第32話 『 その名は敗残兵団 』
「おい…アキヒト…おい、起きろよ…」
暗闇から…声が聞こえる…。
目が覚めるとベッドの上で…眠い目を擦りながら見ると、シロが宙に浮いていた。
外はまだ暗い…まだ夜明け前だ。
「ん…どう…したの…?」
「これから出かける、着替えて支度しろよ」
「なんで…まだ眠いよ……」
「早くしろ!
そろそろ出発しないと間に合わないんだ!」
「何にだよ…」
「アヤを迎えにだよ!
今から山賊討伐に行かないと夕方までに戻ってこれないだろうが!」
「…えぇ!?」
僕は一瞬で目が覚めて跳ね起きた。
「シロ、本気で討伐するの!?」
「当たり前だろ!
でなきゃ依頼なんて受けねぇよ!」
「レスリーさんが言ってたよ、軍隊を派遣しても勝てなかったって」
「人間の軍隊が勝てないからって、どうして俺が勝てないと思うんだ?」
またもやシロに押し切られる形となった。
僕はベッドから起き上がると寝間着を脱いで、いつもの学生服に着替えていく。
「大事なの忘れてるぞ」
「そ、そうだね」
アヤ姉が僕のために編んでくれた白いマフラー。
まだ9月だからまだ早いけど、涼しい夜半なので首に巻いていた。
暑くなってきたら取れば良いだけだし。
下に降りると、当然だが誰も居ない。
ティアさんがやってくるには、まだまだ全然早い時間だった。
扉を開けて外へ…城塞都市の街はまだ寝静まっていた。
「外にダニーを待たせてある。
あれに乗れば目的地までひとっ飛びだ」
「うん!」
城門はまだ閉まっているが、シロがいれば空を飛んで出ていける。
「今日はお前の初陣だ、派手に飾るぜ!」
「ははは…」
誰一人として姿の見えない、暗闇に沈んだ通りを僕達は歩いていく。
その時、シロが急に空中で静止した。
「…誰か来る」
ここは繁華街からも遠い区画。
こんな時間帯に出歩くなんて変わった人もいるなと思った。
「あら…お2人ともどうされたんですか?」
暗闇から姿を現したのはティアさんだった。
余りにも意外な出会いに驚いた。
「ティアさんこそ、どうしたんですか?
まだ随分早い時間なのに…」
「変な時間に目を覚ましてしまいましてね…これを作っていたんです」
その手にはバスケットのかごが提げられていた。
「今からこれをアキヒトさんのお宅に置きに行こうかと思いまして…。
朝食と昼食の両方、入れておきましたから」
「そうでしたか…わざわざありがとうございます!」
「いえ…それでお2人こそこんな時間に何を?」
「え、えぇっと…僕達も眠れなかったんで、少し散歩してたんです。
まだ誰も通らない時間ですから、ひっそりとして新鮮な感じが…」
「ふふ…そうですね、楽しいかもしれません。
それではこれを…」
ティアさんから差し出されたバスケットを受け取った。
「ではもう少し散歩してから、僕は帰りますので…」
「私もついて行きましょうか?」
「え…えっと…」
「アキヒトさんのお散歩…よろしければ私もお供しましょうか?」
本当に散歩だったら、僕には断る理由も無いのだが。
「ティアさんは休んで下さい、このお弁当作って寝てないのでは?」
「問題無いですよ、私は全然。
それよりアキヒトさんこそ、お一人で大丈夫でした?」
「それこそ問題無いですよ!だって僕は男なんですから!」
自信満々に高らかに宣言して、心配性なティアさんを安心させようとした。
するとティアさんは、僕の首元のマフラーに手を伸ばす。
急いで無雑作に巻いただけのマフラーを、丁寧な手付きで形を整えてくれた。
「…今夜は何が食べたいですか?」
「えっと…ティアさんが作ってくれるなら何だって美味しいですから…」
「ふふ…ありがとうございます。
ですが、今夜は腕によりをかけて御馳走を作っておきますね」
お弁当を受け取った僕は、ティアさんと別れて城門の方へと再び向かった。
「…妙にタイミングが良いな」
「何が?」
「お前の食事、用意をすっかり忘れてたからな。
助かったなと思って…」
「うん、本当にティアさんには助けられているよ…」
レスリーさんと同じく、ティアさんにもどれだけ感謝しても足りない。
「あ…開いてる?」
夜には閉まってる城門が、なぜか今は少しだけ開いていた。
周りを見ても近くには誰も居ない…。
「丁度いい、通らせてもらおうぜ。
上を行くのは少し時間がかかるし、俺も面倒だからな」
誰も居ないし、僕達は素早く扉の隙間を抜けた。
城門から少し離れた場所に影が…ハッチの開いたダニーが待機している。
「ティアさん、嘘ついてゴメンなさい…」
城塞都市に向かって一度頭を下げ、僕はダニーに乗り込んだ。
大陸歴996年9月3日
ボーエン王国には通達が遅れたが、北岸付近一帯は騒然としていた。
「化け物だ…化け物が陸に上がった!」
全高100メートルにも達する巨大な魔獣が海中から姿を現した。
更に十数メートルから数メートルの魔獣が40体以上、その後に続いた。
魔獣は集団となって南下を始めた。
神聖法国と魔導王朝の駐留軍は迎撃も何もできず、後を追うしかなかった。
安全圏内から魔獣の集団を補足し、動向の監視を続けた。
―――――――――『空間歪曲半透過光学迷彩』――――――――――
「霧か…?いや、あの周囲だけ靄がかかっているような…。」
人々の生活圏から遠く外れた草原を魔獣の集団は進んでいた。
その集団から2kmの距離を維持し、魔導王朝騎士団が騎馬で並行に進んでいる。
だが、彼等には魔獣達の姿が掴めない。
まるで靄でもかかっているような…ぼんやりとした存在しか視認できない。
集団の先頭を行く魔獣が巨体なのは間違いない。
魔獣達は南下を続けたが、その経路は直線では無かった。
人々の生活圏が進行方向に有れば迂回し、人気の無い荒れ地や草原を進んだ。
たまに商隊などが接近しニアミスすることも有ったが、危害を加える様子も無い。
それどころか商隊が遠ざかるまで進軍を停止してさえいた。
この異変は当然だが、多くの国々に知らされた。
北岸のリトア王国は他の同盟国に救援を要請し、王国民の避難準備を始めていた。
しかし魔獣達が通り過ぎたことで、とりあえずは一息つくことができた。
続いて侵入されたトスカー共和国では、当然緊急体制が敷かれた。
同じく全共和国民の避難準備が進められ、避難先となる他同盟国との交渉が始まる。
だが、魔獣の集団が人々の生活圏を脅かすことは無かった。
延々と迂回を続け、巨大な魔獣達は人々を避けながら進軍していた。
トスカー共和国からも国軍が発進したが、安全圏内から動向を見守るしかなかった。
神聖法国、魔導王朝、平原同盟諸国
各国家軍もトスカー共和国内へと入り込み、魔獣達の様子を伺った。
9月5日午前未明
魔獣達の進軍が止まった。
トスカー共和国西部、山岳部より距離にして10kmの平原地帯。
同時に、この魔獣達を中心として各国軍も動きを止めた。
周辺は延々と無人の野が続いていた。
最も近い交易路からも10km以上離れている。
共和国内の最も近い生活圏からは30km以上の距離。
異変が報告され次第、避難が開始される手筈となっていた。
付近に村落は無かったが、人が居なかった訳ではない。
魔獣達から距離にして15km地点。
前方に臨むケート山岳部には、300名以上の山賊砦が存在していた。
「アキヒト、起きろよ。勢揃いだぞ?」
ダニーが疾走を初めて4時間以上経過、既に日は昇っていた。
僕は中で仮眠を取るようシロから指示されていた。
そしてシロから起こされ、キャノピー越しに周りを見て驚いた。
「え…」
広大な平原に、様々な旗の軍隊が陣を張っていた。
神聖法国、魔導王朝、平原同盟…その合間を縫ってダニーが駆けていく。
「せ、戦争でも始まるの!?」
「あぁ、始まるさ。
但し戦うのはコイツ等じゃない…俺達だ!
ほら、見えてきたぞ!」
ダニーの進行上に山が見えた。
…いや、山なんかじゃない。
あれは…巨大な…巨大な何かだった。
「なっ…!シロ、方向転換!
方向転換しないとぶつかるよ!」
「はは、大丈夫だ!
あれは俺達の兵力だからな!」
ダニーが巨大な何かの近くで動きを止めた。
草原の上で屈み込み、複眼のハッチが開いた。
ほんの50メートル程の場所には巨大な山が…その後ろにも何かがいるようだ。
「き…霧が出ているの…?
僕にはよく見えないんだけど…」
まるで霞がかかっているような光景。
間近だというのに、僕からの距離でも細かい形状がよく分からない。
「今、お前にも見えるようにしてやるよ」
―――――――――『 光学迷彩解除 』――――――――――
巨大な山の霧が晴れていく…。
「ぁ……え…」
僕は何か言葉を出すこともできなかった。
眼の前に姿を現したのは巨大な…形容しがたい巨大な獣だった。
僕の知っている龍、獅子、虎、巨人――どんな神獣からもかけ離れた異形の姿。
巨大な獣だけではなく、周りの獣達の霧も消え去っていた。
「…あぁ!」
数にして40体以上のダニーが、この草原周辺に集まっていた。
「ダニーがこんなにたくさん…!?」
「違う違う、前にも言ったろ、ダニーは個体名。
コイツ等はクダニ級小型機動兵器だ」
「クダニ級…?」
「そう、俺達の兵種の一つさ」
――――――――――――――――――
汎用小型機動兵器 " クダニ "
全高2~3メートル(個体差有り)
最も生産台数の多い兵種。
全体が金属の外郭に覆われており、
下部節足を活かした非常に高い機動性を実現。
側面部からは左右2本の触覚を有し、
同サイズ兵種との近距離格闘戦が可能。
また口内には小型であるが粒子砲を装備。
但し連続発射は不可能であり、主に牽制目的で使用される。
機動性を活かした集団戦を得意とする兵科。
現時点での配備数:37基
早期警戒用 " クダニ "
クダニ級小型機動兵器を改修して本体後部に測定器を装備。
小型だが索敵機能を有した兵種である。
この索敵には鉱物放射特性を活かした検知システムが使用されており、
物質から放射されるエネルギーの一種の測定を可能としている。
この検知には非常に鋭敏な感覚機能が必要条件とされており、
適合する個体が少ないため希少な兵科である。
索敵範囲は通常半径200km(最大半径500km)
現時点での配備数:1基
兵団指揮用小型機動兵器 " ダニー "
アキヒト専用にクダニ級小型機動兵器が改修された個体。
砲撃機能をオミットすることで、搭乗者と重力遮断装置のスペースを確保。
シロはアキヒトの成長を見越してスペースを確保しており、
現時点で13歳のアキヒトの体格に対してかなり広い。
また本機体は直接戦闘ではなく兵団統率を目的としており、
重力遮断機能によって長時間の高空指揮が可能。
更に通常のクダニ級に比べて運動性は低下したが、耐久性は向上している。
現時点での配備数:1基
――――――――――――――――――
ガチャ…!
クダニよりも巨大な、全体が赤く染まった何かが立ち上がった。
逆関節の2本足の上には巨大な3つの砲塔。
光沢のある外装から機械を思わせるが、その隙間から生体部が覗く。
言わば、歩く砲台だった。
――――――――――――――――――
砲撃用中型機動兵器 "インガム"
全高約12メートル
遠距離砲撃用及び対空用兵種。
足部は外装補強され、重心は低く設計された為に転倒リスクは非常に少ない。
重力下での中型級であるが、2本足により機動性は比較的高い。
尚、粒子集束機能により大気圏下での減衰が最小限に抑えられたため、
ロングレンジから主砲の精密砲撃を可能としている。
また2本の副砲は口径が小さいながらも、対空及び近距離での迎撃が可能。
格闘戦を主とするシロの兵種の中では珍しい砲撃種である。
現時点での配備数:5基
――――――――――――――――――
……!
いきなり地面が揺れ始めた。
「こ、今度は何だい、シロ!」
「味方だよ、ほら出てきた」
地響きと共に地中から、やはり巨大な何かが這い出てきた。
高さはインガムと同じくらいだが、前後左右に広がった巨体。
本体から伸びた2本の太い腕の先には巨大な鋏。
不動肢と可動肢を合わせれば本体に匹敵するサイズだった。
下部には移動用に10本の胸脚。
上面は非常に硬そうな甲羅みたいな装甲に覆われていた。
――――――――――――――――――
拠点攻略用中型機動兵器 " ガリー "
全高約10メートル 全長約30メートル
主に重厚な敵防御陣突破用に特化した兵種。
両腕の巨大なクローにより、地中への長時間潜航が可能。
敵陣後方へ侵入し、撹乱と破壊工作目的に投入される場合が多い。
本兵種は中型級の中では最も耐弾性が高く、単機での戦線構築も可能。
粒子砲は無いが、代わりに体内にはSAM生産機能を装備。
(surface-to-air missile : 地対空ミサイル)
戦線での要となる兵種である。
現時点での配備数:2基
――――――――――――――――――
そして山のような巨獣
見上げても、その頂上が地上からは霞んで見えない。
ガリー級も巨体だが、それを遥かに越える巨躯。
前後に長い本体下半身と、その前部に設置された上半身らしき形状。
下部からは巨大な4本の節足と、前足のような2本の節足が伸びていた。
計6本の節足で巨体が移動するのだろう。
見上げると、上半身側部から生えた左右2本、計4本の鉤爪状の腕。
鋭い鉤爪が主な武装なのだろう。
そして頭部。
巨大な口から、やはり巨大な牙を覗かせていた。
「コイツがウチの主力『アパルト』さ!」
――――――――――――――――――
地上戦用大型機動兵器 『 アパルト 』
全高約100メートル 全長約200メートル
最も生産台数の多い大型機動兵種の一つ。
とはいえ、中小型に比べれば遥かに希少な個体である。
この兵種の特徴は重装甲を活かした突破力に有り、
格闘戦で戦場に楔を打ち込むことを主目的としている。
4本の鉤爪状の腕は伸縮可能で可動範囲が非常に広い。
その為、巨体ゆえの死角部位ですら容易に攻撃が可能。
全力で振り回した場合は遠心力で音速を越え、
その質量と相まって近距離戦では絶大な威力を誇る。
シロ自身は格闘戦を好む傾向にあり、
そのスタイルが反映された兵種とも言えるであろう。
全体は重厚な機械外郭に覆われており、
至近距離での戦術核でも致命打には至らない。
また後部にはガリー級と同様にSAM生産機能を装備。
機動性は低いが、対空戦すら可能である。
特筆すべきは巨大な口内粒子砲である。
戦局の劣勢をも覆し得る非常に強力な兵装であり、
それがアパルト級を最強兵種の一つに至らしめている。
現時点での配備数:1基
――――――――――――――――――
「前によ…アキヒトが元の世界の道具を見せてくれたよな?
それを見たら、どんな世界なのか想像ついたよ」
それは携帯端末とノートPCだった。
「この世界にはな、人間の言葉を使って説明すると特殊な"粒子"が漂っているんだ。
それは至る空間に存在し、集合と分散を繰り返している。
勿論、今のお前の周りにも目には見えないが存在している。
それでこの粒子には一つ変わった特性が有ってな、そこから磁場を発生しているんだ」
「磁場…磁石かな?」
「そんなもんだな。
生物には何の影響も無いんだが、それが原因でお前達の道具は使えなくなった。
決して壊れてしまったわけじゃないんだな…」
確かにこちらの世界に来てから不思議だった。
何も大した衝撃も与えた覚えは無いのに、携帯端末もPCも動かないのだから。
「そしてもう一つ…この粒子は他の粒子と左右…いや、正確には左右という表現は変だな。
とにかく形が対称なんだ」
「……え?それがどうかしたの?」
「そうだな、なんて言えば良いのか…。
本来なら存在するはずのない粒子なんだよ」
「けど有るんだよね?今も僕達の周りに」
「そう…この世界には存在する…お前の世界と違ってな!」
「え…えぇっと…それが何か重要なの?」
「俺の兵種のエネルギー源になっているんだよ」
「あ…そうなんだ…それが何か?」
「……お前、今度ドナに死ぬほど勉強教えて貰って来い!」
「え…何で!?」
「全ての兵種にはな、心臓部である粒子反応炉が搭載されてるんだ。
その粒子を取り入れた後、そこで対称粒子同士を反応させてエネルギーを産み出す。
これは自然界では決して起こり得ない、俺達だけの機能だ。
その反応後のエネルギー変換効率は99.999%以上…凄いだろ!」
「あ…うん、そうなんだ」
「…お前が馬鹿なのか、お前の元の世界の人間達が馬鹿なのか」
「…え!なんでそうなるの!?」
「ま、いいや…。
つまりこの世界にはその特殊な粒子が存在するから、俺達も活動できるんだよ。
自然界には存在するけれども、決して他の粒子とは交わらない存在。
" 孤独な粒子 " …がな」
僕はシロの仲間達を見上げた。
なるほど…この世界にしかない粒子をエネルギーにして、活動しているんだ…。
「前に、お前は自分を"敗残兵"だと言っていたな?
実は俺達もそうなんだよ」
「え…シロも誰かに負けたの?」
「あぁ、ボロクソに負けたよ。
昔、昔…遙か昔に大きな戦いが有ってな…俺達は惨敗した。
コイツ等は生き残り…いや、俺も含めて全てが"敗残兵"なんだ」
一目見れば、どれも異形の獣。
だが敗残兵とシロから教えられると、なぜかとても哀れに見えてきた。
「アキヒト…お前に俺の戦力を全てやるよ。
好きに使ってくれ」
「え…どうして?」
「俺とお前はダチ公だ。
お前が死にかけていた時、お前は助けてくれた。
やろうと思えば他の神獣とも契約できたのに…この俺を助けてくれた。
だから今度は俺の番だ!
俺の全てを賭けて、お前を助けてやる!」
「シロ…」
「ダチ公が困ってんなら助けるのは当然だろ!
それでアキヒトは、どうするんだ?
アヤを迎えに行くんじゃないのか!?」
「う、うん…ありがとう、シロ!力を借りるね!」
「あぁ、行こうぜ!」
ハッチの開いたダニーに乗り込むと、空高く浮かび上がった。
アパルトの頭部と同じ高さで停止。
眼下には他の兵種達が近くの平原一帯に展開している。
「連中の動かし方は特訓の時と同じだ!
今、お前と精神リンクさせる!」
「わ、分かった!」
ダニーと合わせて全47基。
今、全ての兵種と僕の感覚が繋がった。
進むも引くのも、自由自在に動かせるのが分かる。
「それで、これがお前の初陣だが…軍団の名前は何にする?」
「あれ?元の名前は?」
「そんなの無ぇよ。
どうせだ、初めての名前はお前に任せるよ」
「うーん、そうだね…」
「…『アキヒト軍』とか」
「絶対に嫌だよ!」
「じゃあ、どうすんだよ…」
周りの兵種達を見下ろし…アパルトを眺めて…最後にシロを見て思いついた。
「そうだ…シロ達は"敗残兵"なんだよね?」
「あぁ、さっき話した通りだ」
「僕も勇者候補から落ちこぼれた"敗残兵"だよ…」
だから頭に浮かんだ。
僕達だからこその軍の名前。
「…『 敗残兵団 』」
「なに…!」
「そう、僕達は『 敗残兵団 』だ!
これで決まりだよ、シロ!」
「はは!いいぜ、悪くない!俺達に相応しい名前だ!」
シロも喜んでくれていた。
精神リンクから、兵種達も喜んでくれてる気がした。
「よし、それじゃ決まりだな!
今日からお前は『 勇者候補アキヒト 』じゃない!
今からお前は『 兵団長アキヒト 』!
俺達、敗残兵団の『 兵団長アキヒト 』だ!」
「え…僕が?」
「前に約束しただろ!?
お前には最高の肩書を考えてやるって!
『 兵団長アキヒト 』!
最高の肩書じゃないか!」
「あ…ははは…」
「なんだよ、反応薄いな!」
「いや、とても嬉しいよ…」
「じゃあ、もっと喜べよ!」
第1期 敗残兵団全戦力50基
アキヒトは兵団の進路をケート山岳部に向けた。
早期警戒用クダニからシロを経由し、敵戦力情報が伝達される。
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第1戦
『 ケート山賊討伐 』
敵戦力構成
山賊頭 1名
神族戦士 10名
魔道士 6名
山賊戦士 295名
合計 312名
難易度
☆
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白いマフラーを首に巻いた『 兵団長アキヒト 』が号令をかけた。
「作戦目標、ケート山賊砦! 敗残兵団、発進!!」
次回 第33話 『 粒子砲全開照射 』




