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act.50 提案


「マキナ、他に有用なアイテムなんかはないのか?」


 彼女の武器だけが置かれた寂しい武器庫を後にし尋ねる。あの武器を量産できる技術を持った人々ならば他にも魔王討伐のために作成されたアイテムなどが存在するかもしれない。


 ただ情報を探しに来ただけであったが、彼らの技術を目の当たりにすると他の物を期待してしまい、古くも新しい物との出会いは心躍る。これが遺跡の研究を進める人々の気持ちなのだろうか。


「この武器庫を見る通り、私を残して全てのオートマトンが出撃してしまっている様子なので、あまり期待は出来ません。しかし探す価値はあるかと思います」


 この後、完全に脅威がなくなったと判断できないので、三人連れ添い研究所内を探索する。時折、モニカを気遣い多めに休憩を挟む。しかし思ったよりも彼女は元気なようだ。負傷したことよりも、不用意な自分が招いた不用意な戦闘に気を病んでいたのかもしれない。


 一通り探索を終えたが、目ぼしいものは見当たらなかった。


「それじゃあバージスに戻るとしようか」

「マスター、お願いがあるのですがよろしいでしょうか?」


 最後の部屋を出た頃、マキナがイグナールを呼び止める。無表情かつ、淡々とした彼女の言葉にお願いを聞いて欲しいよ言うような気持ちはこもっていないが、それが戦闘用オートマトン彼女の個性であると、短い付き合いのなかで受け止めつつあるイグナール。


「ああ、俺が出来る範囲――内容を聞いてからでいいか?」


 先のモニカへの軽はずみな発言――俺に出来ることなら何でもする――を思い出し、少し躊躇しつつ、一応断れる逃げ道を作りつつ返答する。出会ったときのような過激な補給を要求されると困ってしまうからな。


「この研究所にマスターの魔力を注いで欲しいのです」


 エネルギー不足で喘ぎ、施設を守るための配備されている守護者(ガーディアン)の大切なエネルギーさえも、運用維持に回さざるを得ないほどに逼迫(ひっぱく)したエネルギー事情。思い起こせばマキナが研究所で目覚め、イグナールを追ってきたのはそのエネルギーを得るためであったことを彼は思い出した。


「そうか、情報があるって言うからすっかり忘れていたな」

(わたくし)は戦闘用でございますのでこの研究所の維持には直接関係ありません。それにイグナール様と言う主を得た私にはその義務もありません。ので放棄しても問題ないのですが――」


 マキナの言葉はまだ続くようだ。


「マスターにとっての大切な情報が保管されております。今後他の施設を訪れた際、アクセスが可能になる場合も考えエネルギーの供給を提案致します」



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