16 説明できない?
「逃げよう。いつ犯人が戻ってくるかもわからない。」
実を言えば俺はもう少しこうしていたかったが、せっかくここまで脱出できたのに、ここで犯人に見つかったら元も子もない。
「どっちへ?」
涼子も顔を上げて俺を見た。
「坂道を下る方へ行こう。たぶんそっちに町がある。」
俺たちは坂を下る方向に、ひび割れて所々草の生えたアスファルトの道を進んだ。
「途中、車の音が聞こえたら藪の中に隠れるぞ。」
助けを求めたらそれが犯人の車だった、なんてことになったら洒落にならない。
とにかく町に出るまでは、誰にも見つからない方がいい。
やがて予測したとおり、木々の隙間から眼下に町並みが見えるところに出た。
「よし。走ろう。民家があったら、とにかくそこに飛び込んで助けを求めよう。」
俺と涼子は手をつないで下り坂を駆け出した。
最初に見つけた民家は留守のようだった。
中からテレビの音が聞こえるが、インターホンを押しても全く返事がない。
玄関の引き戸に手を掛けると、からっと開いた。
「ごめんくださーい。誰かいませんかぁ?」
テレビの音しか聞こえない。テレビがつけてあるのは「留守ではない」という用心のつもりなのかもしれない。
「不用心だな。」
田舎のお年寄りはこんなもんなのかも、と思いながら門を出ると、そこに人がいた。
お巡りさんだった。
助かった!
「あー、君たち。ここで何をしてるのかな? ちょっとポケットの中を見せてくれるかな?」
職務質問?
ちょ・・・ちょっと待て。
ポケットの中には・・・・。
「見せられないようなものかね?」
お巡りさんの目が鋭くなる。
いや・・・これは・・・・
どう説明したら・・・?
「お兄ちゃん見せて! それ、あたしのですから!」
後ろで涼子の声がした。
俺はそろそろと、ポケットの中身を引きずり出す。
ブラジャーとパンティ・・・。(°◇°;)
お巡りさんが、それと涼子をかわるがわる見る。
そして、目を泳がせた。
見つけたんだろう。
涼子のTシャツの胸のところのツンツン。
「き・・・君たち、年は・・・?」
別の想像をしたらしい。
「19歳と18歳ですけど、何か? それより、あたしたち誘拐犯から逃げてきたんです! 助けてください。」
「逃げてきた? 誘拐犯?」
再びお巡りさんは、引き締まった職業顔になった。




