表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Wood Chip Bullet  作者: kattern@GCN文庫さまより5/20新刊発売
Episode.2 The myth of AK
11/29

第1話 二十年前

 1997年9月17日、午前6時のことである。

 日本に到達した当時唯一のハリケーン――平成9年台風19号は、北陸地方で温帯気圧に変わった。


 この折、ウラジオストクより伏木港へと向かう大型貨物輸送船の一隻が、ハリケーンの影響を避けるために、通常の航路を離れて避難した。

 船は約六時間の遅延の後に、伏木港へと入港した――だが、この際にちょっとした問題が発生した。


 ロシア側から運んできたコンテナのいくつかが、ハリケーンの影響を受けて日本海へと落下。伏木港沖より五十海里の位置へと沈んだのだ。


 当時、この問題にあたったのは、海上保安庁海洋情報部技術国際課ロシア方面担当渉外官と、ロシアに強いコネクションを持つ与党衆議院議員だった。


 彼らは、日本海に沈んだコンテナの《《中身が空》》であったことをいいことに、日本海沿岸の詳細な海図を要求するロシア側の渉外官、および、金銭的な補償を求めるコンテナの所有者を黙らせて、その事故を強引に解決した。


 90年代の出来事ということ以外に、特筆することなど別にない。

 よくある政治的なやりとり――その一幕である。


 しかしながら、海底に沈んだそのコンテナをめぐり、二十年後。

 思いもよらない騒動が起こることになるのを、この事故の当事者たちは知らない。


 少なくとも日本側は。


 臭いものには蓋をしろ。

 しかし、むせかえるような《《金と硝煙》》の匂いは、蓋をしたところで漏れ出てくるものなのだ。


「……と、俺は今回の事件をしめくくろうと思うのだが。どうだろうか」


 事件の全容について知らないのに、どうだろうかも何もないか。

 とにかく、まずは、聞いてほしい。


 この俺が巻き込まれた、八月のちょっと早い台風のような事件について。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ