天を叩かれた…遠慮なく。


「っ…!」


「ティア先輩、冗談も程々にお願いします!

 この馬鹿が本気にしたらどうするんですか!」


「いえ、私は本気ですよ?ふふ…」


顔を離すとティアさんは配膳にと、台所へ戻っていった。



「――そうだ、私も一つ忘れてたわ」


ドナ先生の発言。

僕の第六感が全力で警鐘を鳴らした。


「アキヒト…この前は逃げられたけど、正直に答えて貰おうかしら。

 アヤの着替えを覗いてたってシロの証言…。

 嘘なの?

 本当なの?」


「…アヤ姉、事情の説明をお願い」


「あぁ…あの時の話なら事故よ?

 状況が状況だし、偶然だったから許してあげることにしたの…」


ガラスの反射でアヤ姉の着替えが目に入ってしまったこと。

事故性の高い点を強調してドナ先生に説明した。


「おかしいわね…証言が食い違ってるわ」


「どこが?」


「シロの証言では、アキヒトが熱心に覗いてたって…」


アヤ姉が無言で僕を睨みつけた。


「え…あれは…本当に偶然で…」


「何言ってんだ、凝視してただろうが」


またもやシロが余計なことを言い出した。


「あのガラスの光学的反射で、アヤの着替えを見ていた件だろ?

 お前の視線方向から反射角度を計算したら、ずっとアヤの方を向いてたぞ。

 着替えが終わるまで…」


バチィィ!!


さっきより威力の増した張り手が反対側の頬に炸裂した。


「こ、この…アンタは!」


「ごめん!そんなつもりじゃ…!」


アヤ姉は顔を真赤にしながら怒ってた。

照れ隠しかもしれないけど、暴力に訴えるのはできれば勘弁して欲しい…。


更にドナ先生の追求が続いた。


「…そうだ、前からシロに聞きたかったんだけどね」


「なんだ?」


「目はどこにあるの?」


「そんな器官、無ぇよ」


そう、シロは全体が光の塊。

目や耳や口や鼻や…人間の感覚器官がどこにも無かった。


「じゃあ、視覚情報はどこから入ってくるの?」


「全身だよ、だから全方位一度に見ることができるぜ」


「そう…それじゃ、アヤの着替えは見えてたの?」


「当たり前じゃねぇか」


シロは頭が悪いのかもしれない。

誘導されるがまま、進んで罠に飛び込もうとしている。


「あの時の着替えなら、最初から最後まで全部見え」


バシッッ!!


ガンッ!


ガンッ!


話が終わる前にアヤ姉の渾身の張り手が放たれ、シロに直撃していた。

床に当たって跳ね返り、更に壁に当たって…2回もバウンドした。


「あ、アンタ達は!!!

 今度悪さしたら全力で引っぱたくからね!!」



僕とシロは仲良くアヤ姉から張り手を貰った。


初陣で初勝利したはずなのに…僕には勝者の実感なんて湧かなかった。

普通、祝勝会で女の子から張り手なんて貰わないよね…。


普通は…。




「ねぇ、シロ…前にさ、自分は何でもできると言ってたよね?」

「あぁ…そんなこと言った気もするな…」

「じゃあさ…アヤ姉の性格…もう少し何とかならない?」

「う…」

「もう少し…少しだけ、おしとやかにさ…」

「すまない、アキヒト…それだけは俺でも無理だ…」


僕は大きく溜息をつき…がっくりと肩を落とした。



「ダチ公の頼みでも…?」


「ダチ公の頼みでもだ…」



―――――――――――――――――――――――――――


敗残兵団戦史


大陸歴996年9月5日開戦


場所 トスカー共和国ケート山岳地帯


投入戦力

アパルト級大型機動兵器  1基

ガリー級中型機動兵器   2基

インガム級中型機動兵器  5基

各クダニ級小型機動兵器 39基


兵団損失

無し


備考

山賊312名は全員捕縛、トスカー共和国軍へ引き渡し完了

ケート山岳地帯周辺の交易路正常化

一連の軍事行動による経済損失105億ソラ

(アヤ・エルミートによる概算)

但し現時点にて賠償責任は無し(2000万ソラを除く)



大陸歴996年9月5日終戦


第1戦 " ケート山賊討伐 " 状況終了




次回 第35話 『 大陸平原同盟首脳陣 』

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