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act.80 お悩みモニカちゃん④


 突然泣き出したモニカを見て、心配そうな表情を浮かべ慌てふためく少年イグナール。だが、モニカにとってそれは逆効果だった。溢れる涙は収まることを知らなず、彼女はもうそれを止める努力をやめた。


 流れた涙だけ、自分の気持ちが綺麗になっていく。そんな気分になったから。そんな自分を見てオドオドしているイグナールを見るのも心地いい。散々人の気持ちをかき乱したのだ。


 ようやく涙が止まり、気持ちが落ち着いてきたモニカを見て彼は言った。


「大丈夫? モーニカちゃん」

「モニカ」

「え?」

「モニカって呼んでいいよ」


 もしも友人が出来たのならば、呼んでもらおうと思っていた愛称だった。


 今までハイデンライヒ家の当主になるためにただ、やらされるだけだった魔法の勉強と訓練。それはイグナールの出会いから変わる事になる。彼に褒めてもらいたい、ただ単純に「すごい」と言わせたい。


 そう思うだけで、魔法を学ぶことが、未知を学ぶことが楽しくなった。


 出会う度に新しく覚えた魔法を披露し、彼から「すごい!」の一言を貰う。それが彼女の原動力となったのだ。しかし、年々彼の言葉は元気をなくしていった。モニカの魔法をキラキラした瞳で楽しんでいたイグナールは過去のものとなっていった。


 そんなある日、バッハシュタイン家の元にケーニヒ王国から選ばれた勇者ディルクが訪れることになる。モニカ十四歳、イグナール十五歳の事であった。


 どういった経緯かは詳しく知らないが、イグナールが旅に出る事を知ったモニカは両親の反対を押し切り、家出同然で彼らに同行することになる。モニカを鑑みず、ハイデンライヒ家にしか興味のない両親の元にいるのが嫌だったのもある。


 イグナール自身は覚えていないかもしれないが、彼の一言に救われ、彼女の人生を明るく照らしたのは間違いない。そんな彼の助けになりたかったのもある。


 しかし、何よりもイグナールに会えなくなることがモニカにとって一番怖かったからだ。


 色のない子供時代を彩ってくれたイグナールに恩を返すために。身心共に成長し、気が付いた、気が付いてしまった確固たる気持ちのために……彼女の旅が始まることになった。


 そして、彼らと過ごした二年とイグナールと共に歩み出したここ数日。ヴィクトリアと出会った。女性から見ても素直に綺麗だと言える魅力溢れるヴィクトリア。


 かつての仲間、デボラよりも年が近いのもあるだろうが、そんな彼女とはまた違った大人の女性の魅力を持つヴィクトリアだからこそなのか、同年代の女子との会話を新鮮で楽しいと言ってくれたからなのか……


 モニカは彼女が抱えた大きな悩みを今日出会ったばかりのヴィクトリアに牽制の意味も込めて相談しようと考えた。



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