65.パン屋さんとコスメ
やっぱり欲しいですよね。シャンプーとかトリートメント。
さて、水晶で解った事は「聖女に勝てるようにしてくれ」と勇者が望んだという事だ。でなければ、3日間のレベル上げで少しでも優位に立つ事なんてできない。なので、ギリギリまで対策はとっても意味がないという事になる。
2ヶ月たつ前にもう一度水晶で時期を確認しようと思うが、それまではやる事がない。
丁度いいので、リシュのパン屋さん計画を進めつつ、私の手作りポーションを売ることにする。
どうやら錬金レベルの所為で普通に売られているポーションよりもかなり効果が高いようなのだ。
先の戦いで、勇者の腹を半分斬ってしまった時も、あれが普通のポーションなら助かっていないだろうと思う。
超ヒールポーションは売らない。茸が安定供給出来ないからだ。あれは私が同行出来ない時の他の面子のパーティーに渡すのが精々だ。
そこらに材料の生えているヒールポーションを、私が錬金する事で、高級ヒールポーションとして売り込もう。
実際に偶に売られているのを見かける高級ヒールポーションより質がいいくらいだ。問題ないだろう。
さて、学園から帰った私はパン屋の建築具合を見に行く。親方が言うにはあと1週間で竣工だという。商業ギルドに行き、鑑定をしながら料理レベルの高い料理人を3名、販売員は誠実、という文言があったりスキルになっている者を5名雇用する。料理人の方は、1週間の間に、うちの館で少しパンを作る技術を学んでもらう。
あとは鍛冶屋に行き、武具ではないけど、魔道オーブンを作って欲しいと相談する。今建築中のパン屋に入ってもらい、どの位の大きさで、どのくらい火力が必要なのかを聞かれる。大きさは、建築との兼ね合いがあるので、なるべく大きくて一気に焼けないと困るのもあったが、それなら2つ合ったほうがいいと忠告される。必要な温度の違うパンや、時間差で片方が使えない時にももう片方が空いていれば便利だろう、との事だ。温度に関してはリシュを呼んで、必要な温度を聞き出して鍛冶屋に伝えた。建築屋には申し訳ないが、少し仕様変更をお願いしたいと言い、2つ分の巨大オーブンが入るように隙間をもう少し広げて貰った。
料理人を雇ったので、パンの作り方を家で教えて欲しいとお願いすると、リシュは遠いところを見るような目で承諾してくれる。これからは少し、晩餐前の修練が出来ないかも知れないと伝えると、「当然でしょう~?」と言いたげな目で見られた。うん、すまん!
私は私で、街を出てすぐの所にある森で、黒曜に手伝って貰ってヒールポーションの材料の薬草を摘むのに大忙しだ。黒曜は記憶力がいい。一旦これ、と薬草を見せると、間違いなく薬草を選んで摘んでくれる。途中でフォレストイヴィルタイガーが襲ってきたが、首を落としてさくっと終わった。アイテムボックスに死骸を詰めておく。大量の薬草を持って、家に帰ると錬金だ。まずは聖水を作る。魔法で出した水に神聖魔法で丁寧に。
「神聖なるものよ、この水に祝福を与えたまえ」
本当は光魔法や聖魔法でも作れるんだけど、神聖魔法でやった方が段違いに性能が良い。そうか。普通の聖水は皆教会の儀式で祭壇に並べて聖水にしてるんだったか。でも普通にそこらで売られてるヒールポーションはただの水で作っているようだけど。教会がめついからね。コストに見合わないんだろう。
さて、あとは聖水と薬草を釜に入れて練成だ。黒曜はやり方をじっと眺めていたが、自分でも聖水と薬草を手に取って、同じように錬成する。出来上がった品を見せてもらったが、私の作る物とほぼ大差ない。これなら売れる、と黒曜に言うと、嬉しそうに黒曜が微笑んだ。卸す先は冒険者ギルドだ。中抜きをされてしまうので高くなってしまうだろうけど、この1品だけの為に店舗を構えるのはなんか違う気がした。
そのうちシャンプーやリンス、石鹸や化粧品などの作り方をアザゼルのカフスに訊いて作ったら店舗を構えようと思う。高級ポーションだけ浮きそうな気がするがそこは御愛嬌だ。ついでに日持ちのする簡易食料なんかも一緒に置いたらそこまで悪目立ちしないだろう…え?食料が一番悪目立ちするって?まあその辺はおいおいやっていこう。一応先に軍部にも知らせておく。
するとポーションを根こそぎ欲しがるので、半分だけ!と牽制して高級ポーションを売った。以前見かけた高級ポーションと同じ額にしておいた。一般冒険者の手に渡るようにしたいので、ギルドにも卸しに行く。
ギルド受付嬢と何故かバトルになったが、無事軍部と同じ額で買取して貰う事になった。やっぱり、これ以上ゴネたら商品全部軍部に卸す、と言ったのが決め手だったようだ。ははは勝利だね!
さて、晩餐まで少し時間がある。シャンプー、どうやって作るんだろう。
アザゼルのカフスをつけてシャンプーの作り方、と念じる。
●シャンプー
まず庭の椿から、植物性油脂を取ってアルコールで界面活性剤を作る。
別の釜で削った木片からセルロースポリマー、牛乳からプロテイン、柑橘系からクエン酸が出来上がる。
クエン酸以外の材料を混ぜいれ、聖水を入れる。しっかり混ざったら、カフスさんの合図があるまでクエン酸を足すと、シャンプーが出来上がった。
どうせなら匂いも良い物にしたかったので、空いた釜にクリーンを掛けて庭に咲いてたバラの花をたっぷり入れて錬金、バラの製油が出来る。 製油をシャンプーに混ぜると確りとバラの香りがするシャンプーになった。釜にイッパイに作ってしまったのでかなり量がある。
ガラス瓶に小分けして詰める。ガラス瓶が足りなくなりそうだ、と思ったら、大量のガラス瓶を買ってきてくれた黒曜が手渡してくれる。なんつう出来た婿さんだ…。一旦家族の反応を見てみよう。評判がよければ、王家にも1本献上しよう。
晩餐時に、全員に一本づつシャンプーを渡す。感想聞かせて欲しい、と言うとその晩にすぐ使ってくれたらしく、物凄く褒められた。アディとリシュにはトリートメントは!?と訊かれた。もう遅い時間なので、トリートメントは明日、と言うとがっくり肩を落す。まあ、シャンプーとトリートメントはセットみたいなもんだからなあ。
椿と薔薇は大急ぎで作付け面積を広げて貰えるらしい。
さて、早朝の訓練は石鹸作りだ。シャンプーをバラの香りにしたのでお揃いにしたい。
カフスさん頼みます
●石鹸(危ないので実際に真似しないで下さい)
まずは木炭を釜に入れ、錬金する。苛性ソーダが出来上がる。危険物らしい。気をつけよう。
聖水に苛性ソーダをちょっとづつ入れて混ぜる。なんか熱くなってきたけどこれでいいのか??
植物性油脂を苛性ソーダ水と同じ温度に暖める。ヒートの魔法で同じくらいに暖めた。
暖めた油脂に苛性ソーダ水をちょっとづつ入れる。入れた後は錬金で一気に混ぜ合わせた状態に持っていく。
バラの花から絞った花汁と製油を混ぜる。いい匂いがして、薄っすらピンク色になった。
これを型に入れ…型!?慌てて鍛冶屋に駆け込み、急ぎ仕事でその場で石鹸の型を何枚も作って貰う。謝りながらも急いで家に戻った。
型を全てクリーンで清め、出来た石鹸のどろどろしたのを注いでいく。多めに注文したと思ったのに、型が全部埋まった。足りて良かった。トントンと叩いて空気抜きをしたら温度を魔法で保ったまま、時空魔法で24時間経過。後は保温を解いて、1ヶ月時空魔法で短縮し、乾燥させる。ピンク色のいい匂いの石鹸が出来た。
朝食時、全員に石鹸を配ってみる。アディとリシュは「嬉しいけど先にトリートメントが欲しかった…!」と嘆いたが、仕方ない。入れ物をシャンプーとは別のものにしないと見分けが付かないかも知れないし、そんなガラス瓶、うちになかった。入れ物の買出しを、放課後に黒曜と行って来るから夜まで待って欲しいとお願いする。渋々了承してくれた。
いや、渋々ってなんでだよ。私だって今から学園行くよ!?
学園に行くと、クラスのムードはかなり良くなっており、問題があるとすればマルクス様派とロッソ様派くらいなものだろうか。おはようの挨拶もそこそこに、マルクスとロッソが話しかけてくる。私の頭上を通り越してバチバチと火花が散っている気がする。なんでそんなに仲が悪いのか…。黒曜の肩に頭を乗せて甘えていると、火花はしゅんと消えた。なんとも言えない顔で私を見る。なんだ。何か言いたいのか。言えばいいのに。
「今度錬金したもので、店でも開こうかなって考えてるんだけど、どんな店がいいかな」
話題を振ると、あーでもない、こーでもない、と意見が出始める。少し高級品として売る心算だから、カントリー風な雰囲気は却下で、黒か紫をポイントカラーにした店がいいんじゃないかという意見で纏まる。高級品だからパカパカ売れるとは考えてない。
売り子は2人くらいでいいか、と言うと、アディとリシュから猛反発を受けた。最低4人は必要、と言われて勢いに押されるまま頷く。店舗は今日の帰りに見てこよう。あと、高級路線にするならガラス容器から合わせた方が良いなと思い立って、石英の買出しをする事にした。
昼食時でも話は進み、やはり店舗の中が見えるよう、大きなガラス張りの見栄えがする店内にする案になり、私は防弾ガラスにする事を誓う。絶対盗みに入るヤツが出る…。あ、シャッターを作ってもらおう。鍛冶屋に依頼だ。石鹸の型もRosaというシリーズ名を彫ってもらおう、ガラス容器の方にも入れることにする。
片方は色つきにしたいので、薄いグレーの容器になるように染料屋にも寄る事にした。
色々と楽しそうに考えている私を見る黒曜も楽しそうだ。ポーション作り任せてもいい?
放課後、先ずは石材屋で石英を1t程買って見た。どれくらい必要か解らなかったし、余ったら余ったで、家の食器なんかを作ってもいい。次に染料屋で、水に溶けない染料を100キロ程買う。うーん匙加減が良く解らない。まあいいや。そして鍛冶屋に寄って、石鹸の型を100枚、全てRosaの銘入りになるようにお願いして、シャッターの話をする。面白がってくれた鍛冶屋は、建築屋と話をしたいから先にそっちを手配するように言ってきた。了解である。
商業ギルドでまずは販売員を4人雇い、店舗用の空いた場所を探していると、丁度リシュのパン屋の隣が潰れて空くという。其処を買った。現地を見ると、意外とそのまま使えそうな部分が多い。クリーンを掛けると一気に汚れが消え、真っ白な壁紙に黒でアクセントにしてある少し高級感のある内装だった。入り口部分だけ潰して建てかえる事に決め、建築屋に寄った。既に建っている店の、入り口部分の改装がしたいと相談する。防弾ガラスは明日持ち込む予定で、そのガラスの枠になるよう立て替えて欲しいとお願いする。勿論ドアも防弾ガラス製に木目の取っ手がついたものにする予定だ。シャッターに関しては、鍛冶屋を呼んでどう設置するかを一緒に考えてもらう。店の両脇に黒い金属製の枠を取って、シャッターは黒に白文字でRosaと刻印、シャッター上を少し広めに開けて巻き取り式で設置して貰う事になった。
家に帰って早速防弾ガラスを作ろうとして躓いた。有機接着剤の材料が解らないのだ。カフスに向かってうんうん唸っても出てこない。化学式だけは出て来るがなんの事やら解らない。錬金の水、と呼ばれる大体の錬金に使われる溶液だけを満たし、必至で化学式を念じてみた。ダメ元だったが出来た…!有機接着剤!逆にこの方法だと、化学式が解ってないと作れないらしい。
カフスさんありがとう!後は石英から強化ガラス2枚を作り、有機接着剤で二枚を合成する。店舗の全面をほぼ覆うようなガラスの為、非常に大きい。出来た端からアイテムボックスに入れながらの面倒な作業になった。ドアも同じように作る。取っ手は黒に着色した。
プラスチックはまた原料が解らない…化学式で念じて錬金溶液から作った。
次は入れ物だ。石英を釜に詰め、割れて怪我をしないよう強化ガラスで作成、プラスチックも混ぜてポンプ式になるよう念じて作ったので手軽に扱って貰えるだろう。ついでに石鹸の容器も作る。
透明な方をシャンプー、薄灰色の方をトリートメントとしてRosaの刻印と一緒に銘打ったので、多分間違えないだろう。
黒曜は、ガラス容器に入れてあったシャンプーを透明なシャンプーのポンプに詰め替えしてくれる。なんという婿力。
さて、ここからがトリートメントの作成だ。此処でこけたら今までの努力が報われない。
素材の殆どが謎だ。化学式が並んでいる状態だ。
最初に思った、凄く面倒そうだという感想の通り、本当に面倒なもののようだ。
●トリートメント
錬金溶液から6つの材料を化学式で錬金し、グリセリン、油性成分を用意する。
2種類を除いて斑なく綺麗になるよう攪拌する。70~80℃になるまでそれを加熱。
ジメチコンを入れてもう一度錬金でしっかり攪拌する。
非イオン界面活性剤、暖めた聖水を加え、錬金で斑なく乳化するまでしつこく攪拌する。
後はバラの製油を混ぜる。
うはあ…トリートメントまじで面倒…ちょっと値段上げよう。
ぐったりした私の横で、黒曜がトリートメントを薄灰色の容器に詰めてくれる。ありがとう…ちょっと暫く休みたい…。
休んでいる途中に鍛冶屋がやってきて、出来上がった石鹸の型を置いて行ってくれた。ありがとう…うん、頑張る…
半分死んだ目で石鹸を作る。バラがそろそろ切れそうだ。作り終わったら、石鹸用に作ったガラス容器に一個づつ詰めていく。
売り物として、シャンプー500、トリートメント500、石鹸1000個が出来上がった。お試し品の家族に配る分は別に取ってある。
あーなんか思い浮かぶ、アディやリシュに化粧水やらクリームやら化粧品を要求される自分が。
でも軌道にのるまではこの3つしか作らない!!しんどすぎる!!
少し遅くなった晩餐に、トリートメントを全員に配る。使い方を説明しておく。アディとリシュは大喜びだ。苦労して作った甲斐があった…。ちょっと錬金釜が4つじゃ足りないので大型のものをあと5個買ってこよう…。
次の日は休みだったが、改築の為に入り口を取り壊す現場に赴き、防弾ガラス製のウィンドウと扉(2重鍵付き)を渡す。それで凡その建築部分は目処がついたようで1週間以内に店舗は改築出来るようだ。鍛冶屋の親父もシャッターを持参し、建築屋と打ち合わせをしている。コンマミリ単位で合わせないと上手く閉じたり出来ないそうで、その辺りはプロにお任せする。
その後は、シャンプー、トリートメント、石鹸。この3つを見栄えするように包装し、王家へ出向き、王妃に献上した。
その夜、ケイタイが掛かってきてこれはいつから販売するのかと問い合わせを受けた。約1週間後です、と返事をすると、友人に勧めるので是非売ってくれという。お店の場所を教えておいた。
さて、一週間後に開店するが、どんなものかな。クチコミが広がるまでは余り売れないと踏んでいるけどどうだろうか。
マリーさんは抵抗空しく化粧品を作らされる事になると思いますw女性は美に貪欲です。
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シャンプーやトリートメント、石鹸の作り方はこれでも精一杯なのでツッコまないで下さい…(´;ω;`)




