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パーティ

「パーティ?」


「ああ。スーザンの婚約披露パーティ。君も招待されてるだろ?」



エドワードの言葉に、クリスティーナは読んでいた本を脇に置いて首を振った。



「エドワード、私はそんな気には・・・」



エドワードはクリスティーナの言葉を遮って言った。



「いつまで隠れているつもりだい?」



「私は・・・・」



「隠れているわけではないとでも?いや、実際君はあの日からどこへも行こうとしなければ

 誰とも会おうとしないじゃないか。」



「貴方に迷惑をかけて、申し訳ないと思っているわ」



「僕がそんなことを言ってるんじゃないことは分かってるだろ?」




もちろん分かっている。

エドワードが私のことを心配して、自分を取り戻すように励まそうとしてくれていることは。

それでも、怖かった。レイフに会うことが。会った時の自分の反応が。

そして、クレランス邸にいることを知っているはずの彼が、自分を連れ戻そうとしないばかりか

連絡のひとつも寄越さないことに、クリスティーナは傷ついていた。





「今夜のパーティは、本当に仲のいい友人だけを招くという話だ。」



クリスティーナを安心させるように説明した後、エドワードが茶目っ気たっぷりに言った。



「プリンセスをエスコートする栄誉を与えてはいただけませんか?」


エドワードに差し出された手に自分の手を重ねると

クリスティーナはクレランス邸に来て初めてニッコリと微笑んだ。



「喜んでご一緒させて頂きますわ、私の王子様」












「まぁ、来てくれたのね、クリスティーナ!エドワードも!」


「君の大事な日に、僕たちが来ないとでも思ったのかい?」


エドワードの言葉に微笑むと、パーティの主賓であるスーザンが二人の腕を取り

先に来ていた客に声をかけた。



「さあ、ようやく皆さんのお待ちかねのカップルがいらっしゃったわよ」


そして、クリスティーナに耳打ちをする。




「ねぇ、あなたたちも一緒に婚約発表してしまいましょうよ」



「私は・・・・・」



クリスティーナの結婚は、当然のことながらまだ誰にも知られていなかった。

口篭る彼女に、エドワードが助け舟を出す。



「スーザン、今日は一段と綺麗だ。」頬にキスをした後、会場の奥に目をやって言った。


「君を手に入れた果報者に会わせてくれないのかい?」



「あら、私ったら。ごめんなさい。ウィリアムを紹介するわね」










気の置けない仲間たちとの楽しい会話、美味しい食事

それらがクリスティーナの傷ついた心を、少しずつ解して行った。

久々に心から笑い、その場を楽しいとまで思えるようになっていた。

「彼女」が登場するまでは。





「クリスティーナ、久しぶりだね」


「アラン!いったいどこへ行っていたの?」


「それはこちらの台詞だよ」



スーザンの従兄弟であるアランに笑顔を向けたクリスティーナは

彼の連れの女性を見て顔色を失った。


それには気づかずに、アランが連れの女性にも聞こえるように

クリスティーナに耳打ちをした。



「彼女、美人だろ?君に相手にしてもらえない傷心の僕を

 慰めてくれてるんだ」



「アランはちゃんと紹介してくれそうにないので

 自己紹介させて頂きますわね。


 ライサ・サファヴィと申します。」


ライサはにこやかに微笑むと、クリスティーナの顔を覗きこむようにして言った。



「お顔の色が悪いようですが、どうかなさいまして?」


「ええ、いえ・・・なんでもありませんわ」



ライサの言葉に、アランも彼女の尋常でない様子に気づいたようだった。



「なんでもないという顔色じゃないよ。体調でも悪いのかい?」



ライサの赤い唇を目にしたクリスティーナの脳裏に

あの日のライサとレイフの姿がまざまざと蘇った。




「少し疲れたのかしら・・・ごめんなさい、失礼させていただくわね」




なんと思われようと構わない。

二人の返事も聞かず、彼女は逃げるようにその場を後にした。





「クリスティーナ!どうしたんだい?」



部屋を出ようとしていたクリスティーナに、彼女の様子を絶えず気にしていた

エドワードが声をかけた。



「お願い、エドワード。もう帰りたいの・・・」



彼女の様子に、今は何も聞かないほうがいいと思ったのだろう。

エドワードは軽く頷くと、主賓に挨拶を済ませ

クリスティーナをその場から連れ出してくれた。





その様子を、ライサがじっと見つめていたことに

二人は少しも気づいてはいなかった。





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