05.転生
幸いにも一度作業すると”熟成・発酵”という風魔法と光魔法、影魔法、水魔法、火の魔法の複合短縮が出来上がり、これは多様できた。
なにより大きいのは、魚を大量に用意して”鰹節生成”とインプットすれば工程が秒でカットされるという方法が出来たことだろう。
一度は手作業しないといけない、かつ必要とされる加護を全部持っていないと出来ない大前提だけど。
ただ、鰹節も命名して認定されたのはいいが、同じことを誰がやって普及するのかという最大の問題。
仕方がないので、昆布だしと煮干し、品種改良と命名によるしいたけ――普及しやすいのはまだしもこれしかない。
動物性の旨味だしのほうは、コラーゲンや旨味が多い肉部位を臭み消しをしながら旨味と栄養の抽出・凝固という魔法の反則。
鶏の魔物からはコンソメ。牛、豚系の魔物からブイヨンを、固形と乾燥・粉末化した。
この辺から、完全にオレの魔法への関心と意欲は料理に極振りしだした気がする。
ブイヨンなどは、ローリエと一緒に骨を煮込んでいるだけでも出来るから普及は早かった。
うまいものへの探究心は、どの世界でも共通だ。
固形ブイヨン数個と、適した部位と煮込み時間を組合に持ち込ませ――変装したエルが比較的大きな村を回った――二週間もせずに田舎のアシャラ村にもレシピが聞こえたのは早かったと思う。
その間にも、隠れ家のあるミスパル森林では光魔法の”聖光結界”と、水魔法での”瘴気浄化”、土魔法で”土壌改良”によって水田と畑が拡大していた。
品種改良と命名がもはやセット作業になりつつ、大豆と小麦、ライ麦、大麦と米が”時間加速”で収穫・各地販売していたのだった。
いたる所の食べ物の名前が上書きされて、市場をだいぶ騒がせた。
木の加護主はこの辺から鑑定仕事に駆り出されまくったので、加護の中ではややハズレとして侮られていた人たちは人気者になっていたようだ。
何しろ、人に上げっぱなしで終わる父さんが貰い物して帰宅していた。
考えるのはオレで、実動はエルだから悪いなとは思っている。影魔法で”分身”スキルを生み出していないと、元守護霊を社畜にするところだった。
だけど、消費する魔力も共有しているから、オレも見えないところでは負担していた……はずだ。
みりんと酢が欲しかったオレは、3歳+前世年齢で酒の製造を考えた。
作業したのはやはりエルだ。子守は迷子防止に母さんがやっていたとはいえ、日中も夜も不在がちにしては突然食べ物を持ってくるエルヴェシウスは不審者過ぎる。
そんなエルを、何の疑いもなく「遠出していた」と理解する両親。伊達に自分が迷子王をやっているせいで、ジャッジは甘かった。
大麦の発芽から麦芽。鉱山で製鉄を確保していたので、簡単な入れ物として制作した糖化槽に、温水と破砕した麦芽を投入。
麦芽のデンプン質を糖に”分解・糖化”の魔法短縮。麦汁にホップを加えて”発酵・熟成”からの貯蔵タンクで熟成、タンパク質の濾過で樽に詰めたらビールの完成だ。
下面発酵と、上面発酵に分類したのは、前世でも未成年に終わったオレのこだわりすぎかもしれない。
大麦で”醸造生成”でビール。”蒸留生成”でウイスキーを。
ぶどう――これも品種改良済み――”醸造生成”でワイン。”蒸留生成”でブランデー。
純米大吟醸酒には、やや手間が取られた。蒸米・麹・仕込み水・酒母という面倒に、”時間加速”からのもろみづくり。
上槽から、濾過と火入れ。貯蔵と加水を経てやっと瓶詰めだった。
土の加護と火の加護で既にガラス商品は流通していたから、精々ガラスを品種改良と名前上書きしたぐらいだ。
もろみは清酒と酒粕に分かれたので、念願の味噌作りの為に当然、保管収納する。
この辺でやめておけばよかったのに、結果として止まらないのがオレだ。
絶対あとで書き直し作業があるぞ、私。




