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木偶の坊と呼ばれた少女  作者: 朝倉春彦
Chapter2.急成長のマニューバー
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16.お屋敷探索 -1-

「ふと思ったんだけどさ、趣味の割りには…お上品じゃない?」

「失礼ね。でも、ごもっともよ。新築で建てたわけじゃないんだって」

「へぇ…なら、どこかの没落貴族の屋敷って所かな」

「そうなんじゃない?見えないところは大分古いんだから」


 来る土曜日。この街らしい、ハッキリしない曇天の下。ワタシは昌香の家を訪ね…2人揃って、屋敷の中を歩き回っていた。彼女の両親は、短期出張でこの街にいない。だから、今は、この広い屋敷に昌香だけ…亜希子さんがいると言えばいるが、ワタシが居る今も姿を見せず、気配も感じないところを見ると、彼女は席を外してくれている様だった。


「これで1周?」

「そう」

「…これで、昌香は土日の間中引きこもってるの?」

「言い方!…ま、庭いじりとかの趣味も無いし…アタシにとっては、見慣れた風景だしね」

「ふーん」


 学校の廊下よりも広い気がする廊下を歩きながら、他愛もない会話を交わすワタシたち。そうしてやって来たのは、2階の角部屋…彼女の父親の部屋の前。昌香曰く、会社にある社長室はこの間の感染症騒ぎの時に綺麗サッパリ整理して、今ではこの部屋が仕事部屋なのだとか。


「さ、入って」


 ワタシの前に出た昌香が、先行して部屋の扉のノブを回す。昔の建物らしい、少々きしんだ音と共に開かれた扉の向こう…ワタシはそこに現れた光景を見て、思わず苦笑いを浮かべてしまった。


「この有様だし、ガサツだから。好きに触ってくれて構わないわ」

「これはこれは…」


 小綺麗に整理整頓された、センスある洋風屋敷だと思っていたのだが…目に入ってきた仕事部屋の様子は酷い有様だ。書類の山に本の山…埃被ったファイルがそこかしこに散らばっており、人一人が歩けるかどうかも分からぬ床を辿って、ようやく部屋の奥のデスクに行ける…といった感じ。


「雪崩とか起きちゃいそうなんだけど」

「仕方がないわ。しょっちゅうだもの」

「なら、遠慮なく…」


 部屋の前で暫し圧されていたワタシは、意を決して部屋の中へ…見た目ほど埃っぽくもない、人の生の香りが強く残る部屋の中に入って辺りを見回すが、どこから手を付けたらいいものだろうか。


「昌香。今一度、お父さんの会社とか…その辺について知っている事。話してくれない?」


 書類の山を適当に探りながら、部屋の奥の…デスクの椅子に座った昌香に声をかけた。


「ミタカグループになってからしか知らないわ。お母さんがアタシを産んだのは40代に入ってからだから。その前の事は、武勇伝みたいな感じでしか…」

「それもそっか。じゃ…言い方はアレだけど、落ち着いてからしか知らないと」

「そうね。今も押しは強い方だと思うけど…紳士淑女ってフリは出来てると思うの」

「手厳しい。フリって…この間見たときは、とても過去が荒れてたなんて思わなかったよ」


 ガサゴソと山をかき分けながら会話を弾ませていく。


「そこそこ大きなグループの会長様だからね。人付き合いは嫌でも上流になるでしょ?」

「えぇ」

「そこで大分矯正されたみたい。お父さんが言ってた。金持ちはどいつもそんなんだって」

「社交界で…か。金持ちって言っても、桁が文字通り違うよね」

「まぁ…で、昔の話…か」


 会話しつつ、昌香は彼女の父親の過去を思い出そうとしてくれている。ワタシの方と言えば、何も分からぬ資料の山を見ては、脳の回路をショートさせることしか出来ていなかった。


「所謂、暴走族だったみたいよ。総長だったって」


 昌香がポツリとそう呟いた刹那。山の中からアルバムの様なモノが見つかり…中を開けば、彼女の言葉通りな恰好をした父親…三鷹正義の写真が見つかる。センスの理解できない改造が施されたバイクに腰かけてキメポーズを取ってる姿。そして、その写真には、この間も見かけたような気がする女の姿もあった。


「1988年6月10日…30年以上前なら、時代錯誤でもないのかな」

「何かあったの?」

「いや、ちょうど…暴走族時代の姿がね。もしかしてだけど、お母さんも仲間だったり?」

「レディースって言ってたっけか。よくわからないけど」

「仲間だ」

「え?嘘、見せて見せて!」


 彼女の反応から察するに、話だけで見たこともないのだろう。父親とて、年頃の子供にこんな姿を見せたいと思わないはず。ワタシは駆け寄ってきた昌香の姿を見てそんなことを他人事の様に思っていると、ワタシのところまでやって来た昌香がアルバムの中を見て、そして、クスッと噴き出した。


「お父さんとお母さんだ。こんなんだったんだ…レディースって、そういう意味なのね」

「まぁ、女暴走族みたいなものだと思うけど…」


 若気の至りが発掘された今。若干緩んだ空気になったとはいえ…どことない緊張の糸は切れぬまま。ワタシからアルバムを取り上げた彼女がページを捲ると、次から次に三鷹正義の過去の姿があらわになっていく。


「こういう感じなら…白であってほしいけど…でも、聞いてる話はどす黒いものばかりなのよ」


お読み頂きありがとうございます!

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よろしくお願いします_(._.)_

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