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5-24 新しい情報

 俺達は午前中にグラヴァスへと飛ぶことにした。もう山崎も警戒しながらの飛行は慣れたもので、今日は池田が助手席だ。


 俺も空中での感知探索の訓練をやっていた。今日は遊びに来た魔物はいなかった。助かったぜ、毎回襲撃されていたんじゃ、身が持たない。


 グラヴァス邸に向かい、降下していくと、エルシアちゃんが出てきて手を振っている。執事達も手馴れたもので、俺達が置いていった赤い誘導灯のスティックで誘導してくれた。白い石でHマークを刻んでくれてあり、山崎も着陸が楽だ。


『皆様、お帰りなさいませ』

「ただいま、ロンソン」


 俺は若い執事君に挨拶した。彼は風俗案内係だからな。土産は絶対忘れないぜ。落ち着いたら、また行きたいな。


「おかえりー、ハジメ。御土産は~?」

 今日は可愛い赤いミニスカを履いたエルシアちゃんが出迎えてくれた。かなり日本語が上達している。

教材だけの学習で、たいしたものだ。俺なら絶対に無理だ。


「ああ、いっぱいあるよー。辺境伯は?」

「中にいるよ。今日はお客様なの」


「客?」

 ヘリの事を色々突っ込まれてそうだな。おかしな具合にならなければいいが。


 中へ行くと、お客様のいるところへ直接通された。

『おお、ハジメ戻ったか』


「そちらの方は?」

 グレーの髪と髭を持つ、深い皺を刻んだ紳士が辺境伯の対面にいた。鋭い目つきではあるが、酷薄そうな感じは受けない。むしろ、穏やかといっていい光を湛えていた。


『うむ。王都の邪神問題を担当しておる、ジェイニー侯爵だ。丁度よいので、話を聞いていくがいい』

「ありがとうございます。すぐとんぼ帰りで帰らねばなりませんが。王都にも足を伸ばす予定でして。明日は、マテリス大陸のエルスカイム王国まで行ってこないとなりませんで」


『またせわしないのう。ジェイニー卿、これが話に出ておったハジメじゃ』

 そう紹介されると、ジェイニー侯爵はゆっくりとソファから腰を上げると、俺に握手を求めてきた。


『やあ、初めまして。あなたが選ばれし者という事ですかな』

「ここでも、そう言われるのですね」


『ほう。他にはどこで?』

 やや鋭い顔付きになり、訊ねてくる。


「エルスカイム王国首都アレイラ、そこのフォルニック大神殿で。そこで話を聞いたところ、我が国の国民が生贄として拉致される可能性が出ておりまして。もう儀式というのは、かなりやられてしまっているのでしょうか?」


 辺境伯はやや難しい顔をして考え込んだ。

『それはなんとも言えないが。それは君達の国の女性が、黒髪黒目が多いという事かな』


 侯爵は俺達の姿を見ながら訊いてくる。

「基本的に、私達の国は全員がそうです」


『それは、なんとまあ。生贄の儀式自体はかなり前からやられておるし、確かに黒髪黒目は狙われやすいが、その犠牲者が君達の国の者かどうかまでは、な』


 うーん、写真とかないから、いちいち犠牲者の記録はとってないだろうなあ。なんとも情報が得にくい世界だ。


 とりあえず、ここにもパンフを大量に置かせてもらうことにした。

「他に、何か儀式とか、それをやっている連中の情報とかありませんか?」


『そうさな。今までに押さえたものでは、ダンジョンを中心として、地上の東西南北の線上に儀式の場所を作るケースが多いね。その方角の大通りに沿った場所という事だが』


「そ、それはまた、あまりにも漠然としていますね……」

 俺は、この街の広さに眩暈がした。ここはまだいいとして、アレイラに至っては世界最大級のでかさである。地球では考えられない規模で、こんな巨大城塞都市を作っているのだ。どうするよ、あれ。


『うむ。他にも、ダンジョンの中でやっていたケースもあり、その他の場合もある。一概には言えないのだよ。当局の目を逃れようとする動きもあって、なかなか。

 儀式を行なっている連中も、まあ色々でな。難儀しておる。国やダンジョン自治体も神経は尖らせておるのだが。各地で起きている襲撃事件も、いろんな絡みがあって、簡単には片付かぬ』


 訳ありで、最初から迷宮入りになるものもあるんだろうな。

「そうですか。情報ありがとうございます。また何かありましたら、ゴルディス家まで御知らせいただけると幸いです」


『うむ。まあ、気を落とさないように。しかし、選ばれし者か。世界を越えし者、伝説の中の住人だな。そんな者が現実に現れるとは。問題の根が深いという事を意味する。頭が痛いことになったものだ』


 あ、ここでも言われた。でも、まだ好意的に扱ってもらえるだけいいのかな。

 それから、御土産や日本の食材などを渡し、今回持ち込んだ交易品を渡して、頼んでおいた品物を受け取り、差額はお金で受け取った。


「これから、どうするの?」

「一応、王都でも協力を要請しにいく予定だよ」

 エルシアちゃんが、ちょっと一緒に行きたそうな素振りをしていたが、言い出さなかった。


「今回はファルクットを見に行く予定は無いから、また今度ね。それと辺境伯がいいって、言ってくれたらだ」

「はーい」


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