act.81 お悩みモニカちゃん⑤
ヴィクトリアに相談したいことは、ずばりイグナールとの関係性についてである。今日会ったばかりの彼女にこんな重要な事を相談してもいいものだろうか。いや、今日会って数日後には分かれる事が分かっているからこそいいのだ。
「ねぇ、ヴィクトリア……えっと……」
とは言っても、どう切り出したものだろうか。単純に恋愛相談としてでは欲する答えを得ることは出来ないだろう。何故なら彼女には同年代の友人がいない。つまり、同年代の男性との恋愛経験はないと予測が出来るからだ。
それにヴィクトリアの性格――今日見ただけの第一印象――なら、思いをぶつけてしまえ、当たって砕けろ、押し倒してしまえと言われてお終いかもしれない。モニカが求めているのは彼女のその妖艶さ、男女共に魅了する魅力の秘密である。
勇者ディルクと魔界に行けなかったイグナールの当面の目標は単純に強くなること、だからこそ己に宿った力の解明に現在奔走している。モニカのアピールが躱されたのは、そればかりに夢中で色恋などにかまけている暇はないと考えているのだろうと予測をしていた。
だが、イグナールがヴィクトリアを見る視線はちゃんと年相応の男子そのものだった。このことから、モニカとしては業腹であるがきっと自分自身に色気が足りないだけなのではと考えが至る。
だからと言って不躾に、何を食べたらそんな体になれるの? とか、何をしたらそんな色気が出せるようになるの? などとはさすがに聞けない。
「先程からなんじゃモニカ。遠慮せず言いたいことがあれば好きに言えばよいぞ?」
先程……それだ!
彼女の下着姿に目を奪われ、当初にあった目的を見失っていた。
「ヴィクトリアの魔法で土の壁を作ってくれない? そして、よかったら一緒に水浴びをしましょう?」
裸の付き合い、少しばかり彼女よりも貧相な体を見せるのは恥ずかしいが、これがヴィクトリアの魅力に近づくには最も手っ取り早い方法かもしれない。
ヴィクトリアはこの提案を快諾してくれた。そうして土塊の小屋から出ると、木にもたれ掛かり眠るイグナールが見える。彼の事だ、覗きなどと言う不貞を働くとは考えられない。それにヴィクトリアの生み出したゴーレムのおかげで、久々にゆっくり眠れているのだ、そっとしておいてやろう。
火の番をしているマキナに事情を説明し、緊急事態やイグナールが起き二人を探すようであれば伝えてくれと頼んだ。
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